85発目
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「わー……」
「世の中にはあんな奴もいるのか」
会場内は熱の歓声が上がっている
おそらくここにいるほとんどの人物が彼を見に来たと言っても過言ではない試合であったからだ
彼――スイリューは期待に裏切らない試合を魅せた
お客も随分満足らしい
名無しさんは先ほど出会った青年が実力者に驚いた
そして新作のソルティグレープフルーツ味のポテトチップの不味さにも驚いた
家でもあるまいし、一回開けてしまったら全て食べてしまわなければならない
どうする、どうする、どうする……
そんなことを考えていると、ピピピピと軽やかな音が鳴る
ジェノスの携帯のようであった
「協会から怪人発生情報が多数届いてる……!?」
「えっ、そうなの」
「なんだこの数は?」
「し、知らない知らない!私何もしてない!!」
ギロリ、と名無しさんを睨んだがすぐに視線を携帯へと戻す
確かに名無しさんは怪人だが、こんなことをする奴ではないことは分かっていたからだ
「俺は出るぞ」
「え、試合見なくていいの?」
「こんな試合分かりきっている結末だ。先生の邪魔はさせない」
肩のパーツからかすかな熱気を出しジェノスはこの場から出た
名無しさんはどうしようかと迷ったが、試合にも見飽きたので外に出ることにした
外は想像していたより――大変なことになっている
煙が巻き上がる建物はあるわ、そのくせ人がいないわ、最悪が最悪を呼んでいる状況だ
自分は何をするべきか。歩きながら考えていると、見知った顔が
見知った怪人、のほうが正解か
『ヤッホー名無しさんちゃん。久しぶり』
「キリサキングちゃん!久しぶり!!どう元気にしてたー?」
廃墟にも近い町で、故郷に帰ってきた少女たちのように和気藹々としている図はなんとも不思議だ
ハイタッチをすることはキリサキングの両手(両刃)の関係でできなかった
お互い近況報告をしていたが、キリサキングが大事なことを思い出したかのように慌て始める
『おっと違う違う。えっとね、名無しさんちゃん一緒に来てほしいところがあるんだけど』
「お、オッケー!丁度やること探してた」
名無しさんはキリサキングに付いて行くことにした
横で鼻歌を空虚に響かせながら歩く名無しさんをキリサキングは妙な視線を向けてしまう
人間でありながら、怪人を名乗るこの少女がどんな人物なのか未だ掴めないでいた
ひょっとすると、もしかすると、この現状を見て名無しさんが怒るのではないかと心配した
そんな心配は無用に終わったが
けど、この状況下で片眉を上げてもいいのではないか
自分だって怪人の死体がゴロゴロ転がっていたら目を細める
名無しさんは――何を考えているのだろう
「着いた。ここだよ」
「真っ暗だねー」
場所はZ市の地下
光の侵入など許されぬ場所だ
『ごめんね、私はここまでしか付き合えない。というより入れない』
「何で?」
「殺されちゃうから」
そう言って名無しさんを見届けた
名無しさんは言われた通りに更に地下へ行くしかない
たどり着いた場所は、冷気が漂っている
『やぁ待っていたよ名無しさん』
「おや、君はギョロちゃん!」
『……いつからそんな風に呼ばれる関係になったのかは、まぁ、それは置いておくとしよう』
こんな、おどろおどろしい場所へ案内されても名無しさんはいつもの調子だ
一体どんなことをしたら彼女の感情が揺れるのか、サイコスは考えたが答えを見いだせないままだったので考えを振り切る
本題はこんなことではないはずだ
『今日君をここに呼んだのは他でもない。やはり、怪人協会への勧誘だ』
「いやぁ無理ですやめてくださいノーブラック労働イエスホワイト労働」
『……そのふざけた思考も、この方のお言葉を聞けば変わると思ってな。オロチ様、こやつが例の――怪人を名乗る、名無しさんです』
サイコスが見上げる
彼女も相当大きいはずだが、それよりも大きい
名無しさんは首を最大限に伸ばし見上げた
それは、とても大きくそれでいて禍々しい
空気が、恐怖してるようにピリピリとしていた
『……貴様が、名無しさんか』
「はいそうです。貴方がこのブラック会社の社長ですか?起訴!訴え!!ます!!」
ビシィッと指さした
名無しさんのこの独特なテンションにオロチは動じていない
ただただ静かに、名無しさんを見下ろす
そして問うた
『貴様は何のために戦う?』
「え?」
『その行いは、何のためだ?』
聞いたこともない言語で話しかけられたかのような表情でオロチを見上げる
『己の正義結果が怪人か?趣味などと言い訳して、平等な世界に、などと善者ぶっている行いを続けるつもりか』
「……」
『(おぉ、おぉ!あの名無しさんが押し黙るとは……!さすがオロチ様、これなら名無しさんを……!!)』
一つしかない目を輝かせ、オロチを見る
この調子ならいけそうだ
サイコスは希望を見た
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