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無免ライダーが大怪我をしたらしい
そう聞きつけた名無しさんは病院へと急いだ
手にはコンビニで買ったプリンとおつまみが入っていた
お見舞いの品にどんなものを買ったらわからなかったため自分好みだ
「無免さーん!大丈夫?」
「名無しさんちゃん。ハハ大丈夫だよ。女の子の前でこんな格好、恥ずかしいけどね」
無免ライダーは頭に包帯は巻いてあるしあちこち怪我だらけだ
椅子を取り出し、ベッドの頭近くの横に座った
すごくバナナの香りがしたので原因を探してみるとゴミ箱にあった
もう既に誰かがお見舞いに来ていたのか
もしかしたらこの品はいらなかったのかもしれないな、と思いつつもせっかく買ったのだからあげるとしよう
すぐそばに置いてある台の上に置いておく
優しい声で「ありがとう」とほほ笑むが、無免の顔は痛々しかった
「誰にやられたの?」
怪我は怪人にしては容赦があるし、人間にやられたとしてはやりすぎに見える
「……協会は怪人と言っていたけど、どうだろうね。僕には人間に見えるけど」
よくわからない返答に首をかしげる
怪人だが人間。人間だが怪人
ひょっとしたら自分と同じような人かもしれない
高ぶる期待に、ふっと昨日の怪我だらけの少年を思い出した
彼もこの無免ライダーの言う人にやられてしまったのだろうか
だとしたら、理不尽にボコボコにされてすれ違った人間に優しくできないのも仕方があるまい
うんうん、と頷き一人で納得し勝手にあの少年を許していた
口には出さないが、その人間怪人と会ってみたいものだ
「じゃあお大事にね無免さん」
「あぁありがとう名無しさんちゃん」
名無しさんが出て行った頃を見計らい、無免ライダーの隣のカーテンが開いた
「無免、お前のような奴でも女がいたとはな」
「いやぁそんなんじゃないよ。彼女とは友達だ」
タンクトップマスターが意外そうな顔で無免ライダーに問うた
無免ライダーは否定するも、人間誰しもこういった話題には食いつくものだ
それはヒーローでも同じで口角を上げながらタンクトップマスターは無免ライダーを茶化していた
次に名無しさんがお見舞いに行ったのはチャランコだ
彼がいる508号室へ入った
「チャランコ君大丈夫ー?」
「ひゃうっ!!?」
バナナを頬張っていたチャランコは唐突の訪問者に喉にバナナを詰まらせた
咳き込むチャランコに慌てて背中をさすってあげる
落ち着かないチャランコに、驚かしてしまったことを謝罪した
「い、いえ!名無しさんさんは悪くないです!!」
本当は顔を赤らめているが顔が包帯だらけで名無しさんは気づいていない
無免ライダーよりも怪我がひどいようだ
名無しさんは、例のヒーロー狩りに巻き込まれたと聞いていた
チャランコは正面から挑んだのだが
「災難だったねぇ、こんなに怪我して。お大事にね」
「ハハ、ありがとうございます」
チャランコは複雑な気持ちで会った
お見舞いに来てくれたのは嬉しい。だがこんな包帯だらけのボロボロな姿を見られて、男としてのプライドが傷ついたのだ
お見舞いの品を頂いても生返事でしかお礼を言えなかった
「ところでさ、やった奴ってどんな奴だったの?」
なるべくならこんな姿、長い時間見られたくなかったのだが名無しさんは話し込む気満々らしい
すでに椅子も座っている
大きく息を吸い、大きく吐いて気持ちを切り替えた
なるべく名無しさんを見ず喋り始めると、
「ガロウって奴で、バング先生の元弟子なんです。ヒーロー協会からはもう凶悪怪人として指名手配されてるそうですが」
「ほう」
「これで、人間が怪人として扱われるのは二人目ですか」
「そうなんだ」
まさか、最初の一人が目の前にいるとはチャランコは思いもしないだろう
そして名無しさん自身も、自分と似たような人が二人いるだなんて!と内心ワクワクしていた
とりあえず今のところ、話題に上がっているガロウという人に会ってみたいと思うのであった
「名無しさんさんも気を付けてくださいね!ヒーローしか狙われていないと聞きますが、いつ飛火がくるか……!」
と、向き直ったが残念ながら名無しさんはもうその場にいなかった
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