七十九発目
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追い詰められたキング
もはや彼の耳に警報の音は聞こえてはいなかった
キングが見つめる先は、虚無
何も見えない。何も聞こえない。何も話せない
きっとこれも自己防衛の一種なのであろう
現実を見ないようにすることで、心臓の鼓動は今もなお鳴っていた
「どうする?キング。俺は行くけど。お前は出ないのか?……また来る」
願っていた男の帰り
けれどキングはちっとも喜ばなかった
今も何も見えてはいない。意識もふらついてきた
だが、窓の外から聞こえる轟音に、キングはやっと現実に戻る。いや、戻らざるを得なかったのだ
おそろしく巨大な怪鳥が迫ってきた
やがて――キングの部屋の中にまで入ってきた
半分ほどもう部屋は壊れてしまっている
「驚いた。災害の方からお前の所にやってきたぜ」
そうなのだ。キングは自身で運が悪いことを自覚していた
それを今改めて思い出すとは
いつも、怪人と出会っても名無しさんが倒していたのでそれを忘れていた
守ってもらっていたことが当たり前で、常に後ろにいるのが当たり前で
今までの自分から今の自分を激しく後悔した
嘘をつき、彼女に甘えていたバチがあたったとでもいうのか
名無しさんと出会う前
彼はその頃から変わらず怪人に襲われる頻度は高かった
自分はただの被害者であった。いつも逃げるだけでそのうち誰かがやっつけてくれていた
確かに、”キング”と世界中に有名となったのは名無しさんのおかげである
だがその前は一体誰が”キング”であったのだろうか
世間が憧れるキングはどこかへと存在している
それを、言わなくては!
「俺、実は……」
叫んだ声は破壊音にかき消されてしまった
キングは目の前に広がる光景を想像することもできず、目を開けることができない
「あー……まーたお前かよ」
「はっはっは!私は、趣味で怪人をしている者だ」
安心し、喉から手がでるほど望んでいた人物の声にキングは目を見開く
そこには、怪鳥に乗る名無しさんの姿
禿げた男の拳は空回り名無しさんを見ている
「何してんだよ、名無しさん」
「名無しさん氏!!」
「「え?」」
二人の男の声が重なる
当の名無しさんも不思議そうな顔をしているっちゃしているが
眉を下げ、首をかしげている
怪鳥はモダモダと頭の異物を取り除こうとしていた
黒い羽根が部屋の中にまで暴れまわる
「あ、あー……とりあえずこの子どうにかしてくるねぇぇぇーーーーー……」
大声を出したが、怪鳥が飛んでいくにつれ名無しさんの声は遠くなっていった
そんな彼女の姿が見えなくなってから禿げた男は我に戻ったようだ
キングはあまりにも急な展開に置いてけぼりにされているようだが
太陽を背にした男は、まるで神のようでもあり羽のせいで悪魔にも見えた
でも、実際は
「つーかさっきの話まじかよ。強い評判も戦歴も全部嘘だったって」
あぁ、すべて思い出した
この男はただの、俺のもう一人のヒーローだったのか
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