七十四発目
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「あれソニックどうしたのそんなにケガして」
壁の大穴から顔を見せたのは名無しさんであった
瓦礫から這いあがり砂埃から除かせたその顔はいつもの何も考えていないような表情をしていた
ソニックは目を見開く
だってこの場にいるべき人物ではないからだ
本来なら名無しさんは睡眠ガスにより、眠らされ売りにだされているはず
しかし名無しさんは怪我一つなく、ここへ戻ってきた
どうしてここに?逃げてきたのか?主催者はどうした?
様々な疑問がソニックの脳内を走り回ったが、結局最後に思ったのは安堵だ
あぁ、こいつはこういう奴だった。とソニックは小さく笑った
激しい安堵に身体中の力が抜けていくようだった
名無しさんはソニックへ近づく
そして手を伸ばした
「名無しさん。……無事で、良かった」
そう言いながらその手を掴み、壁から這い出る
右目が回復し、開いた
両目で見る名無しさんのいつもの姿に今まで頑張っていた自分に恥すら感じる
「何も良くないでしょーが」
名無しさんは拳骨を作ってソニックの頭に落とす
ソニックが痛くなさそうな表情をしているところ、力は全く入れてないようだ
蚊を潰すぐらいの力だったのだろう
しかしソニックは疑問の表情だ
何が良くないのだろうか
「そんな怪我して。痛そう」
ソニックは驚いた
名無しさんが自分を心配しているからだ
普段ならありえない話である
いつもはソニックをこんな姿にしているのは名無しさんなのだから
名無しさんはここまでボロボロにしないが
驚いた気持ちは段々嬉しさへ変わってくる
しかし完全な嬉しい気持ちになる前に瓦礫同士がぶつかり合う、質のない音で現実へ戻された
「ざ、けんじゃねぇぞ……!!」
壁から這い出てきたのはライヤである
彼の顔は先ほどみた薄ら笑いが嘘のように怒りで歪んでいた
左頬にはヒビが入っており今にも割れてしまいそうだ
ライヤは叫んだ
「何で商品であるテメェがここにいる!?あいつはどうしやがった!!?」
それはソニックも疑問に思っていたことだ
名無しさんは眠たいのか、あくびをした
んー、という緊張感のない間抜けな声
ライヤはそんな名無しさんにイラついているのか震えている
「なんか起きたら縛られて檻の中にいて、人いっぱいいたけど抜け出してきちゃった。それで帰ろうと思ってここに戻ってきたわけなのだよ!あ、けけけ怪我は……させてない……よ……うん。うん……」
この場にそぐわない元気な声で言う
彼女は空気を読むということを前世に忘れてきたようである
今この部屋の雰囲気は、オペラの会場に派手な格好をしてJPOPを歌っているようなものだ
名無しさんの笑い声だけしか音はなかった
しかし、名無しさんの笑い声は止められた
ライヤの壁を殴る音によって
すさまじい破壊音が鼓膜を突き刺すようだ
部屋全体が揺れる
砂埃がわずかに落ちて行った
ライヤの拳から砂が落ちていく
「ざけんな……ふっざけんな!!何だよそれ!?そんな話を信じろってのかよ!!」
「だって本当だもん」
燃えるような怒号に名無しさんは、傍観者のように返す
まるで自分には関係ないことのように
そんな態度にライヤの怒りは募っていく
怒り、というよりは混乱に近い
拉致したはずの女が何故か抜け出してきて、壁を破壊する程の力を持っている
どうしてそんなことができる?この女何者?
様々な情報や疑問が交差する
次第にこんがらがってしまい、疑問ではなく怒りになってしまったのだ
とにかく、今わかることはこの女に一発やられたということだけだ
こんな、子供みたいなやつに
しかも緊張感はまったくもって皆無で、今もあくびをしている
ライヤは地を蹴った。ついに自我が切れてしまったのだ
ソニックは目を見開いた。そのスピードに
蹴ったあとの床はヘコんでいた
金属の重さにスピードを加えてしまったら人の身体などあっという間に肉の破片になる勢いだ
ソニックは名無しさんの腕を引っ張ろうとした
しかしそんなソニックの行動は無意味であった
「よっと」
名無しさんはライヤの腕を掴み、背負い投げをした
床が割れ、ライヤは今度は床に埋まる
ライヤを中心に、床がクモの巣のような亀裂が広がった
短い呻き声が下から聞える
ソニックは言葉を失ったが、すぐに笑いが込みあがってきた
どうして自分はこんなに焦ってしまっていたのか
……あぁきっと名無しさんが自分より強くても、最強の力を持っていたとしても、少しの怪我でも負ってほしくないからだ
どうして怪我をさせたくないのか、そう問われれば何て答えるだろう
ソニック本人は言わないだろうが、名無しさんに気があるからとしか答えようがない
いずれ嫁にさせる女に、怪我をさせるわけにはいかないだろう
「ッッテメェェェェ!!」
ライヤが立ち上がる
ソニックは身構えたが、ライヤは攻撃してこなかった
後ろへ飛び、二人から一定の距離をとった
ライヤが震えているのが離れていてもわかる
「舐めんな……舐めんな舐めんな!!まだまだこんなもんじゃねぇぞ!!!」
咆哮のような声が部屋全体を震わす
ライヤは右の首の付け根を自らの手でえぐり始めた
これにはさすがに名無しさんも驚いたようだ
耳を塞ぎたくなるような、金属がこすれ合う音
そしてライヤはどこからか出した注射器をえぐった首の付け根へ刺した
身体全体が激しい鼓動をしているように動いている
ミキィ・・・ミシ・・・という音とともに鋼鉄の身体が段々大きくなっていく
腕は丸太のように、足はゾウのように重量が尋常ではないことが彼の足元を見ればわかるだろう
ただ踏みしめているだけなのに床にヒビが入る
いつのまにか、ライヤは二メートルを越す身長にもなっていた
名無しさんは首をかなりあげないとライヤの顔が見えない
ライヤは準備運動のように首を回して身体の調子を整えた
ピエロのように口の端を上げ、笑った
瞬間、竜巻のような風と共に消えた
「ッッ!??」
「ソニック?」
名無しさんがソニックの名を呼んだときにはすでにそこにソニックはいなかった
代わりのようにいたのは、黒い巨体――ライヤだ
握った拳は少しの間も休まず、隣へ振り下ろされた
その、小さな名無しさんの身体を狙って
何度も何度も何度も、我武者羅に
振りし切る豪雨のようだ
床が剝げ、破片や砂埃が舞い姿が隠れる
ライヤの眼光はどこへ放たれているのかもわからない
拳の感触さえも失われていた
ライヤを支配していたのは「殺す」という感情だけだった
感情に支配されている攻撃する姿は、まるで懇願でもしているようにも見える
子供がたどり着けない迷路の壁を殴っているようだ
「ねぇ、君そんなことで楽しい?」
「!?」
声がしたほうへ振り向くと、自分の拳の下にいるはずの名無しさんであった
目を疑った瞬間ライヤの視界はコンクリートが剥き出しになってしまった床であった
床はどんどん遠くなる
何が起きたか理解する前に背中に強い衝撃
だがすぐに床が近づいてくる
すべてを理解している間に、バスケットボールのように自分の身体がバウンドした
ダイレクトに頭が床へ当たってしまい、脳が振動して世界が震えて見えた
名無しさんは上げた脚を下ろす
殴られ、部屋の隅へ追いやられたソニックはこの一連の出来事が自分の常識を域しており、映画でも観ているように思えた
名無しさんはライヤの後ろへまわり、腹を蹴り上げただけなのだが、それだけで巨体の、しかも百キロを越すであろうライヤを天井まで蹴り上げたのだ
ここまできてしまうと思わず笑ってしまうのも仕方ない
しかし、名無しさんにばっかり戦わせるのはソニックの立場がない
そう思い、笑ってしまう膝を踏ん張り立ち上がった
残り少ないクナイを片手に、ライヤへ走り出した
立ち上がれないライヤの目へクナイを突き刺す
「ギイイィィィアアアアア!!!」
さすがに鋼鉄の身体になろうとも人の部分は弱かったようだ
痛みに暴れるせいで、白かったはずの床はコンクリート剥き出しだらけになってしまい、今となっては白い部分はほとんどなかった
「テメェら!!クソ!!クソが!!!」
乱暴にクナイを抜き取る
血は一滴も流れていなかった
そのことが、ライヤの表情と共にもう彼が完全に人間ではないことが判明した
もうライヤのことは「怪人」として分類してもいいだろう
「さぁ、第二ラウンドだ。ライヤ」
ライヤの前には名無しさんとソニックが立っていた
壁の大穴から顔を見せたのは名無しさんであった
瓦礫から這いあがり砂埃から除かせたその顔はいつもの何も考えていないような表情をしていた
ソニックは目を見開く
だってこの場にいるべき人物ではないからだ
本来なら名無しさんは睡眠ガスにより、眠らされ売りにだされているはず
しかし名無しさんは怪我一つなく、ここへ戻ってきた
どうしてここに?逃げてきたのか?主催者はどうした?
様々な疑問がソニックの脳内を走り回ったが、結局最後に思ったのは安堵だ
あぁ、こいつはこういう奴だった。とソニックは小さく笑った
激しい安堵に身体中の力が抜けていくようだった
名無しさんはソニックへ近づく
そして手を伸ばした
「名無しさん。……無事で、良かった」
そう言いながらその手を掴み、壁から這い出る
右目が回復し、開いた
両目で見る名無しさんのいつもの姿に今まで頑張っていた自分に恥すら感じる
「何も良くないでしょーが」
名無しさんは拳骨を作ってソニックの頭に落とす
ソニックが痛くなさそうな表情をしているところ、力は全く入れてないようだ
蚊を潰すぐらいの力だったのだろう
しかしソニックは疑問の表情だ
何が良くないのだろうか
「そんな怪我して。痛そう」
ソニックは驚いた
名無しさんが自分を心配しているからだ
普段ならありえない話である
いつもはソニックをこんな姿にしているのは名無しさんなのだから
名無しさんはここまでボロボロにしないが
驚いた気持ちは段々嬉しさへ変わってくる
しかし完全な嬉しい気持ちになる前に瓦礫同士がぶつかり合う、質のない音で現実へ戻された
「ざ、けんじゃねぇぞ……!!」
壁から這い出てきたのはライヤである
彼の顔は先ほどみた薄ら笑いが嘘のように怒りで歪んでいた
左頬にはヒビが入っており今にも割れてしまいそうだ
ライヤは叫んだ
「何で商品であるテメェがここにいる!?あいつはどうしやがった!!?」
それはソニックも疑問に思っていたことだ
名無しさんは眠たいのか、あくびをした
んー、という緊張感のない間抜けな声
ライヤはそんな名無しさんにイラついているのか震えている
「なんか起きたら縛られて檻の中にいて、人いっぱいいたけど抜け出してきちゃった。それで帰ろうと思ってここに戻ってきたわけなのだよ!あ、けけけ怪我は……させてない……よ……うん。うん……」
この場にそぐわない元気な声で言う
彼女は空気を読むということを前世に忘れてきたようである
今この部屋の雰囲気は、オペラの会場に派手な格好をしてJPOPを歌っているようなものだ
名無しさんの笑い声だけしか音はなかった
しかし、名無しさんの笑い声は止められた
ライヤの壁を殴る音によって
すさまじい破壊音が鼓膜を突き刺すようだ
部屋全体が揺れる
砂埃がわずかに落ちて行った
ライヤの拳から砂が落ちていく
「ざけんな……ふっざけんな!!何だよそれ!?そんな話を信じろってのかよ!!」
「だって本当だもん」
燃えるような怒号に名無しさんは、傍観者のように返す
まるで自分には関係ないことのように
そんな態度にライヤの怒りは募っていく
怒り、というよりは混乱に近い
拉致したはずの女が何故か抜け出してきて、壁を破壊する程の力を持っている
どうしてそんなことができる?この女何者?
様々な情報や疑問が交差する
次第にこんがらがってしまい、疑問ではなく怒りになってしまったのだ
とにかく、今わかることはこの女に一発やられたということだけだ
こんな、子供みたいなやつに
しかも緊張感はまったくもって皆無で、今もあくびをしている
ライヤは地を蹴った。ついに自我が切れてしまったのだ
ソニックは目を見開いた。そのスピードに
蹴ったあとの床はヘコんでいた
金属の重さにスピードを加えてしまったら人の身体などあっという間に肉の破片になる勢いだ
ソニックは名無しさんの腕を引っ張ろうとした
しかしそんなソニックの行動は無意味であった
「よっと」
名無しさんはライヤの腕を掴み、背負い投げをした
床が割れ、ライヤは今度は床に埋まる
ライヤを中心に、床がクモの巣のような亀裂が広がった
短い呻き声が下から聞える
ソニックは言葉を失ったが、すぐに笑いが込みあがってきた
どうして自分はこんなに焦ってしまっていたのか
……あぁきっと名無しさんが自分より強くても、最強の力を持っていたとしても、少しの怪我でも負ってほしくないからだ
どうして怪我をさせたくないのか、そう問われれば何て答えるだろう
ソニック本人は言わないだろうが、名無しさんに気があるからとしか答えようがない
いずれ嫁にさせる女に、怪我をさせるわけにはいかないだろう
「ッッテメェェェェ!!」
ライヤが立ち上がる
ソニックは身構えたが、ライヤは攻撃してこなかった
後ろへ飛び、二人から一定の距離をとった
ライヤが震えているのが離れていてもわかる
「舐めんな……舐めんな舐めんな!!まだまだこんなもんじゃねぇぞ!!!」
咆哮のような声が部屋全体を震わす
ライヤは右の首の付け根を自らの手でえぐり始めた
これにはさすがに名無しさんも驚いたようだ
耳を塞ぎたくなるような、金属がこすれ合う音
そしてライヤはどこからか出した注射器をえぐった首の付け根へ刺した
身体全体が激しい鼓動をしているように動いている
ミキィ・・・ミシ・・・という音とともに鋼鉄の身体が段々大きくなっていく
腕は丸太のように、足はゾウのように重量が尋常ではないことが彼の足元を見ればわかるだろう
ただ踏みしめているだけなのに床にヒビが入る
いつのまにか、ライヤは二メートルを越す身長にもなっていた
名無しさんは首をかなりあげないとライヤの顔が見えない
ライヤは準備運動のように首を回して身体の調子を整えた
ピエロのように口の端を上げ、笑った
瞬間、竜巻のような風と共に消えた
「ッッ!??」
「ソニック?」
名無しさんがソニックの名を呼んだときにはすでにそこにソニックはいなかった
代わりのようにいたのは、黒い巨体――ライヤだ
握った拳は少しの間も休まず、隣へ振り下ろされた
その、小さな名無しさんの身体を狙って
何度も何度も何度も、我武者羅に
振りし切る豪雨のようだ
床が剝げ、破片や砂埃が舞い姿が隠れる
ライヤの眼光はどこへ放たれているのかもわからない
拳の感触さえも失われていた
ライヤを支配していたのは「殺す」という感情だけだった
感情に支配されている攻撃する姿は、まるで懇願でもしているようにも見える
子供がたどり着けない迷路の壁を殴っているようだ
「ねぇ、君そんなことで楽しい?」
「!?」
声がしたほうへ振り向くと、自分の拳の下にいるはずの名無しさんであった
目を疑った瞬間ライヤの視界はコンクリートが剥き出しになってしまった床であった
床はどんどん遠くなる
何が起きたか理解する前に背中に強い衝撃
だがすぐに床が近づいてくる
すべてを理解している間に、バスケットボールのように自分の身体がバウンドした
ダイレクトに頭が床へ当たってしまい、脳が振動して世界が震えて見えた
名無しさんは上げた脚を下ろす
殴られ、部屋の隅へ追いやられたソニックはこの一連の出来事が自分の常識を域しており、映画でも観ているように思えた
名無しさんはライヤの後ろへまわり、腹を蹴り上げただけなのだが、それだけで巨体の、しかも百キロを越すであろうライヤを天井まで蹴り上げたのだ
ここまできてしまうと思わず笑ってしまうのも仕方ない
しかし、名無しさんにばっかり戦わせるのはソニックの立場がない
そう思い、笑ってしまう膝を踏ん張り立ち上がった
残り少ないクナイを片手に、ライヤへ走り出した
立ち上がれないライヤの目へクナイを突き刺す
「ギイイィィィアアアアア!!!」
さすがに鋼鉄の身体になろうとも人の部分は弱かったようだ
痛みに暴れるせいで、白かったはずの床はコンクリート剥き出しだらけになってしまい、今となっては白い部分はほとんどなかった
「テメェら!!クソ!!クソが!!!」
乱暴にクナイを抜き取る
血は一滴も流れていなかった
そのことが、ライヤの表情と共にもう彼が完全に人間ではないことが判明した
もうライヤのことは「怪人」として分類してもいいだろう
「さぁ、第二ラウンドだ。ライヤ」
ライヤの前には名無しさんとソニックが立っていた
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