6発目
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「ここもいないか」
ゾンビマンは持っていた地図にバツをつけた。
頭をかく。
しらみつぶしに探すのはやはり効率が悪い。
思わずため息までついてしまう。
ゾンビマンが探しているのは変な仮面を被った少女だ。
怪人を自称する変な女。
ポケットからタバコを取り出す。そして火をつけた。
煙が空に消えていく。まるであの怪人のように正体が掴めず消えていくのだ。
そもそも、こんな普通の市に住んでいるのだろうか。隠れアジトがあるかもしれない。
探し方を変えてみるか?
どう探す?
怪人が現れたら出てくるかもしれない。しかし自分もいつどこで怪人が発生するか分からない。
「はぁ……」
タバコを灰皿に押し付けた。
少しお腹も空いたことだし、コンビニへ立ち寄った。
コンビニに無事入ることもできないとは、自身の不運を呪う。
女の子が学生に囲まれている。
学生は遠くから見ても、髪をワックスでベタベタに立ち上げ、ボンタンを履いている。
いかにも、という不良だ。
不良三人達は、自分より小さい女の子を囲んでいる。
みっともない。一番最初に思ったのはこうだった。
学生とはいえ自分たちより年下をいじめるなど、見てられないぐらいみっともなかった。
女の子は何をしでかしてあぁなったのか。
不良たちの横にはバイクらしき塊が、黒い煙は出していた。
「おいおい嬢ちゃん、どうしてくれんだ?」
囲まれている女の子は、不良たちではなく別の方向を見ていた。
見つめているのは空だろうか。
そして、手に持っているソフトクリームを舐めた。
その行動は不良の理性を切るには充分だ。
「このガキッ……!!」
不良の一人が腕を上げた。
ゾンビマンはその腕を掴む。
「なっ……え、ゾゾ、ゾンビマン!?
「お前らなぁ、恥ずかしくないのか」
紅い瞳で不良たちを睨みつけた。
不良たちはいきなりのS級ヒーローに驚いている。
女の子も驚いているようだ。
掴まれた腕を振り払おうとしても、一ミリも、ピクリとも動かせない。
特殊な体を持っただけでS級ヒーローになれたわけではない証拠だ。
一人が逃げ出し、そしてもう一人が逃げたところでゾンビマンは腕を離した。
「クソ、ガキ覚えてろよ!!」
最後に残った不良が女の子を突き飛ばそうとした。
しかし女の子はそんな手をヒラリと簡単に避けてしまう。それがいけなかった。
女の子を押そうとした手はゾンビマンに当たり、予想外の攻撃によろけてしまう。
「あ」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!」
女の子の持っていたソフトクリームがゾンビマンのコートにビシャリとついてしまった。
ソフトクリームが無くなった女の子は、この世の終わりかのように絶望の顔をしていた。
そしてそのまま俯いてしまう。
おいおい、まさかな。とゾンビマンは女の子の顔を覗いた。
「お。おい?」
「……」
な、泣いてやがる……!!
絶望したのはゾンビマンも一緒だった。
女の子を何とか宥めて、代わりに新しいアイスを買ってあげることにする。
そこにベンチに座ってろ、と言い汚いコートを着たままコンビニに入った。
被害を受けたのは俺もなのだが。と言いたいとこであったが、言わないのは相手が子供だから。
アイスをダメになったからって泣くとは、この子は何歳なのだろうか。
不運が続いたことにゾンビマンはため息をつく。
「ほら、これでいいだろ」
「……!」
ソフトクリーム以外にも、他のアイスを買っておいた。
それも少し高めのやつだ。これでいい加減泣き止むだろう。
「ありがとうございます!」
「どういたしま……ん?」
ゾンビマンが止まる。聞いたことのある声。この間のことがカメラロールのように蘇ってくる。
「なぁ、趣味って言ってみてくれ」
「え、なんで。あ」
女の子がそソフトクリームを食べていた手を止める。
彼女も気づいてしまったのだ、目の前のヒーローのことを。
そして今彼女は仮面を被っていない。
多量の汗が顔を覆いつくす。
「……ゆっくり話でもするか」
ゾンビマンが名無しさんの隣に座った。
これから長い話を始めるぞ、という合図かのように携帯灰皿とタバコを取り出す。
名無しさんは返答できない。なんと答えたらいいのか分からない。
やっとひねり出せた言葉がこれだった。
「ここ禁煙ですよ」
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