3発目
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それからというもの、サイタマと名無しさんの関係は不思議なものだった。
ヒーローと怪人、正義と悪、光と影。
そんな立場だというのに2人はテーブルを囲んでいる。
「サイタマ醤油取って」
「それくらい自分で取れよ」
「と言いつつ取ってくれるあたりツンデレサイタマ。略してデレタマ」
「あ゛ぁん!?」
一緒にご飯を食べる関係ともなっている。
2人とも久々に誰かと食事をとるようで、戦うのとはまた別の楽しさがあった。
別に孤独でも良いと思ったのに。
話してみると、サイタマと名無しさんは共通点が多かった。
強すぎて感情を忘れたこと、趣味でやっていること、孤独な気持ちがあったこと。
まるで友人のようだ、とサイタマは思った。
それから2人は趣味の話を始める。
名無しさんは怪人といっても、町を破壊したり人々を恐怖に陥れようとしているわけではないらしい。
怪人を助けることと、ヒーローと戦うこと。それが名無しさんの趣味だ。
怪人なのに、そんなものでいいのか?と尋ねると、いいんだよ趣味だし。と言う。
なぁそういうものか、とサイタマはすぐに受け入れた。
「そういえば、今日はどうしたんだよ? 倒しちまったぞ」
「あぁあのでかい奴? まぁあれは死んだほうが幸せなんだろうなーと思って」
「?」
「だって一生虚しく孤独なまんま生きてくなんて辛くない? 大事なお兄さんも死んじゃったわけだし」
そういうものなのか? と思ったがサイタマは頷いた。
名無しさんは名無しさんなりに考えている。と思っていいのだろうか。
コイツは怪人なのだから怪人の気持ちがよく分かる。しかし、人間としての感情も持っている。
怪人なのだけれど、怪人としては優し過ぎるのではないか。
……いや、何かが違う。何かがおかしい。
胸の中にできた違和感を、サイタマは探す。
そして、見つけた。
「あーーー! お前あの時間もしかして……」
名無しさんが向こう側を見て、口笛を吹いている。
その額には汗がかいてある。まるで、秘密の物を開けてしまったように。
「おま、今は卵が高いというのに……」
「……ち、違うよ。たまたまだって。そんな、卵の特売を優先したわけじゃ」
名無しさんが最後まで言い切らないうちに、サイタマが名無しさんの頬をつねった。
そう、サイタマが怪人を倒しに行った時間は、丁度卵が特売で100円だったのだ。
サイタマは趣味を優先した。名無しさんは卵を優先した。
俺だって特売行きたかったのに! というようにつねる力を増していく。
……しかし、命よりも買い物を優先するとは。
あぁやはりコイツは怪人なのだと、実感してしまう。
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