32発目
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
お天気お姉さんを眺めながらパンを齧る。
雨が降ることに溜息をつく。
雨は憂鬱だ。洗濯物が乾かないから。
朝ごはんを食べ終わり、歯磨きが終わった所で机にティッシュを置く。
てるてる坊主を作るから。
「うん、良い出来じゃん」
マッキーを置き作ったてるてる坊主を掲げる。
てるてる坊主にはサイタマのような顔が書いてあった。
ご利益もありそうだ。
さっそくカーテンレールに取り付けているところで、テレビから聞きなれたものが放送された。
"J市に災害レベル鬼が発生。市民の皆様は速やかに避難してください"
テレビに映るのは乳首にハートをつけた怪人。
なんじゃこの怪人は、と思ったのは名無しさんだけ。
苦笑しながら名無しさんは仮面を取り外に出た。
「地獄嵐!」
石を竜巻上にうねらせる技。
これはフブキにとって努力の結晶だ。
だがこれが効くのは人間や柔い怪人だけ。
地獄嵐を受けた怪人はピンピンしていた。
『クビ……クビクビクビ! クビがいる!!』
肌が真っ青でスーツを着ている人型怪人は、丸く曲がったナイフを真横に振る。
鋭い刃で首を切るために。
フブキはビシッと怪人の動きを止めた。
怪人は止められたのを気にしないかのように、ゆっくり、ゆっくりと動く。
フブキの鼻から血が出る。
駄目だ、これはあと少しで破られてしまう。
どうやって、どんな攻撃で、どのような方法でこの怪人を倒せばいいのか。
災害レベル虎だと聞いていたのに、どうして!
『クビさえあれば!! ワタシは職場に戻れるんだ!!!!』
超能力を解かれ、怪人は動きを再開する。
あぁ駄目だ。
ここはバリアを張って、他のヒーローを待つしかない。
でも、他はJ市に派遣しているだろうか。
じゃ、じゃあ……あの人を待つしかないのだろう。
静かに目を瞑り、諦めた。
『なんだぁぁぁぁ!! ジャマずるんじゃねぇぇぇぇ!!』
怪人の叫びにフブキは目を開ける。
そこには自分より小さな子が怪人のナイフを片手で掴んでいた。
一瞬夢なのかと、幻覚なのかと、脳がうまく働かない。
瞬きをした瞬間怪人は倒れていた。
驚いてしまう前に、小さな子──名無しさんは鞄を持つように怪人を持つ。
そしてスタスタと歩いてしまった。
はっ、と。名無しさんが1メートル以上離れたところでフブキの脳が急速で動く。
「ちょっと待ちなさい!!」
フブキが叫ぶ。
名無しさんは足を止めて振り返った。
改めてフブキの姿を見て名無しさんは思わず怪人を落としてしまった。
なんというナイスバディ。
自分にはない物、あこがれていた物が豊富だから。
思わず自分の胸を触り、何もないことに絶望する。
「ゥグっ……!!」
胸を押さえて呻く。心に大きなダメージを受けたから。
そんな様子を見てフブキは呆けたが、すぐに名無しさんを睨む。
変人怪人のことは勿論知っている。
だが話に聞いていたより普通の人間だ。
こうして会ってみると恐怖など感じない。
……倒せるのでは。
S級ヒーローでも倒せない変人怪人。
自分が倒せば協会から人目置かれるだろう。
やるしかない。
今あぁして苦しんでいるのだから、攻撃は効くはず。
手をあげ石を浮かせた。
そして変人怪人へとぶつける。
ふわり、とフブキのスカートが舞う。
風が止んだ時、フブキの汗が一滴地面に落ちた。
ありえない。
変人怪人は、当然のように無傷だった。
人間だからといって手加減をしてしまったか。
ならば、
「地獄嵐!!」
これで片足ぐらいは破壊できるだろう。
人間のような、まるで少女のような怪人だったけれどフブキは容赦しない。
フブキの使命感は怪人を倒すことより名声を上げること。
あの怪人が悪い。そう、怪人と名乗るからいけないのだ。
「すごーい!」
そんな明るい声に、フブキはビクリと全身が動く。
砂煙が段々人間の影を映していった。
フブキは歯を食いしばり、さらに攻撃を続けた。
小石が隕石のように名無しさんへ飛んでいく。
息が上がる。そろそろ体力が切れそうだ。
「うぐッ……!!」
変人怪人が膝をついて苦しんでいる。
チャンスだ。
フブキは最後の力を出して、大きな岩を変人怪人に落とした。
はぁ、はぁ、と全身で息をする。
これで勝負は決まった。アレで生き残れるはずない。
呼吸を整え、完全に超能力を止めた。
変人怪人を見る。
「ッ!!」
フブキは目を見開いた。
岩が真っ二つに割れ、変人怪人は無傷だ。
手が震える。
どうイメージしたってコイツを倒すイメージが浮かばないから。
災害レベル狼だからって、人間のようだからって、油断していた。
どうすればいいのか、答えは決まっている。
こんなこと、考えたくなかった。
こんなのに、頼りたくなかった。
だが。……それしかないのだ。
変人怪人はフブキを見つめたまま動かない。
「(おっぱいが……おっぱいが揺れるほどある……ッ!!)」
名無しさんがダメージを受けていたのは、フブキの上半身を見ていたから。
自分にはない、柔らかな脂肪が羨ましい。
ふとサイタマに言われた「貧しい乳。略して貧乳」と言われたことを思い出す。
私もあれだけあれば……ッ!!
それで先ほど胸がズキズキと痛むのだ。
これ以上彼女を見るのは辛い。だから終わりにしよう。
名無しさんは立ち上がる。
「え」
目の前に名無しさんがいる。
いつの間に!
だが既にフブキには戦う気力がなかった。
諦めて目を瞑る。
──フブキには悪い癖があった。
それは、強者から逃げてしまうこと、諦めてしまうこと。
つまり、強者を見ると怯えてしまうのだ。
姉と一緒に暮らしていたせい。
この後、私がやられたら姉が来るだろう。
あぁ、また姉にあれこれ言われてしまうのか。
1/2ページ