28発目
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「あれ?」
自分の家の扉前でポケットをまさぐる。
あるはずの物が、ない。
入れたはずの物が、ない。
扉を見つめて頭の中が真っ白となった。
鍵が無い。
名無しさんは走った。走りまくった。
家からスーパーまでの道のり。スーパーの中。
様々所を探しても鍵は見つからなかった。
今名無しさんは絶望の淵に立っている。
このまま時間が立てば絶望の底へ落ちてしまう。
交番行こうか。
いや、でも、この間ソニックを匿ってしまったことを思い出す。
あれは犯罪だ。今、警察に合うのは気が引ける。
スーパーの駐車場で四つん這いとなり、コンクリートを眺めた。
このまま探してても一生見つからない気がする。
絶望の穴に突き落とされ、手を伸ばす。
大家に連絡するしかない。お金はいくら取られるだろうか。
あぁまたもやし生活かもしれない。
そんなことをモンモンと考えていると、傍に誰かが来る気配がした。
「何してんの君」
顔を上げれば白いもこもこした着ぐるみを着た人物がいた。
「番犬マン……!!」
S級12位。番犬マンが名無しさんのそばに立っている。
番犬マンは表情を崩さずに名無しさんを見ていた。
不審者がスーパーの駐車場で寝っ転がっている、と通報を受け番犬マンが来たのだ。
その不審者が、名無しさんだったというわけだが。
名無しさんは事のあらましを番犬マンに話した。
「それであんな恰好になってたの? 女子としてどうかと思う」
少しだけ声に不快感を混ぜる。
自分も暇ではないし、いつ怪人が出てもおかしくないのだからこんな事で足を止めている場合ではないのだ。
これが普通の市民であれば番犬マンは帰っていただろう。
帰らないのは、目の前にいる女の子を警戒しているから。
変人怪人だ。
この適当な服装、ヒーロー協会で見た特徴と一致する。
いや、協会ではない。普段見ている子だ。
名無しさんはQ市に住んでいる。
なので、Q市を守っているヒーローと対峙するのは当然のことだった。
何度も何度も、名無しさんと番犬マンは出会っている。
だが、こうしてただのヒーローと市民として出会うのは初めてであった。
「で、鍵を落としたと」
「うぅ……はい……」
「交番は行ったの?」
「いやぁ、あんな小さな鍵拾う人いないかと思いまして……」
番犬マンは悩む。
ここで戦うべきか、見逃すべきか。
今いるのはスーパーの駐車場。ここで戦ったら他の市民に被害が出てしまう。
鍵を探す手伝いのフリをしながら、広いところへ誘導しようか。
作戦が頭の中でまとまった所で、口を開く。
「じゃあ、探すの手伝ってあげる」
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