104発目
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「ひえぇ……」
「や、やりすぎよお姉ちゃん」
ワイルドホーンの被り物を脇に抱えた名無しさんは外の様子を見て思わず恐怖の言葉を漏らす。
外の様子は大災害だった。
地中は大きくめくれ津波のようで、隕石が降ったかのように地面に穴が開き、ロケットのように岩が飛んでいる。
流石の名無しさんも姉の力には慄いてしまったか。仕方ない、とフブキは思う。
自分と名無しさんの力があればタツマキを止めることが出来るだろうか。
名無しさんは怖がっているから100パーセントの力は出せないかも。
フブキは名無しさんを心配そうに見つめる。
「(これ億単位の損壊なのでは……)」
サイコスの座る椅子の背もたれを両手で持ちながらそう思う。
これサイタマにも請求いくのかな? と思うと恐怖してしまうのだ。
そんな名無しさんの本心も知らず、フブキは名無しさんの手の上に自分の手を重ねた。
まるで大丈夫だ、というように。
「フブキちゃんも大変だったんだねぇ」
「え?」
フブキはまさかの発言に名無しさんを見る。
名無しさんはお疲れ様、というように苦笑いをしていた。
大変だった。
……確かに、大変だった。
強い姉に怯え、いつの間にか強者の影に隠れるようになっていた。
それが嫌で、徒党を組んで、B級1位になって……。
最近は姉の気持ちが分かってきた。
強い者の孤独な気持ちが。
だから、頑張っていた。自分も、仲間も強くするために。
そうか、私は頑張っていたのか。大変だったのか。
同情されたのは、労ってもらったのはいつぶりか。
「ふふ、ありがとう名無しさん」
「? 何で今お礼言ったの?」
名無しさんの大変だったね。は身内があんなに暴れて物を壊すのは困っちゃうよね、大変だよね。という意味だった。
先ほどからフブキは名無しさんの気持ちを違うように解釈してしまっているが、知らぬが仏。
「フブキのただの知り合いの力だぜ」
決着はつきそうだ。
タツマキはフラと軸をなくし地面に膝をつく。
──いざという時に誰かが助けてくれるとは思ってはいけない。
本当に、誰にも頼っちゃいけないの?_頑張った私を誰が認めてくれるの?
「よう。平気か」
タツマキはため息をつく。
認めたくない事実にタツマキは話すことができなかった。
変な夢も見てしまい俯いてしまう。
「大したもんだ」
「……ふん。あんたに言われてもね」
「あ?」
これだけいえるなら大丈夫か、と思い最後に言う。
暴れたいなら人のもん壊すな。そこだめ守れば大したヒーローだと思うぜお前は。
そう言ってサイタマはタツマキの頭に手を置く。
じゃ、と手を上げタツマキに別れの挨拶をする。
ちょっと、とタツマキが引き留めた成果、それとも目の前にフブキが現れたせいか。
サイタマは歩みを止めた。
「メンバーは置いてきたわ。……お姉ちゃん」
フブキの後ろから名無しさんが顔を覗かせる。
「あなたの言う通りだった。私の認識が甘かったわ。私もお姉ちゃんの様に独りで戦う……!!」
「へぇ、いい心がけだけど。オトモダチは解ってないみたいよ」
後ろからフブキ組から追いかけてくる。
タツマキの圧力に震えが止まらないが、勇気を振り絞り叫ぶ。
我々をフブキ様に仕えさせてください、と。
タツマキは追い払おうとしたが、フブキが前に立つ。
フブキの攻撃をフブキ組を真正面から受けて立った。
「もースキにさしてやったら?」
「は!? あんたが首突っ込む問題じゃ……」
「そうだよタツマキちゃん」
「名無しさんあんたまで……」
「友達っていいものじゃない?」
「……」
そんな事言われたらタツマキは何も言い返せない。
初めてできた友達に喜んだ自分がいるのだから、「友達なんてくだらない」なんて口が裂けても言えなかった。
でもそれは弱い友達ではないから。
でも……。
口ごもるタツマキに名無しさんは何か思いついたようだ。
椅子をサイタマに渡す。
「ちょっとこれ見てて」
「は?」
椅子に座ったサイコスは名無しさんに無茶に引っ張られ気を失っていた。
名無しさんはワイルドホーンの被り物を被る。
そしてフブキに背を向けるように前に立つ。
もろに地獄嵐を背中にくらう形だが名無しさんは無傷だ。
「!? 名無しさん……」
「フブキちゃんは下がってて」
フブキは名無しさんの言うことを聞くしかない。
命令されたかのように一歩、また一歩と後ろに下がる。
フブキ組は感じていた。あの時ほどではないが、体の芯から震える恐怖を。
マツゲは持っているビューラーが汗で滑り落としそうである。
「ほら、さっきの決心を見せてあげなよ」
一歩、名無しさんがフブキ組に近づく。
「やめて!」とフブキは叫びたいが声が出ない。
「フブキちゃんに仕えるには相応の覚悟が必要だよ」
マツゲはビューラーを暗器変形させる。
山猿は野生スイッチをONにする。
各々が武器を構えるが誰一人前へと踏み出せなかった。
恐怖の震えで脳が指令を出してくれない。
それでもフブキ組を終わらせないために!
全員で名無しさんに襲い掛かる。
「「おおぉぉっ!!!!」」」
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