103発目
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「サイタマ? ここで何してるの? まさかここに住んでるの?」
フブキの質問責めに、サイタマは一言で返す。
「家壊れたから」
質問したくせにフブキは黙ってしまう。
敢えて無視をしたのではなく、考え事をしていたから。
フブキの目的はヒーロー協会だったが、サイタマに会えたのは都合が良い。
「ちょうどいい。サイタマ、あなたもついてきて」
あなたの住処を破壊した張本人に会わせてあげる、と言うとサイタマはフブキの誘いに了承した。
サイタマの力を借りたいほど、重要な目的があるのだ。
そういえば、と。
「名無しさんもいるの?」
「名無しさん? いねーぞ」
「そう。貴方に会いに行くと必ずと言っていいほど名無しさんといるから」
「アイツが勝手に俺んちに来るんだよ」
名無しさんもいればとてもとても心強かったが、いないのなら仕方ない。
ぞろぞろと歩きながらたどり着いたのはヒーロー協会本部特別収容所。
サイタマは周りをきょろきょろ見渡すが、フブキの目的が見えない。
「でっけぇエレベーターだな。普段何のっけてんだ?」
フブキの目的はサイコスに会いに行くことだった。
サイコスの狂気の元、恐怖のイメージ、その根源……なんとしても聞きださないと。
地下13階にたどり着くと、分厚いガラスの向こうには黒いスーツの男数人と椅子に縛り付けられてるサイコス。
フブキはサイコスではなく、額に星の冠のようなタトゥーの男性を見つめていた。
「面会は中止よ。全員いますぐここから避難して」
フブキは説明する。
「今朝本部の投獄済リストにサイコスが追加されたわ。プロヒーローなら誰でも確認できる情報よ」
それが何を意味するのか。あの時戦いに参加していたフブキ組は何となく察することができるだろう。
サイコスと戦った張本人が見たらどうするか。
勿論、トドメを刺しに来るだろう。
天井が割れた。
目の前に塵が落ちてくる。
サイタマはこの破壊ぶりを見て理解した。
「なるほど。俺の家を壊した張本人ってのは……」
サイコスの斜め上からひと際大きな瓦礫が数個落ちる。
「戦慄のタツマキ!!?」
「コイツどうして生かしてるの?」
タツマキは潰すためにサイコスの上に瓦礫を落とした。
それを守るのはフブキとアポロ。
サイコスに落とされた瓦礫の軌道を変え、シールドを張る。
「ジャマしないでよ部外者!」
ツクヨミが壁に埋まる。
フブキがスポンサー達に地上に逃げるよう指示した。
スポンサー達は逆らうことなく、情けない声を上げエレベーターに走る。
だがアポロが立ち上がりスポンサー達を気絶させた。同時に防犯カメラも破壊する。
この人物が強いことをフブキは理解した。
だから、サイタマがいて運が良かったと思うのだ。
バギッ
真っ二つに割れた床にサイタマは吸い込まれていった。
「あ、サイタマが……」
タツマキが出てきた天井を名無しさんは覗く。
なんだか滅茶苦茶蚊帳の外だし、私が来た意味はあるのかと思うがタツマキの頼みだから仕方ない。
「名無しさん、お願いがあるの。念のためサイコスを守ってちょうだい」
友人から頼られたのが嬉しくて名無しさんは首を縦に振る。
それにサイコスには文句の1つや2つ言いたかったからだ。
タツマキについてきた来たものはいいものの、現状特にやることがない。
タツマキぐらいの強さであれば、自分がいなくともサイコスを守れるのではと思うから。
しかしフブキを見て考えが変わる。
なるほど念のため、とはこういうことかと。
「うっ!?」
ぐわん、とフブキの意識が揺れ倒れた。
アポロがフブキの常用する美容サプリに毒を紛れ込ませたのだ。
タツマキは超能力を消し、アポロの言う通りにする。
「運びやすくしましょう」
メキメキとタツマキの体が捻じれていく。
その様子に思わず叫ぶ者も多かった。
アポロは収容されているケージを開放した。
シナリオ計画も完璧だ。
ボコッとサイコスの椅子下の床ごと持ち上げる。
「では」
ツクヨミ達がサイコスとタツマキとフブキを連れて天井の穴に向かう。
それを止めようとするのは勿論フブキ組。
山猿が大きな瓦礫を投げた。
アポロはその瓦礫をフブキ組にぶつけて、
「!?」
アポロの動きが止まる。
確かに瓦礫を操っていたのに、その瓦礫がなくなったからだ。
何かに粉砕された。
ふと目の前に誰かが通る。
そしてサイコスが地上に戻っていた。
「……何者」
アポロが静かに尋ねる。
サイコスの隣に立つ人間は椅子の背もたれを片手で持っている。
コイツ、何者。アポロの眉間に力が入る。やがて手も震え始めた。
先ほどからサイコスを持ち上げようと念力を出しているが、床から1ミリも動かない。
まるで強い力で押さえつけられているように。
フブキは目を見開く。
その人物に見覚えがあったからだ。
「(あれは……B級6位のワイルドホーン?)」
あれはワイルドホーンの頭だ。
だがあんなに小さかっただろうか?
「私は趣味でかい……いや、えーと……。……趣味で超能力者狩りをしているものだ!!」
決まった! かっこいい! と名無しさんはエッヘンと胸を張る。
フブキは「あぁなんだ名無しさんか」と気づいた。
それにしても、どうして彼女がここに?
「ッ多少は……やるようですねッ!!!」
アポロは名無しさんの手足を引きちぎろうとした。
確かに力を出している。それも全力といってもいいほど。
なのに彼女の体はピクリとも動いていなかった。
「サイコスちゃん久しぶり! あのね、私は貴方に言いたいことが沢山あってだね」
余裕で話している名無しさんに、アポロの冷静さが失われようとしていた。
「いいでしょう! 貴方もひき肉に混ぜてあげます!!」
超能力者はイメージできるのなら非人道的なこともできる。
例えば、相手の体内をかき乱し内臓をぐちゃぐちゃに混ぜることだって。
「金脈見つけたのってサイコスちゃんの能力? だとしたらもう一回金脈見つけられない?」
「……ッ!!!」
どうして効かない!?
「見つけた」
バチンッとタツマキはアポロの拘束を解く。
アポロの反応は早い。すぐさまフブキの体内にあるカプセルを割ろうとする。
だが、カプセルは反応しなかった。
タツマキが既にアポロの念信号をマネて探していたのだ。
フブキから出てきた毒に、本来ならアポロは避けるか念で止めることが出来ただろう。
だが、
どばちゃっ
「!!?」
開放したはずの怪人の臓物が吹っ飛んできたのに気を取られてしまった。
「ぐあっ」
カプセルの毒はアポロに突き刺さった。
肌が変色し、血管が浮き出ているアポロの後ろでタツマキが話しかける。
「あとでツクヨミについて洗いざらい吐いて貰うわよ」
アポロを包み込むように瓦礫を集め球状の中に閉じ込める。
逃げた手下ももちろんタツマキは逃がさず壁に埋めた。
「フン」
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