101発目
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「ふぅ……」
お腹が苦しい名無しさんは歩くのも精一杯であった。
1歩足を進めるごとに胃がキリリと痛むのだ。
もしかするとあの時倒れた時よりも痛いかもしれない。
ヤケ食いなんてするんじゃなかったと後悔してしまう。
お腹を抑えながら階段を登る。
「は?」
そして自分の家の前に辿り着くと、驚きで足が止まってしまった。
何故なら、ドアが滅茶苦茶にされているからだ。
ほぼ丸い状態で、ドアノブがあるからこそドアと認識できた。
どうしてこんな事に?
驚いたまま部屋の中に入る。
「は?」
またしても名無しさんは驚きの声を出してしまう。
部屋の中は荒れているようなものだった。
布団は捲りあがり、冷蔵庫も電子レンジも空きっぱなし。
トイレや洗面台の扉も開いた状態だった。
空き巣か?
いやでも、この部屋に高価な物は置いてあるはずがない。
それに何か盗まれたようにも見えないのだ。
もしや怪人協会の生き残りだろうか?
そう考えながら、一先ず怪我を消毒しようと本棚にある薬箱を取り座った。
その瞬間、
「名無しさんーー!?!?」
「ギャーーーッ!!?」
いきなり窓から白い物が降ってきた。
まるで巨大な饅頭が、流星の早さで窓を突き破ったようだ。
白い物は立ち上がり、名無しさんを見下ろした。
メテオリックバースト姿のボロスだ。
名無しさんははたまた驚いてしまう。
家に帰って来てから驚きの連続で、胃の痛さなど忘れていた。
「心配したぞ!?」
「え、えーと……」
ボロスは座って名無しさんと同じ目線にしながら、彼女の肩を揺する。
通常の人間や怪人ならばその速さは脳を振動させてしまう。
だが名無しさんは電車で揺られているかなぐらいだ。
やがてボロスはその手を止めて、真っ黒な瞳で名無しさんを見つめていた。
「……無事で良かった」
ボロスははぁーっと大きなため息を吐いた。
その息は心の奥底からの安堵だった。
そのことは流石の名無しさんでも分かる。
あの時、名無しさんが倒れた時の顔だ。
自分のことを心配してくれるのは初めてだった。
それは力を手に入れて、最強だからではない。
生まれて初めて、心配されたのだ。
初めての感覚に何だかこそばゆい。
だが、嬉しい気持ちは確かにあるのだ。
「ありがとうボロス」
「……!」
ボロスは顔を上げて名無しさんの顔を見た。
一瞬、時が止まったようだ。
それくらい名無しさんの笑みは優しいものだった。
「取り敢えず通常状態に戻って、何があったか聞いてもいい?」
「そうだな」
ボロスは元の姿に戻る。
元々ボロスは人間の服を着ていたが、メテオリックバースト状態になった時に服は吹き飛んだ。
つまり全裸状態となったわけだが、名無しさんは動じない。
何故なら先ほど全裸のサイタマを2度も見たから。
ボロスは裸であることを何も気にせずに話を聞いた。
どうやら名無しさんが急に家に来て、「何があってもZ市行っちゃ駄目らしい」と言った。
ボロスは名無しさんの発言に首を傾げたが、頷くしかない。
そしてZ市から破壊音が聞こえながらも、2人でゲームをしていた所名無しさんが唐突に消えたとのこと。
「(なるほど、その時にこの世界に戻ってきたんだ)」
名無しさんが高速で移動したのではないことは確か。
何故なら風圧も埃も舞わなかったから。
本当に"消えた"のだ。
そして心配したボロスは名無しさんを心配して探し回った。
まず名無しさんの家のインターホンを鳴らしたが反応はいない。
そもそも生体反応を感じなかったのだ。
仕方ないのでドアを破壊し、部屋の中を探し回った。
それでも見当たらなかったので、Q市を探し、そのままメテオリックバースト状態で全国を探し回ったそうだ。
「以上だ」
ボロスが言う。
「にしても、メテオリックバーストにならなくても良かったのに。だってあれ寿命縮めちゃうんでしょ?」
「……お前が急にいなくなったら焦るだろう」
ボロスが名無しさんから視線を外す。
これは照れ隠しなことは分かった。
名無しさんも思わず照れてしまう。
正直に言えば嬉しかったのだ。
急にいなくなった自分を心配して、最終兵器のような姿になってまで探してもらって。
名無しさんはボロスの手を握った。
「本当にありがとう」
一通り感謝を伝えた所で、次はボロスが質問をする番だった。
名無しさんは怪我を手当てしながら説明する。
説明といっても詳細は話さない。
またボロスを心配させるのは申し訳ないからだ。
「ま、サイタマと喧嘩してただけだよ」
「そうか」
ボロスはすぐに納得してくれた。
名無しさんがこうして血を出すのはサイタマと戦った時だけだ。
だが、少しの疑問は持つ。
ここまで名無しさんが怪我をしたのは初めて見たからだ。
でもボロスは名無しさんを信じるしかない。
名無しさんの本心は自分では分からないから。
きっと、彼女の気持ちが分かるのは……1人しかいないだろう。
だからボロスに出来ることは少ないのだ。
「今日は飯を奢ってやろう」
「マジ? やったーありがとう!」
「好きな場所でいい」
「じゃあお寿司」
「あぁ、そうしよう」
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