96発目
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『あ……?』
ガロウの手は、確かにジェノスの胸を貫いたはずだった。
しかし、その手はとある人物に止められている。
「ストーップ!」
名無しさんだ。
名無しさんがたったの片手でガロウの手を止めていた。
そして、ガロウの腹部を殴った。
『ゴワッハァァァ!!!?』
「!?」
ガロウが吹っ飛んでいく。
しかし、それと同時に名無しさんは片膝をついた。
全身の力が無いのだ。まるでどこかに吸い込まれたように。
また、鼻血。またしても、全身から血が出ている。
何故? どうして?
ガロウが立ち上がるのは早い。
名無しさんへと殴りかかる。
勿論、名無しさんはそれを片手で受け止めて──。
「な……!?」
受け止めていない。
名無しさんはただただ殴られている。
まるで名無しさんだけハンデがあるよう。
身体が動かないハンデ。
「やめろ! そのままにしておくんだ!」
ブラストが叫んだ。
しかしそんな声は名無しさんに聞こえていない。
小さな背中からジェノスが見えないよう、庇い続ける。
一方的な暴力。
ジェノスは後悔した。
何故、あの時ブラストの要求を吞んだのか。
今、自分がこうなっているせいで名無しさんが傷ついているではないか!
『ホラホラァ!! 先輩どうした!?』
バングが放射能に耐えられず、倒れた。
ブラストは考える。
どうしたらいい。
どうしたら、本来のストーリーになる?
このままでは、この世界が死の星になるどころか、存在自体が消えてしまう。
『終わりにしてやる』
「……ッ!」
ガロウが名無しさんの髪を掴んだ。
そして、ガロウの手は名無しさんの心臓を掴むために構える。
やむを得ない!
ブラストは転送用の穴を投げた。
『!』
「!」
心臓を貫くための手は、転送されてジェノスの核を貫いた。
ガロウにとっては予想外。
名無しさんにとってもこれは予想外だった。
自分が死ぬのは良い。だが、だが!!
『フン。まぁいい。元々はあいつの核を取ることだったからな』
名無しさんの髪を掴んでいた手を離す。
そのまま名無しさんは倒れ、額を地面にぶつけた。
ジェノスが死んだ。急いで核を取り戻さないといけないのに。
呼吸ができない。手足が動かない。苦しい。痛い。
意識が途切れそうなのを、必死で食い止める。
苦しくて痛いのは、ガロウに殴られたからではない。
自分の内側から、痛みを感じる。
これもブラストが言っていた「禁忌を犯した」からなのか。
最期の力を振り絞り、せめて仰向けとなった。
黒い雨が降る。
それは皮膚にベットリと纏わりつき、気持ちいいものではなかった。
黒い雨を気にせず、サイタマは名無しさんとジェノスを見た。
「……」
『遅かったじゃねーか』
ガロウがジェノスの核を投げる。
サイタマは黙ってそれを受け取った。
名無しさんを見る。
彼女は呼吸による、胸の動きが無かった。
ぶるり、と震えた。
危うくジェノスの核を握りつぶしてしまいそうなほど。
どうしてこうなっているのか、どうして、2人が死んでいるのか。
疑問はすぐに怒りへと変換し、ガロウを見た。
「俺はつくづくヒーローの勘っての?」
核を持っていない逆の手に力を込める。
「ねえんだなあ……」
必殺マジシリーズ
マ ジ 殴 り
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