9発目
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サイタマの絶望の顔を見るのは何度目か。
つい先日もこの顔を見たな、とお煎餅を齧る。
ジェノスが何があったのかと聞けば、「変な奴に付きまとわれた」とのこと。
「音速のソニック? 誰ですか、その頭痛が痛いみたいな名前の人物は」
名無しさんが音速のソニックという名前に反応する。
どこかで聞いたことのある名前だからだ。
お煎餅を食べる手を止め、脳内で音速のソニックという名を駆け巡らせてみる。しかしピンと来る顔は無かった。
きっと何かの名前と勘違いしているのだろう。
再びお煎餅を食べる手を動かした。
「てか、なんでお前ら一緒にいんだよ。帰れよ他人なんだから」
サイタマが額に怒りの筋を浮かべる。
しかも名無しさんは勝手にサイタマのお煎餅を食べている。
「デートしてた」
当たり前かのように言う名無しさん。
「先生! 俺は強くならなければ」
「うるせええええええ」
完全無視された名無しさんはショックのあまり、持っていた煎餅を落としてしまった。
3秒ルール、と名付けその煎餅は名無しさんの胃に入るのだが。
しかしそれで心折れる名無しさんではない。
すぐに元気を取り戻し、テレビをつけた。
何でコイツは人の家でこんなにくつろげるのか? サイタマは疑問に思うが名無しさんなので仕方ないと思うしかない。
「ヒーロー名簿に登録してないんですか?」
「知らなかった。……名無しさんお前知ってた?」
「え」
唐突に顔中に汗をかきはじめる名無しさん。その姿は誰が見ても動揺している。
名無しさんはテレビを集中的に見て、お煎餅を食べるスピードを速めていた。
精一杯捻りだした言葉も、動揺を表に出したようなものだった。
「知らないナー」
「おい名無しさん」
サイタマは名無しさんの頭を掴み、無理やりこちらに向かせた。
汗だらけの名無しさんの目は、サイタマと合わせようとしないし、泳いでいる。
「……だって! そんなん教えたらサイタマに仕事できちゃうじゃん!! ニート仲間いなくなっちゃうじゃん!!!」
「テメエエエエエエエ!!」
頭を掴んでいた手は、胸倉をつかんでいた。
そして上下に揺さぶっている。他の者なら脳震盪を起こすが、名無しさんは目が回るだけだ。
サイタマの怒りがやっと鎮まると、名無しさんを床へ落とした。
「クソッ……! ジェノス、登録しようぜ! 一緒に登録しうてくれたら弟子にしてやるから」
「行きましょう!」
「サイタマの裏切り者おおおおおおお!!!」
名無しさんの叫びは2人には届かない。なぜなら、名無しさんが発する前に既に部屋を出ていたから。
結局私は孤独だ。とヨヨヨと座り込んだ。
いや、いいのだ。怪人はこれでいいのだ、と涙を流しながら残りのお煎餅を口の中に放り込んだ。
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