第一章
夢小説設定
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『……で、話って?』
総長室に連れてこられたヘルは、かなり不機嫌そうに扉に凭れ掛かりながらヴァンを睨んだ。
すると、ヴァンは椅子にドンと座り、ヘルを真剣な表情で見つめた。
ヴ「実は聞き忘れたことがあってな。ヘル、お前は
『
ヴ「そうか、二年経っても考えが変わらないようで嬉しいぞ。これからも私の計画に協力してくれるか?」
『勘違いするなよ。僕はお前に利用されるのはごめんだが、このままレプリカレイ達と同じ道を歩みたくないだけなんでね。僕に都合の悪いことは、お前に協力するつもりはない』
ヘルはそう断言する。
ヴァンが言う協力とは、
レイとイオンだけでなく、妹のような存在だったレプリカレイ達をも殺した
それは、彼女を創ったヴァンが一番よく分かっている事だ。ヴァンはうんと深く頷いた。
ヴ「それは好きにしていい。お前がこちら側にいてくれるならな」
『ま、一応ヴァン側って事でいいのかな。言ってることは間違ってはいないし……』
ヴ「そうか、私は嬉しいぞ!流石私の娘だ!」
『誰がいつお前の娘になったんだよ……;;』
大げさに喜ぶヴァンを見て、ヘルは大きな溜息をついて呆れていた。
『……で、他にもあるだろう?また呼び出し喰らうのは嫌だから、さっさと言ってくれない?』
ヴ「流石ヘルだな。その通りだ。実はな……
――導師イオンが行方不明になったという情報が入ったんだ」
『……イオンが?』
そう目を細めると、ヴァンはまた深く頷く。
ヘルは最初、何かの冗談だと思った。彼女は今の導師イオンには会ったことが無いが、今の導師イオンが"レイ"が知るイオンとは違う、七番目のレプリカであることを知っている。正確には、ヴァンに聞いたのだ。
跡継ぎがいなくなったために創られたレプリカイオン達の中で、七番目イオンが最も適正だった為、他のレプリカイオンはザレッホ火山で破棄されているという事も……。
それを聞いた時、ヘルは自分以外にもそんな存在があったと知り絶句した。それと同時に、必要とされなかった自分への憎しみが増したのも覚えている。
『……フン、偽物がどうなろうと僕の知ったことはないね』
ヴ「そうか、お前には純白騎士レイの記憶もあるのだったな。お前にとってのイオンは
『無駄なおしゃべりは止してよ。で?偽物イオンがいなくなったところで、僕にしてほしいことがあるんじゃないの?』
ヴ「うむ、流石察しはいいみたいだな。お前も知っているだろう。導師にしか開けられない"扉"を……」
『……ダアト式譜術か』
ヘルの言葉に頷くと、ヴァンは話を続ける。
ヴ「そういう事だ。導師イオンは、
『――つまり、僕らにそのイオンを探して連れ出せって言うんだな?』
ヴ「まあそんなところだが、お前とシンクにはやってほしいことがあってな。それはシンクに伝えておく」
ヴァンのその言葉には頷けなかったが、ヘルは仕方ないと言わんばかりに諦めることにした。
すると、ヘルは一人忘れていた人物を思い出した。
『……そういえば、七番目レイはどうした。あいつは今もイオンの
ヴ「ああ。だが、導師イオンや
『……そうか』
ヴ「
『誰が……!それに、あいつは弟なんかじゃない。必要とされた偽物なんて……!!
――話が終わりのようなら僕は行く。じゃあな』
そう怒鳴り、少し落ち着くと、ヘルは総長室を後にした。
バタンと扉を閉めると、扉の近くで、シンクが壁に凭れ掛かって立っていた。
シ「……ヘルも
『き、聞いてたのか?立ち聞きなんて、趣味の悪いことやってくれるじゃん……』
シ「勘違いしないでよ。リグレットに、ヘルが遅いから様子を見て来いって頼まれたんだ。別に、心配で見に来たわけじゃ……//」
顔を少し赤くするシンクに、ヘルの表情が軽く和らいだ。
――そう、笑っているのだ。あのヘルが。
シンクは思わず、ドキッとしてしまう。
黒いフードではやはり口元しか見えないが、それでも、少しだけ上がっている口角にどうしても目がいってしまった。
まあ当の本人は恐らく、ヴァンとの会話で自分が"女"だとシンクに知られていない事を、ホッとしているのだろう。
『ふふっ……可笑しい事言うね、シンクは。僕が少し遅くなっただけで心配?』
何かを試すように微笑む彼女の珍しい表情に、シンクの鼓動はドキドキと音を上げ、その自分でも分からない感情がシンクの思考を邪魔していた。
だが、シンクはしっかりと理性を保ち、プイッと目を反らした。これ以上ヘルを見ない為だ。
シ「……当たり前じゃん//」
『そ、まあ礼は言っておくかな。そういえば、ヴァンが話があるって言ってたよ。僕は先に行ってるからな』
それだけ言い残すと、ヘルは先程とはまるで別人のように、ご機嫌な様子で食堂へ戻っていった。
それはきっと、彼女も微かにシンクに"ある感情"を抱いているからだろう。それもそうだ。二年も同じ場にいて、一番近くにいたのだから。
シンク自身は、認めはしないものの微かに気付き始めているが、彼女は相当鈍く、全く気がついてはいなかった。
シ(なにあれ、男にしては可愛すぎでしょ……//
――"男にしては"か。バカだな……アイツが女だったらいいのになんて……。
ボク、最低だ……)
ご機嫌に食堂へと歩いていくヘルに、シンクは寂しそうな背を向けて、総長室へ入っていった。
しかしその後、ヴァンの話が終わり食堂に戻ったシンクが、珍しくケーキをニコニコと食べるヘルを見て癒されたのは、言うまでもない――。