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色とりどり詰め合わせセット

1.強い人
私は敗北者だ。クラスで虐められていた子が居たのに見ていただけだ。けれどその子は、助けがない状況の中皆勤賞を取った。私は何もなかった。いつ、何故休んだのかは記憶にない。
大人になってコンビニであの子とすれ違った。私は髭を整えずスウェットで、あの子はスーツを着ていた。私は敗北者だ。


2.たった一つのエンディング
「ゲームのエンディングってなんか悲しくなるよね」
「そう?」
「あー、この世界はもう終わっちゃうんだ、って。この後の話はめでたしめでたし……ってなって私たちは経験できないでしょ?」
「あー。確かに」
「もっかいゲームを始めたら結局初めからになって、おんなじ世界を繰り返すだけだし」
「でも、最近は裏エンディングみたいなのもあるよね」
「それもさ、選択肢が無限にあるわけじゃないし。グッドエンドとバッドエンドくらいしかないゲームも多いじゃん」
「まあ、うん。そうだね」
「人生みたいにさー、エンディングは一つじゃないって思わせてくれる物語ってないのかなぁ」
「ちょっと難しいかもね」
「あー、そうだ。思い出した。まーくんのお家にあったあのゲーム面白そうだって思ってたんだ。今度お家に行ったときにやらせてもらおうって思って忘れてた」
「どのゲーム?次のデートで持ってくるよ」
「んー、ドラゴンに乗るやつ!ほんと?ありがと〜!」
「楽しみにしてて」
「うん。わかった。ーーあ、私こっちだから」
「またね」
「うん、またね!」
これが最後に交わした会話だった。

「人生も、マルチエンディングだったら、まーくん救えていたのかな」
問いかけには誰も答えない。彼の遺品から貰ったゲームのパッケージがそこにあるだけ。
『運命からは逃れられない』
ーー嫌なキャッチコピーだ。そのゲームを床に放って、もう一度布団に潜る。
人生のエンディングは残酷にも、一つだけだった。
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