バレンタイン戦争
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A組の英語は幸いにも自習だった。
飛段はトビを教室の隅に連れていく。
そのままシメるのかとデイダラは思ったが、なにかを話し合っている様子だ。
肩に手を回されてボソボソとなにかを言われたトビは親指を立てて「OKっス」と承諾した。
それから2人は今度は教卓の下に隠れ、出てきた。
「「!!」」
席からそれを見たデイダラとイタチは唖然とした。
他の男子達もだ。
飛段がトビの面を被っているからだ。
「ムリがあるだろ!!」」
堪え切れずにデイダラは席から立ち上がってツッコんだ。
「せめてカツラを被れ」
イタチも呆れて言った。
確かにこれでは髪の色だけでわかってしまう。
「逆にどっちがどっちかわかんねーだろォ?」
「いやいや一撃でわかるから!」
「3時間目が終わったらオレになりすました飛段さんが角都先生に突入するっス」
「……………」
イタチはもうなにも言わなかった。
そうこうしている間に3時間目の終わりのチャイムが鳴る。
B組の教室の扉が開いた音が聞こえる。
女子達も飛段を待ち構えるようにスタンバイする。
角都がA組を通過しようとしているのが見えた。
「じゃ、行ってくるぜェ」
「待て! 飛段!」
デイダラは止めたが、後方の扉から出て行ってしまう。
やはり一斉に女子達が飛びかかった。
「言わんこっちゃねえ!」
デイダラが助けようと立ち上がったとき、イタチはデイダラの右手首を握りしめて止めた。
「?」
「これでいいんだ」
イタチがアゴで差した方向を見ると、トビが前方の扉から出て行くのが見えた。
それから角都の手をとって走り出している。
「……まさか」
「背の高さで気付け」
「わかんねーよ! あいつら1cmしか違わねえんだぞ! うん!」
「あと、声で聞き分けろ」
飛段とトビはしっかりとカツラを被っていた。
ただし、トビは飛段の、飛段はトビのカツラを被ってだ。
なぜそんなものをトビが持っているのかは気にする必要はない。
飛段になりすましたトビが囮となり、その間にトビになりすました飛段が角都を連れて逃げる作戦は成功した。
一方、飛段は角都と階段にいた。
「飛段、どういうつもりだ」
一瞬で見抜いた角都は目の前のトビの仮面を煩わしそうに外した。
仮面の下に飛段のしてやったりという笑みが現れる。
「今日はバレンタインだろォ? なのに女子達が妨害するからよォ」
「あの群れはそういうことか。モテる男は辛そうだな」
「オレは角都にだけモテりゃそれでいいっつーの」
「ゲハハ」と笑った時だ。
「ニセモノよ!」
「じゃあ本物は…」
気付いた女子達がこちらに向かってくる。
「ヤバい」と焦る飛段は持っていた箱を角都に手渡そうとした。
「わっ、なんだ!?」
その前に角都は飛段の右手首を引っ張り、階段近くのロッカーに飛段を押し込め、自分も入って扉を閉めた。
ガタイのいい男2人にとっては隙間が埋まるほどの狭い空間だ。
女子達が階段を駆け降りるのがわかった。
飛段は角都の肩に口を塞がれている。
「ん…ぐ…!」
苦しそうなので少し体勢を変えて口と肩に隙
間を開けた。
飛段は「ぷはぁっ」と息を吐きだす。
「静かにしていろ。また来るかもしれない」
「なんで角都まで隠れるんだよ」
「……箱の中身はなんだ?」
誤魔化すように角都は尋ねた。
飛段は「ああ…」と言って動かしづらそうな顔しながら箱から中身を取り出し、角都と自分の体の間から引き出したそれを角都の目前に近づける。
「……ポッ○ー…」
角都でも知ってる菓子だ。
「角都、あまり甘いもの食べねーだろ? だから控えめなモンにしたけど…」
不安げな上目遣いの飛段の瞳を覗きこみ、薄笑みを浮かべた。
「確かにオレは甘いものが苦手だ。だから、手伝え」
角都は箱から1本取り出し、自分の口にくわえ、先端を飛段の口元に当てた。
飛段は顔を真っ赤にしながらくわえたところからポキポキと食べていく。
当然先には角都の唇がある。
飛段の唇が近づき、角都は急に食べるのを速めて飛段の唇と重なった。
「1袋何本だ?」
「え…と、確か10本…。2袋だから20本か」
「なら20回頑張れ」
「ハァ!?」
「早くしないとチョコが溶けるぞ」
そう言って、挑発的にチョコのついた飛段の唇を舌先で舐めた。
20回の間だけ、角都は飛段を独占することができる。
そんな角都の考えを察することなく、飛段は躊躇いがちに2本目に突入する。
*****
その頃、トビは両手にチョコの箱を抱えていた。
「どうしたそれ…」
デイダラは驚き、それに指をさして尋ねた。
トビは「いや~」と照れながら後頭部を掻いて答える。
「なんか、仮面剥がされちゃったあと、他の女子からいっぱいもらっちゃって…」
「「剥がされた!?」」
デイダラとイタチは驚いて声を揃える。
他の女子はトビの素顔を見たことになる。
それであの手のひらを返したような大量のチョコをもらったというのだ。
男子達はトビを敵リストに追加した。
いったい、仮面の下はどんなイケメンなのか。
いや、イケ面をしている可能性だってある。
角都と飛段がイチャイチャしている時に、トビの新たな謎がひとつ増えた。
.To be continued