昨日の敵は今日の親友
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それから数年後、オイラは暁高校に入学した。
本当は芸術専門学校に行きたかったけど、そこにサソリの旦那が就任していることがわかった。
まさか美術の教師をしているなんて、つい最近まで知らなかったことだ。
なのに、
「あ―――!!」
入学式早々、遅刻だ。
「最悪だ―――!!」
起こしてくれるはずの親は、また海外に出張したようだ。
オイラは急いで新しい学生服に着替え、髷を結い、カバンを持ち、テーブルに置かれていた朝食のトーストを口にくわえて家を飛び出した。
高校生なりたての男子が、どこかの少女漫画みたいなことをするハメになるとは。
口をモゴモゴとさせながら歩道を走り、横断歩道を渡った時だ。
「!!」
いきなり、葉と葉が擦れ合う音が聞こえたかと思ったら、右横の塀から誰かが飛び越えてきた。
朝日に照らされてキラキラと光る銀髪にオイラは目を奪われる。
ピンクの瞳がこちらを見た。
目の前に着地したのでオイラは思わず立ち止まる。
「な…」
「行儀悪ィな」
「あ!」
銀髪はオイラの口にくわえたパンを取り上げ、自分の口にくわえると走り出した。
「おい待て! パン泥棒!」
「腹減ってんだよ!」
追いかけるオイラに銀髪は肩越しに振り返って平然と言った。
器用に食べている。
もう3分の2は食べられてしまった。
それからオイラと銀髪は同時に暁高校の正門を潜り、玄関で争った。
「てめー! 全部食いやがって! うん!」
「曲がり角で誰かとの出会いを期待してたとか?」
「うるせー!!」
上履きに履き替えようとしたそいつの左足の上履きを蹴り飛ばす。
「あ!」
オイラは素早く上履きに履き替えて階段を上がろうとする。
だが、右足首を足払いされてこかされた。
顔面をぶつける前に廊下に手をつく。
「痛た!」
パンッと乾いた音が鳴った。
同時にてのひらに痛みが走る。
芸術家の手をよくも。
「おっさき~! バァーカ!」
「このヤロー!」
「うおっ、そうくるか!」
攻防戦を繰り広げながら階段を上がり、廊下を渡り、自分のクラスである1-Aへと向かう。
なぜ早朝に、しかも今日初めて会ったばかりの奴とこんな戦いになっているのか。
オイラのクラスは廊下の一番奥だ。
銀髪は逸れない。
まさかと思ったら的中だ。
こいつもオイラのクラスだ。
教室の扉を同時に開け、息せき切らしながら教室の中に飛び込んだ。
それから銀髪と睨みあう。
「見ろ! オレが先に入ったんだからな!」
「いーや、オイラが先だったぞ! うん!」
「オレの足先が先に入ったの、見てただろ!」
「オイラの手が先に教室に入った!」
「オレのクセ毛がそれより先に入った!」
「オイラの髷が…」
オイラと銀髪が言い争いになった時だ。
「デイダラさんと飛段さんですね。席に着いてください」
教卓から先生が声をかけた。
確か、担任の鬼鮫先生だ。
ここで引くわけにはいかない。
まだ勝負はついてないんだ。
笑顔でその場をおさめようとする先生に向かってオイラと銀髪は反抗する。
「今忙しいんだ!」
「先生はどっちが先に入ったと…」
オイラが聞こうとした時だ。
「一生廊下でやってますか?」
笑顔の先生の背後に、大口を開けた鮫が見えた。
「「……………」」
血の気が引き、オイラと銀髪は同時に黙った。
「「座ります」」
2人そろって手を挙げ、空いてる席へと向かった。
周りを見ると、他の生徒も顔が青い。
最悪なことに、オイラの席は一番前の席で、銀髪の席も近い。
オイラはムスッとした顔をし、窓際で前から2番目に座る銀髪の斜め一番前の席に座った。
隣を見ると、オイラの大嫌いな奴がいた。
うちはイタチだ。
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