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病で床に伏していた角都が学校に復帰した翌日、暁高校は文化祭の準備で慌ただしかった。
それは3-A組も同じである。
各々の役割を果たしながら出し物の準備をすすめていく。
教卓の前で悩ましげに教室内を見渡している角都はイタチに声をかけた。
「イタチ、説明しろ」
「は?」
机運びをしていたイタチは立ち止まり、角都に振り返った。
「なぜ3-Aの出し物がメイド喫茶なんだ!?」
そんな話は一言も聞いていなかった。
教室内がだんだん喫茶店とかしていくのがわかる。
イタチは一度その場に机を置いて答える。
「だって先生、この前風邪で休んでたじゃありませんか」
あの日に文化祭の出し物がクラス内で話し合われたらしい。
その場には副担任である鬼鮫がいたはずだ。
なのに、鬼鮫からもなにも聞かされていない。
理由は内容で知れた。
「オレになにも報告しなかったのも問題だが、それより大きな問題は、なぜメイド役がよりによっておまえ達なんだ!?」
おまえ達というのは、イタチとデイダラと、今はここにいないが飛段の3人である。
ちゃんと女子がいるのに。
「ああ…、それは…」
イタチは困った顔をしながら、教卓に近づいて教卓の下から投票箱を出し、角都に手渡した。
中を開けてみると、3人の名前が書かれた紙が多く入ってある。
「これは、メイド役の投票か?」
「これが結果です」
それからイタチはポケットから折りたたまれた紙を取り出し、それも角都に手渡した。
広げてみると、そこにはメイド役の投票結果が書かれてあった。
「クラス投票した結果、そうなってしまいました」
飛段とデイダラとイタチの名前下にはたくさんの“正”という文字が書かれていた。
それ以外はほとんど“一”の一線だけである。
全校で投票してもおそらく同じ結果になるだろう。
それを聞いた男子達は頭を抱えた。
「一体なんのための共学なんだ!」
「いくら女子が多いからって!」
「それでも、男子の中でも誰かそいつらに入れた奴いるだろ!」
「男子、さぼらないで」
女子以外、若干どんよりした雰囲気だ。
「とにかくもう決定してしまったので、今更変更できませんよ。いや、私も最初は反対してたんですけどね…」
機材を教室に運び込んできた鬼鮫がそう言うと、角都はその胸倉を乱暴につかみ、ギロリと睨みつけて一枚の紙を目の前に突き付けた。
そこには、“イタチさん P.N.鮫肌”と書かれてある。
「だったら、イタチに一票したこのペンネームはなんだ? 昔、貴様がラジオのハガキに使用していた名だろう?」
「は…、はあ…、そんな過去…知りませんよ…」
わかりやすいほど動揺しているのが見てとれる。
「…「私は魚になりたい…」…」
「はあ!! それは…!!」
鬼鮫から言わせれば過去作品。
「「魚は自由で…」…」
「やめてくださいいいい!!」
今となっては恥でしかない詩に鬼鮫は絶叫した。
それ以上言わせてなるものかと角都を取り押さえようとするが、角都は「「大きな魚に食べられても…」…」と口にしながら、阻止されようとする手から逃れる。
デカい男2人が教室内を走り回り、生徒達は作業しにくそうだ。
「角都ゥー」
その時、教室に飛段が入ってきた。
「なんだ飛段、今取り込み…」
飛段に振り返った角都はその姿に言葉を失った。
その姿を見た女子達は「キャー」と黄色い声で叫んでいる。
「衣装合わせしてみたんだけど、どうだァ?」
誰が作ったのか、本格的なメイド服を着ていた。
「……まぁまぁだな」
小さく言葉を発したあと、角都はふいと背を向けた。
「え~、なんだよ、「まぁまぁ」ってよォ」
角都の薄い反応に肩を落とす飛段。
しかし、角都は心の中で「GJ!」と叫んでいた。
付き合いの長い鬼鮫からすれば見え見えである。
(これで文句はないでしょう。それにしても…、早く私もイタチさんのメイド服を…!)
鬼鮫はイタチを見つめながら、先の楽しみのあまり小刻みに震えていた。
「鬼鮫、寒いのか?」
楽しみにされているイタチはそんなことを知るはずもなく、鬼鮫の身を心配する。
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