金と銀と黒
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あの日から、オレと飛段は屋上で会っては話すようになった。
飛段はどこか他の生徒とは違った。
あまり自分のことは語らない。
語るのはほとんど他人事だ。
「あいつはタチが悪いから関わるな」「あいつとあのコはできている」「あの先輩は実はこうでああで」など。
どこから仕入れてくるのか、その情報の数々。
それと不思議だったのが、なぜオレ以外と関わろうとしないのかだ。
問題児ではあっても、人に嫌われる要素はオレよりだいぶ少ない。
むしろ、人を引き付けそうな雰囲気がある。
それに、容姿もいいのだから恋人のひとりやふたりはいてもいいはずなのに。
「おまえは恋人は作らないのか?」
「ゲハハッ。なんだよ突然。いらねーよ、そんなの。イタチだって、そんなのいねーだろォ?」
「……………」
それもそうだ。
オレの場合、好きな相手が見つからないからだ。
見つける気もないが。
それに、あまり浮いた噂も作りたくないのもある。
飛段はどこか遠くを見つめ、牛乳パックに差しこんだストローをくわえた。
普段の頭の悪そうな表情が消えると、男女に関わらず思わずドキッとするような顔つきになる。
ずっとそうしていればいいのに。
本人はわかってて普段は隠しているのだろうか。
いや、それはないだろう。
*****
ある日、昼休みの間に、先生に頼まれた資料を取りに行ったオレは、美術室を通過しようとした。
ドンッ、と美術室から聞こえたその音に一度立ち止まり、気になって扉を少し開けて美術室をのぞいた。
そこには険しい顔でつかみ合っている飛段とデイダラの姿があった。
どちらかが突き飛ばしたのか、美術室の机がひっくり返っていた。
「飛段てめー、それ以上は許さねえぞ! うん!」
「なにが許さねーだ、超意味わかんねーんだよ。だから聞いてんだろ? あいつのどこがいいんだ? どこが好きなんだ? 触れたい触れられたい? 気持ち悪くねーのか?」
飛段の険しい顔が緩んだ。
その代わり、デイダラの顔に険しさが増した。
「馬鹿にすんな!!」
ゴッ!
顔を真っ赤にしたデイダラは飛段の顔を殴った。
「痛てェな、この髷男子が!」
ゴッ!
頭にきた飛段も殴り返した。
「やめろ!!」
見兼ねたオレは美術室に飛び込んだ。
2人がこちらに振り返る。
「!」
飛段はオレを確認すると、急いでオレの横を通過して美術室を出て行った。
それを見送ったオレは、途端に床に膝をついたデイダラに駆け寄る。
「大丈夫か?」
「触るな!」
肩に触れたその手を払われた。
「なんだよ…。テメーが飛段とつるんでるのは知ってんだからな、うん。どうせ、飛段とおまえで、オイラのことで笑い合ってんだろ?」
「なにをだ?」
尋ねると、再びデイダラの顔が赤くなる。
今にも泣きだしそうだ。
「出てけよ!!」
胸を突き飛ばされ、オレは尻餅をついた。
「出てけ、この優等生気取り!!」
少し腹が立ったが、オレは立ち上がり、黙って美術室を出て行った。
面倒だ。
資料を取りに行ったら、遠回りをしなければならない。
.