金と銀と黒
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もうすぐ文化祭だ。
甘味処同好会の部員であるオレは、文化祭中に客に提供する甘味物のメニューを見ていた。
他の部員は店の雰囲気を出そうと着物やら看板やらを制作の真っ最中だ。
オレは甘味処の本を手に、屋上へと上がる。
たまにはひとりで考えたい時もある。
文化祭準備に忙しそうな生徒と何度もすれ違い、オレはただゆっくりと階段をのぼっていった。
まるでオレだけ時間がゆっくりと動いているようだ。
扉を開け、心地のいい秋風が髪をなびかせ、頬を撫でた。
オレは柵越しの景色を見つめる。
もう何度この景色を見たことだろうか。
ひとりで見ることもあれば、2人で見ることも、3人一緒に見ることもあった。
オレはその場に座り、柵に背をもたせかけて本を読む。
どれも美味しそうだ。
いっそのこと全部作ってしまえばいいとさえ思う。
だが、部費にも限りがある。
オレの好物の三色団子にしようとしたが、やはり最後の文化祭はそれらしいものを作って客に喜ばれたい。
あの2人にもなにか作ってやりたい。
「!」
ふと横を見ると、淡い色の時計が落ちているのを見つけた。
手元近くにあったため、手を伸ばして拾ってみる。
文化祭用かと思ってよく見ると、飛段がいつも身につけている懐中時計だということに気付いた。
角都先生にもらったと喜び、肌身離さず持っていたのに、こんなところに落ちているとは。
大方、屋上でサボって昼寝をしている時に落としてしまったのだろう。
「しょがないやつだな…」
懐中時計を見て時刻を確認する。
夕方までまだ1時間以上ある。
秒針はゆっくりと時を刻んでいた。
そのゆったりした動きは、オレの眠気を誘った。
いけない
これを、飛段に渡さなくては…
意思とは反してまぶたは重たくなるばかりだ。
体を起こしたいのに、柵に縛り付けられたかのように動かない。
それにこのあと、デイダラの手伝いがあるのに…
約束をしていた。
遅れれば怒るだろう。
でも、10分…、いや、5分…
閉じられていく目の前にシャボン玉が通過した気がした。
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