容疑者飛段
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今はもう使われていないボーリング場で、男はだらしなく椅子に背を預けたまま天井を見上げていた。
男の足下には金や宝石が散らばっている。
男は苛立ちまじりのため息をついた。
(あと2日、落ち着いてから行動にでるか…)
それまでここでこうして金に囲まれながら過ごすしかない。
テーブルに置いた包丁を手にし、刃先に付着している血をなぞる。
(もう、そろそろ誰か殺してもいいよなぁ…。警察の奴ら、血眼になってオレを探しにくるかな…)
男が欲しいのは、金ではなく、事が終わるまでのスリルだ。
己に危機が迫るほど興奮する。
「くく…っ」
待ち遠しさに笑ったとき、
ガシャアン!!
「!?」
出入口のガラスを突き破り、車が突っ込んできた。
ボーリング場内を走り回った挙句、急ブレーキで停まる。
中から、ぐったりした3人とサソリが出てきた。
男は立ち上がり、飛段の姿を確認する。
「あー…、あの時の…」
飛段は男と目を合わせ、睨みつけた。
「おいコラてめー! ここに銀髪の奴はいねーのか!?」
男の髪は黒だった。
イタチは男の顔を確認すると、「飛段、あいつだ」と指をさした。
飛段はイタチに振り返り、「ハァ?」と眉をひそめる。
「おそらく銀髪はカツラだ」
「よくオレだってわかったな」
男は銀髪のカツラを取り出し、指先でくるくると振り回して言葉を続ける。
「あの時のことは感謝してるぜ。偶然同じ銀髪と出くわしたおかげで逃げられた」
「オレは今てめーのせいで面倒なことになってんだ。再起不能にしてでも警察の前に突き出す」
男は包丁を手に、「へえ」と笑みを浮かべた。
同時に、飛段に向かって突進する。
飛段はすぐに構え、コブシを突き出した。
だが、男は顔面に当たる寸前で屈み、それを避ける。
「!」
(こいつ、喧嘩慣れしてやがる…!)
「飛段!」
デイダラが叫ぶと同時に男は包丁を飛段の腹目掛けて突き出した。
飛段は当たる前に飛び退いて避けたが、男は包丁を引っ込め、一気に詰め寄って半回転し、
ドン!
「ぐっ!」
飛段の横腹に蹴りを打ちこんだ。
「っと」
吹っ飛んだ飛段の背中をサソリが受け止める。
男はサソリと飛段の横を通過し、デイダラに向かう。
「!」
「先に弱そうな奴からだ」
「「デイダラ!」」
飛段とイタチが叫んだとき、サソリは飛段のポケットからなにかを取り出した。
「飛段、持ってるならさっさと使え」
サソリはそれを男に向けて投げた。
「っ!」
男の後ろの右肩にダーツの矢が刺さった。
ダーツバーで飛段がとったものだ。
男が呻いて一瞬動きを止めた瞬間、デイダラと飛段は行動に出る。
「せー!!」
「のォ!!」
ゴッ!!
最初にデイダラがその右アゴを殴り、その拍子で振り返った男の顔面をトドメに飛段が殴りつけて地面に叩きつけた。
様々な人間の血がこびりついた包丁が回転しながら床を滑り、壁に当たって動きを止める。
しばらくして、パトカーが数台ボーリング場の前で停車し、1台の車の助手席から素早く降りた者は、すぐにボーリング場へと駆けこんだ。
追うように、同じパトカーの後部座席から降りた者もボーリング場へと急いだ。
「飛段!」
先に到着して名を呼んだのは、角都だった。
「角都!!」
犯人である男を見下ろしていた飛段は角都に振り返り、ぱっと笑顔を見せて角都の胸に飛び込んだ。
感動の再会だ。
「イタチさん!」
遅れてきた鬼鮫。
「鬼鮫!」
2人は角都と飛段のようにあつく抱き合うことはせず、互いに近づいて見つめ合うだけだった。
もう少し進展するべきだが、2人らしい光景だ。
「デイダラ、怪我はないか?」
「旦那…」
サソリに心配され、デイダラは顔を赤らめる。
「あー…、邪魔して悪いんだけど…」
カカシは警官を連れてやってきたのはいいが、とても入り辛そうである。
一応許可をとっておく。
「あ、田んぼ!」
「もうそれわざとでしょ」
カカシは肩を落としたあと、倒れている男を見て「手間が省けたな」と呟いた。
数人の警官達が男に駆け寄り、他の警官は包丁や金を押収する。
「警部、犯人確保しました」
「ああ」
カカシは返事を返したあと、飛段達に近づいた。
未だに離れようとしない角都と飛段を交互に見たあと、人差し指を己の口元に当てる。
「お2人の関係は世間には公表しませんから、こちらのお恥ずかしい失態はくれぐれもご内密に」
そう言って2人の背を向け、ボーリング場の出入口へと向かう。
飛段はその背中に向けてベッと舌を出した。
「あんだけ疑ってたクセに」
「オレがアリバイを証明したからな」
「え。オレらのこと喋ったの?」
「ああ、隠すことではないからな。世間に公表されようが、オレは痛くも痒くもない。後ろめたいとも思わん」
角都は飛段の額にそっとキスをした。
飛段は「角都ゥ」とへにゃりとした顔をする。
見ていたサソリは「それは隠しとけ」と言って顔をしかめた。
このまま一見落着かと思ったが、ひとり、納得いかない者がいた。
「き…、鬼鮫…」
鬼鮫は、ボコボコにへこんだ己の車の前に佇んでいた。
イタチはなんて声をかけていいものかとあわあわとしている。
「鬼鮫…、オレが車を買ってやるから…」
「いいですよ、イタチさん…」
鬼鮫はサソリをどう訴えようかと肩を震わせながら考えていた。
.To be continued