容疑者飛段
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飛段達は一睡もすることなく、警官達がいないか警戒しながら夜の街を走り回り、ゲームセンターや若者のたまり場などに出向き、飛段以外の銀髪の男の行方を聞きまわった。
固まって移動しては見つかりやすいので、バラバラに行動した。
飛段は銀髪が目立つため、ニットの帽子を購入し、頭を隠しながら聞き込みをする。
気がつけば夜が明けていた。
だが、他の銀髪の男に関する手掛かりはつかめずにいた。
休むことなく走ったり歩いたりしたため、足が痛む。
待ち合わせの路地裏に座り込んでいると、しばらくしてデイダラがビニール袋を提げてやってきた。
「どうだ?」
問いながらビニール袋からサンドイッチを取り出し、飛段に渡す。
受け取った飛段は袋を破りながら小さく答える。
「収穫ゼロ」
「こっちも、何人か「見かけた」って言ってる目撃者がいただけだった。うん」
デイダラは飛段の隣に座り、ビニール袋から同じくサンドイッチを取り出した。
飛段はよほど腹が減ってたのか、がっついている。
デイダラは「がっつくな」と言いながら、ビニール袋から水の入ったペットボトルを取り出し、飛段に渡した。
飛段はすぐにそれを口に含んだ。
「飛段」
路地裏からイタチが入ってきた。
その口元には笑みが浮かんでいる。
それを見た2人は思わず立ち上がった。
「見つけたのか!?」
「手掛かりはつかんだ。銀髪はともかく、犯人の他の特徴と最近金遣いが荒くなった奴がいないかを聞いたら、ひとり、見つけたぞ」
そいつは、隣町のダーツバーによく出入りしているらしい。
「さすが警察の息子!」
飛段は嬉しくてイタチの背中を叩く。
イタチは「筋肉痛気味だからやめろ」と顔をしかめた。
有力な手掛かりをつかんだ3人は路地裏を出る。
このまま警官と出会うこともなく隣町に向かいたかったが、不運というものはどこでもついてくるものだ。
路地から出た瞬間、飛段達は2人の警官達と出会ってしまった。
頭にニットを被っているため、飛段は平静を装うとする。
だが、
「「いた!!」」
警官2人に指をさされると同時に飛段達は弾かれたようにダッシュする。
「なんでだァ!? 頭隠してんのに!!」
「銀髪だけでなく、全体的に犯人扱いされてるからだ」
「また走るのかよー! オイラもうヘトヘトだぜー!」
それでもひとり捕まってしまうなんてダサいことはしたくない。
走っていると、遠くでパトカーの音まで聞こえ始めた。
さらに焦る3人。
パトカーが通りにくそうな歩道を走る。
だが、警官の脚も結構速い。
住宅街を走っていると向こう側から警官3人の姿が見えた。
後ろは2人もいる。
「クソ! 挟まれた!」
いっそ殴ってでも突破しようかと考えたが、それでは別件で捕まってしまう。
「飛段!」
デイダラは飛段に声をかけると右側の塀の上に飛び乗った。
イタチと飛段もそれに続く。
それから家と家の狭い間にある塀をかけていく。
「は!? 忍者かあいつらは!」
「追え!」
背後から警官達の声が聞こえた。
住宅街を越えれば隣町だ。
警官が何人かうろついていたが、ある時は垣根に身を潜め、ある時は犬小屋の中に隠れ、ある時は屋根の上で様子を窺いやりすごした。
3人は優れた運動能力を発揮しながら無事、隣町へと到着した。
目的のダーツバーは裏通り付近にある。
そのまま街を駆ける3人。
しかし、警察の行動は予想外に早かった。
飛段達が裏通りについた途端、待ち構えていたかのように追いかけてきたのだ。
「キタ―――!!」
入り組んだ狭い路地を走る。
廃ビルが多く、飛段達はその中の3階建の廃ビルへと逃げ込んだ。
しっかり扉に内側から鍵をかけ、2階に移動する。
だが、見つかるのも時間の問題だ。
「しつけえ奴らだな! これじゃあ動けやしねえ!」
飛段は感情のままに棚を蹴った。
デイダラは辺りを見回す。
倒された棚、マネキン、散らばった服、1階のショーウィンドウといい、元はブティックであることがわかる。
潰れたのは最近だろう。
ホコリはそれほど積もっていない。
デイダラは笑みを浮かべ、疲れて座り込んでいる2人に言う。
「オイラに提案があるぞ。うん♪」
*****
刑事は警官からの目撃情報で、飛段達がいる廃ビルを窺っていた。
2階の窓から飛段達がこちらを窺っているのが見える。
逃げる機会を窺っているつもりだろうが、刑事はそうさせるつもりはない。
すでに周りは警官とパトカーで包囲されていた。
逃げ道はない。
「鬼ごっこは終わりだ」
刑事は呟き、警官達に叫ぶ。
「よし! 突入しろ!」
警官達は一斉に窓や扉から入りこみ、飛段達がいる2階へと駆けあがる。
ところが、その光景を見た警官達は絶句する。
あとから来た刑事も同じく絶句した。
「な…っにィ…!?」
窓の付近にいたのは飛段達ではなく、飛段達の服を着たマネキンだった。
顔の作りは本人達そっくりに彫られている。
芸術の域だ。
「見事な作りですね」
「褒めるな!! 奴らを探せ!!」
*****
一方、飛段達は警官達が人形に気を取られているうちにさっさと裏口から逃げだしていた。
着ているのは、ブティックに残されていた服だ。
女性ものしかなかったため、Tシャツなど無難なものを着ている。
「ゲハハッ。ナーイスデイダラちゃ~ん♪ あいつらきっと今頃キツネにつままれた顔してるぜ」
飛段とデイダラはケタケタと笑いながら走っていた。
「旦那に教えてもらった甲斐があったぜ。うん♪」
デイダラはわずか短時間で3人分の顔を彫ったのだ。
それは誰でも出来るものではない、才能だ。
「……………」
デイダラの隣を走るイタチは、警察がうまく騙されたことに複雑な顔をしていた。
目的のダーツバーに到着した3人は、早速店の黒い扉を潜った。
店内からは酒とたばこの匂いがする。
あまりいい雰囲気ではない。
飛段達が店に入ると、ガラの悪い男達が一斉にこちらを睨むように見た。
怯むことなく、イタチは周りを見回し、男の姿を探す。
だが、どこにもいない。
カウンターにいるマスターに声をかけ、男の名前をあげて居場所を尋ねる。
マスターはグラスを拭きながら答えた。
イタチは出入口に立ったままのデイダラと飛段のもとへと戻る。
「今は経営されていないボーリング場だ。裏通りをずっと進んだ先にあるらしい」
「まだ移動するのかよ…」
飛段はがっくりと肩を落とした。
その時、飛段の顔の横をなにかが通過した。
振り返ると、ダーツの矢が壁に突き刺さっている。
的を外したわけではなさそうだ。
「あいつを探してるって?」
刺青だらけの男が低い声で言った。
「なんだ? 捜されちゃ困るのか?」
飛段は挑発的に返す。
「奴にはオレら世話になってんだよ。金づるってのか? 大いに助かってるってわけ」
店のほとんどの者が飛段達を敵視している。
その男がやらかしたことを知っている様子だ。
「そいつのせいでオレは迷惑してんだよ。こいつらまで巻き込んじまったしな。てめーらの事情なんざ知ったこっちゃねーんだよ」
「お互い様だ」
喧嘩腰になる飛段をイタチは肩をつかんで止める。
「やめておけ。面倒を起こすな。向こうにまた移動される前に行くぞ」
「……………」
飛段は壁に刺さったダーツの矢を抜き、「バーカ」と舌を出してイタチとデイダラとともに店を出た。
「つまり、犯人はほいほい愛想よく金やってるわけだ。どーでもいい連中に」
「盗んだ金を派手に使ってはまた盗む。あとさきを考えないのか…、盗むことを楽しんでいるのか」
楽しまれるのは結構だが、そいつのせいで飛段は今こうして逃げているわけだ。
一発殴らなければ気が済まない。
飛段はコブシを鳴らした。
「さっさと見つけてブン殴ろうぜ」
「おまえはよくそんなんで今まで警察の世話にならなかったな。うん」
(昔はもっと散々なことしてたのに…。角都のおかげか?)
ふと飛段は昔の飛段を思い出そうとしたが、その前にサイレンの音が遠くから聞こえてきた。
こちらに近づいてくる。
誰かがこの場所に飛段達を見かけたことを教えたのだろう。
「早いな…」
飛段は舌打ちする。
「警察はそうでなければ」
イタチは腕を組んで「うんうん」と頷いていた。
デイダラはそんなイタチの右腕を引っ張る。
「いいから、逃げるぞイタチ!」
パトカーが来る前にここを離れなければ。
移動しようとしたとき、青の軽自動車がいきなり急ブレーキで飛段達の前に停まった。
「わっ!」
飛段は危うく轢かれそうになった。
停車したその車の運転席の窓がおろされる。
そこから顔を出したのは、
「旦那!?」
サソリだった。
「早く乗れ、クソガキ共」
パトカーはすぐそこまで迫っている。
飛段達は急いで車に乗り込んだ。
当然助手席はデイダラである。
全員乗り込んだことを確認したサソリはすぐにエンジンをかけて走り出した。
「だ、旦那…、この車…」
デイダラには見覚えのない車だ。
以前、「旦那って車乗らないのか? うん?」と聞いたら、「そんなモンを買うくらいなら、材料を買う」と返されたのだ。
「気にすんな、鬼鮫の車だ」
「鬼鮫の!?」
イタチは思わず声を上げた。
(((もう呼び捨てか)))
付き合い始めたのは知っていたが、呼び捨てで呼んでいたのは初めて聞いた。
背後からパトカーのサイレンの音が聞こえる。
それをミラーで確認したサソリは「来たな」と薄笑みを浮かべた。
「サソリ! 追いつかれちまう!」
「よし。これからちょっと危険なドライビングするから、おまえら、どっかつかまってろ?」
「「「は?」」」
「ソォラァ!!」
キュルルルル!!
「「キャ―――ッッ!!」」
同時に、サソリは思いっきりハンドルを切り、スピンを加えて逆方向に向きを変え、パトカーの横を堂々と通過した。
飛段達もびっくりしたが、警察もびっくりしている。
デイダラはふとあることを尋ねた。
「そういえば旦那って、免許は…」
「安心しろ。オレは無免許の天才だ」
「「いやぁあああああ!!!」」
平然と言うサソリに飛段とデイダラは恐怖の叫びを上げる。
イタチは叫ぶ気力もなく、顔を真っ青にし、ぐったりと背もたれに身を預けていた。
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