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飛段が住んでいるマンションへと向かう道中、イタチはデイダラとトビと出会った。
ばったりと出会った3人は「あ」と同時に言う。
「おまえ達も呼ばれたのか?」
「そう言うイタチさんもっスか?」
この3人は携帯で飛段に呼び出されたのだ。
「頼みたいことがあるからすぐ来てくれ」と言って一方的に電話を切られた。
だから、3人は自分以外が呼び出されていたとは知らなかったのだ。
3人は横に並んで雑談を交わしながら飛段のマンションへと向かう。
「飛段の奴、オイラ達になんの用だろな? うん」
「ロクな用じゃないだろうな」
「ははは、飛段さんですからねぇ」
飛段のマンションが見えてきたとき、
ガシャーン!!
「「「!?」」」
突然、マンションの窓からガラスが割れて火が噴き出た。
3階の左端の部屋からだ。
驚いた3人はそれを見上げ、黒煙があがるその部屋を見て顔を真っ青にする。
そこは飛段の部屋だからだ。
「あの部屋は…」
イタチが呟き、デイダラはマンションへと駆け込む。
「ひだ―――ん!!」
「やっぱりあそこ、飛段さんの部屋なんっスか!?」
トビもデイダラを追いかけ、イタチも遅れて追いかける。
エレベーターを待っているヒマもなく、階段を駆け上がり、飛段が住んでいる310号室の部屋へと向かい、先に扉の前に着いたデイダラが乱暴に扉を叩く。
「飛段!! おい!!」
扉の隙間からは黒煙が漏れていた。
「!」
ノブを回すと、不用心なことに鍵は開いていた。
そうとわかったデイダラは扉を開けて中に駆け込む。
「飛段!」
「けほっ、よう…、早かったな」
「!?」
デイダラと、遅れて部屋に入ってきたイタチとトビはその姿を見て唖然とする。
飛段は炭のような汚れを顔やエプロンにこびりつけたまま部屋の奥から出てきた。
爆発に巻き込まれたのか、髪型がオールバックからアフロになっている。
「おまえ…、敵襲にでも遭ったのか? うん?」
身に覚えはたくさんあるが、飛段は首を横に振る。
「ちげーよ」
そう言ってまた噎せる。
飛段の手には、鉄板があった。
その上には、山型の黒いものが載せられてある。
「飛段さん、なんスか? それ」
「……ケーキ」
3人は我が目と耳を疑った。
換気し、散らばったガラスと部屋の片づけを終えたあと、イタチとデイダラはテーブルの席に着いた。
2人は目の前の黒焦げのケーキを見つめる。
((これがケーキ…))
どう見ても、ただの山の形をした黒焦げの物体にしか見えない。
トビはそれに近づいてまじまじと見つめる。
「チョコレートにしては黒過ぎません?」
「ショートケーキのつもりだけど?」
飛段はこけたソファーを起こして言った。
デイダラは思わず席から立ち上がってツッコむ。
「ショートケーキは黒くねーぞ!?」
「大体、なぜいきなりケーキ作りなど…」
飛段に菓子作りの趣味はない。
というか、料理さえまともに作れないのだ。
なにか理由があるのだろう。
イタチに問われ、飛段は照れ笑いをしながら言う。
「角都の誕生日のプレゼントに…」
それを聞いたトビは「あー…」と思い出したような声を漏らし、視線を上げ、言葉を続ける。
「そういえば、8月15日って…」
それを聞いた飛段の耳がピクリと動く。
「なんでてめーが角都の誕生日知ってんだよ」
飛段は唸るような声を出し、包丁の刃先をトビの右目に向けた。
はっとしたトビはすぐに言い訳する。
「ほっ、他の先生からたまたま聞いて…! はははっ、ヤダなっ、なにマジで殺る気になってんっスか!?」
「で、おまえはこのケーキとやらをどうするんだよ?」
デイダラの問いに、飛段は「ハァ?」と顔をしかめ、
「ケーキは食べるためにあるんだろうが!」
当たり前のように言った。
そこでトビのいらない一言。
「愛ゆえに、ついに角都先生殺す気っスか?」
ドス!!
トビの仮面の右の穴に包丁が突き刺さる。
「―――で、おまえらを呼んだのは、このケーキを味見してもらおうかと…」
「オレ達を!!」←第2の犠牲者(予定)
「殺す気か!!」←第3の犠牲者(予定)
「…………っスよ…(虫の息)」←第1の犠牲者(達成)
味見をしなくても、体に猛毒であることは一目瞭然である。
「普通のケーキ屋で普通に買った方がよくないか?」
イタチは言うが、飛段は「ヤダ」と首を横に振った。
「オレが作ってこそ意味があるわけェ」
「物じゃダメなのか? うん?」
「角都はオレと違ってなんでも持ってるからな。オレも物にしようか考えたけど…、オレの小遣いなんてたかが知れてるし、第一、角都の好みがよくわからない」
「へー、付き合い長いのに?」
「トビィ、もっかい死ぬか?」
飛段は包丁を構えて睨んだ。
トビは恐れをなしてデイダラの後ろに隠れる。
「その時計と色違いのおそろいというのは?」
イタチは飛段の胸にぶらさがっている桜色の懐中時計を指さした。
誕生日に角都からもらったものである。
飛段は懐中時計の鎖をいじりながら「うーん…」と唸り、難しい顔をする。
「それも考えたけどよォ…、これと色違いのどこにも売ってなかったし、元より、どこで製作されたものかもわからねーんだ」
角都はいったい、どこの雑貨屋で買ったのか。
席から立ち上がったイタチはどこからかエプロンを取り出し、髪を結び直す。
ついでに、カバンからピンクのカチューシャを取り出し、飛段の髪を上げてつけた。
「オレがケーキの作り方を教えてやる。やるのはおまえひとりだ」
イタチはただ教えるだけである。
飛段は「イエッサー」は敬礼する。
デイダラとトビはテーブルの席に着いてキッチンを見学することにした。
イタチはボウルと泡立て器と材料をまな板の上に並べる。
「まずはケーキのスポンジから作る。最初に卵を割る」
「よっしゃー」
飛段はボウルに卵を叩き割る。
ゴス!!
「だぁっ!?」
イタチはゴムベラを縦にして飛段の頭を叩いた。
飛段は頭を押さえてうずくまる。
「卵をそのまま叩き割る奴がいるか。卵の殻入りまくりだ。生んだニワトリに謝れ」
その無表情には迫力があった。
「ちょ、イタチ…さん?」
飛段は怯えた顔でイタチを見上げる。
見物しているデイダラとトビの顔も青い。
「さあ立て飛段。やり直しだ。ビシビシいくぞ」
イタチは、お菓子作りの鬼であった。
「バターの溶かし方がイマイチだ!」
「焦げるだろう!」
「次は生クリームだ! 愛情を込めて混ぜろ!」
飛段は「角都ゥ」と泣きながらクリームを混ぜる。
だが、勢いよく混ぜてしまい、ボウルがひっくり返ってしまった。
しかも、飛段の顔に。
「汚れちゃったァ」
バァン!!
鉄板で顔面を打たれる飛段。
厳しい料理教室を終え、角都の誕生日当日。
この日は、生徒も教師も休日の日曜日である。
そんな休日の学校の校門を一台の車が通る。
角都の車だ。
駐車場に停め、車から降りてきた角都の表情は機嫌が悪い。
(校長の阿呆が。こんな休日に呼びだしてなんの用だ)
呼びだしたのは、暁高校の校長だった。
呼びだし場所は己の担当の教室である。
車から出てきた角都を双眼鏡で確認したイタチとデイダラと飛段の3人。
「すげ! ホントに来た!」
飛段は双眼鏡を覗いたまま、驚きの声を上げた。
デイダラは双眼鏡から目を離し、トビに振り返って尋ねる。
「どうやって呼びだしたんだ? トビ」
ドッキリにしたいため、飛段が呼びだすのは面白みがないと3人で考えていたとき、トビが手を挙げて「オレが呼ぶってのはどうっスか?」と名乗り出たのだ。
なぜかトビは角都に嫌われているため、来ないだろうと期待はしていなかったが、まさか本当に来るとは思わなかった。
「内緒っス♪」
トビが人差し指を口元(の部分)に当てる。
「まさか、違う意味で誘ってねーだろなァ?」
飛段はトビに近づき、胸倉をつかんだ。
今にも手に持った双眼鏡で撲殺しかねない。
「そんな命知らずなことはしてないっスよー! オレと校長はちょっとした知り合いっスから、少し協力してもらっただけっス!」
「校長と知り合いだァ?」
「あ、疑ってますね?」
飛段は露骨に怪訝な目を向け、「ったりめーだろが」と言った。
「おい! 角都が来るからさっさとスタンバイしろ! うん!」
はっとした飛段は慌ててデイダラ達と一緒にスタンバイにかかる。
「いいか? 飛段がケーキを持って扉近くのロッカーから登場し、オレ達が窓際のロッカーから飛び出してクラッカーを鳴らす」
イタチは作戦を確認したあと、3人を促した。
飛段はケーキの入った箱を手に扉近くのロッカーに入り、他の3人は窓際のロッカーに詰めて入る。
一番最初に入ったトビは2人に押されて早くも圧死しそうである。
「苦しいっス」
「「しーっ」」
デイダラとイタチはトビを黙らせる。
廊下から足音が聞こえ、扉が開けられる音が聞こえた。
「おい、どこだマダラ」
角都だと確認できた飛段は扉を開けて勢いよく飛び出す。
「角都! 誕生日おめで…」
飛段の足がロッカーの中にあったバケツにはまる。
ドシャ!!
「!!?」
その場にいた全員が愕然とした。
箱に入ってケーキが見事に床と飛段に潰される。
「あ゙あ゙―――!! ケーキがああああ!!」
飛段は顔をケーキまみれにしながら嘆きの声を上げる。
「飛段、おまえ、なにして…、ケーキ?」
角都は聞きたいことがたくさんあるが目の前でショックを受けている飛段を見て、どれから質問していいかわからない。
その場に片膝をつき、今にも泣き出しそうな飛段とケーキを交互に見る。
それから床に転がった赤と白のロウソクを見て、思い出した。
「……そうか、今日はオレの誕生日だったな」
今まで忙しかったので、誕生日のことなど忘れていた。
たとえ覚えていても、どうでもいいものだと思っていた。
飛段が自分を祝おうとしてくれたのだと状況を見て理解する。
「うぅ~っ。せっかく角都の舌に合わせて、ビターな大人味のケーキにしたのにィィ…」
「……………」
角都は黙ったまま、己の顔を飛段の半泣きの顔に近づけ、飛段の右頬についてある生クリームを舐めた。
「う?」
「…うまい…。確かに、オレ好みの味だ」
角都の口元に笑みが浮かぶ。
それから飛段の顔、手、首についた生クリームを丁寧に舐めとっていく。
「か…、角都…、ケーキ…台無しになったのに…」
「どこが台無しだ? 最高のデコレーションケーキじゃないか」
もはや、ケーキが飾りと言っていいくらいだ。
飛段は顔を真っ赤にしつつ、角都にいいように舐められる。
飛段の口元のクリームはお楽しみのイチゴと同じだ。
「悪くない日だな、誕生日というのも…」
「角都…、おめでとう…」
幸せいっぱいの2人だが、
「クソッ、なにプレイだこれは」
「いつ出ていいのか…」
「見えないっス~」
飛段が思い出すのはもう少し先になりそうだ。
.To be continued