ついてはなれず
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次の難関は、着替えだった。
体操服に着替えなくてはならないのだが、手のひらを合わせた状態で着れるわけがない。
サボろうか考えたが、イタチに止められてしまう。
着替えられないことを訴える飛段とデイダラにイタチは提案したことを口にする。
それを聞いた2人は顔を見合わせた。
「…それでいくか」
「しゃーねーなァ」
その場で手首や首の骨を鳴らし、始める。
更衣室にいた男子達も目を疑った。
まず最初に飛段が体操着を途中まで着て、デイダラはというと、その飛段の体操着の内側から袖口へと出る。
ビリィ!!
「出れるかァ!! 軟体動物じゃねーんだぞ!! うん!!」
引っかかったうえに、破けてしまった。
イタチも計算に入れていたのか、「やはり…」と頷いて納得した。
「ああ…、オレの体操着…」
仕方ないので、一度袖と脇にハサミを入れて互いが通ったあと、裁縫道具でイタチが綺麗に縫合してくれた。
*****
体育の時間も、やはり周りの視線が痛かった。
サッカーでは最初は動きづらそうにしていた2人だが、あとになって息ぴったりのコンビ―ネーションを見せてくれる。
デイダラが蹴りあげたボールを飛段がジャンプして空中で勢いよく蹴り、シュートを決めた。
分かれてソフトボールをしている女子もおおはしゃぎだ。
違う意味ではしゃぐ女子もいる。
「…なぜあんな器用にできるんですかねぇ」
イタチが案を考えたからだ。
あのふざけた状態でサッカーが出来る方法を。
帰り道、イタチは2人をファミレスへと誘った。
街を歩いている時も、やはり2人の姿は目立っていた。
イタチに誘われなければ、人気の少ない道を通ってどちらかの家に帰り、解決策を相談し合っていたというのに。
ファミレスに入り、ウエイトレスに案内されたテーブル席に座った3人。
向かい側にひとりで座るイタチはカバンの中からあるものを取り出した。
マニキュアに使う除光液だ。
怪訝な目でそれを見る2人に、イタチは構わずその除光液を2人のひっついたままの手に垂らした。
「強めのものだからな。あとで手を洗ってこい」
「「!!」」
除光液がついたところからペリペリと剥がれていく。
「スゲー! あんだけやっても剥がれなかったのに!」
「裏技か!? うん!?」
「騒ぐな」
2人の驚きの声は、店内の客の視線を集めるほど十分な大きさだった。
「くっつけるものもあれば、逆に剥がすものもある。女子に相談すれば貸してくれたかもしれないのに」
そう言ってイタチはため息をついて呆れた。
「よっしゃー! 解放されたァ!」
「今後、旦那の作品はもう2度と壊さねーぞ。うん」
サソリの人形を直すために接着剤を使用してあんな目にあったのだから。
「ああ、あの人形は失敗作だからオレは別に気にしていない」
デイダラの背後から聞こえたその声に、3人は固まった。
向かい側のイタチは声の主が見えている。
「あ…」
イタチが顔を青くさせて漏らしたその言葉に、飛段とデイダラはおそるおそる振り返る。
そこには、デイダラと飛段が座っている席の、背もたれの上で頬杖をついているサソリがいた。
いつからか、隣の席に座っていたようだ。
無表情で2人を見下ろしている。
「どっかのジジイが、おまえと飛段が仲睦まじいって、嫉妬してたからなァ」
言わずとも、角都のことである。
嫉妬してくれたことに飛段は喜びを覚えたが、その思いはサソリの冷めた目で冷却される。
「どうりで、この間買ってきたばかりの接着剤がカラになってたわけだ」
サソリが開けた手の中には、デイダラと飛段が使い切った接着剤があった。
デイダラと飛段は引きつった笑みを浮かべる。
そこでようやくサソリも笑みを浮かべた。
嘲笑と言う名の笑みを。
「オレに隠し事できると思っていたのか。かわいそうな脳みそ持ってんな」
「け…、けど、旦那、失敗作だったんだろ? うん」
「ああ。完成品はオレの家だ。どっかの馬鹿共に、野球ボールで破壊されねーようにな」
サソリは席を立ち上がり、飛段達が座っている席の前に立ち、テーブルの上に置かれていた除光液を自然な動作で取った。
「完成品でも、オレに隠し通そうとしてたんだろ? 罰は、与えられるべきだと思わないか?」
なにかされる、と3人は思ったが、サソリは嘲笑を残してファミレスから立ち去ってしまった。
「ありがとうございましたー」とウエイトレスが背中に声をかけるのが聞こえた。
「せ…、説教だけったのか…」
飛段は胸をなで下ろす。
「いや…、旦那のことだからなにか…。ちょっとオイラ、ホントに帰ったか様子を見に…」
立ち上がろうとした時だ。
ゴッ、とデイダラがテーブルに額を打った。
「デイダラ!?」
飛段とイタチが凝視する。
「な…!」
顔を上げたデイダラは自分が座っている席に目を向けた。
「尻が椅子にくっついてる!」
それを聞いて、まさか、と思った2人は立ち上がろうとしたが、
「あ!?」
「ウソだろ!?」
デイダラと同じく、椅子と尻がくっついていた。
あらかじめ、その席に接着剤が塗られていたようだ。
同時に、犯人の顔が3人の頭に浮かぶ。
「「やりやがった―――!!」
「オレは関係ない!!」
哀れ、イタチも巻き込まれてしまった。
*****
その頃、サソリは角都に電話をかけ、3人に仕出かしたことを話し、迎えに行くように頼んでいた。
「ガキ相手にここまでするつもりはなかったんだけどな」
そう言って携帯の通話を切ったサソリは、ポケットから完全に使いきった接着剤を取り出した。
「嫉妬したのは、ジジイだけとは限らねえか」
そう呟き、近くにあったゴミ籠に投げ入れた。
.To be continued