桜色の秒針
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朝の登校時間、予鈴が鳴る前に、イタチとデイダラと飛段は校内の玄関で上履きに履き替えようと下駄箱の前に立ち、自分の上履きが入った扉を開けた。
「あ…」
イタチの下駄箱から、封筒に入れられた大量の手紙がなだれた。
足元に落ちたそれらを拾ったイタチは困惑した表情を浮かべる。
毎日の大量の手紙にいい加減うんざりしているのだ。
イタチの気持ちに構わず、飛段とデイダラが冷やかしにかかる。
「相変わらず、スゲーモテモテだなァ」
「オイラと飛段みたいに付き合ってる相手がいないから狙われるんだろ。うん」
「早く誰かとくっついちゃえよォ」
イタチは2人を軽く睨みつけたあと、拾った手紙をまとめ、上履きに履き替えて不機嫌そうに言い返す。
「適当に相手を作っても仕方ないだろ」
それにイタチには想い人がいるのだ。
告白されても付き合わないのはそういう理由だ。
イタチは通学用のカバンから紙袋を出し、下駄箱に詰められていた手紙を入れた。
1年の頃から下駄箱に入れ続けられているため、いつしか紙袋を持ってくるようになったのである。
手紙を捨てるという選択肢はない。
想いが書かれた手紙を捨てるのは心苦しいからだ。
「帰りも詰まってることがあるから面倒だ。校長先生に鍵付きの下駄箱を頼もうか…」
「まー、聞きました? 奥様」
「他の男子からすれば嫌味よねぇ。うん」
飛段とデイダラはわざとイタチに聞こえるように離れたところからヒソヒソと話した。
「聞こえてるぞ」とイタチは睨みつける。
「男からの手紙がくる苦しみも知らないからそんなことが言えるんだ」
なんのための共学なのか。
人のことが言えないためそれは口にしないが。
「あー、オイラももらった」
「オレもー」
この2人、付き合う前は、イタチには及ばないがラブレターを大量にもらっていた。
「今でも数枚もらってるけどな。うん」
デイダラは自分の下駄箱に入っていたラブレターを15枚ほど見せつけた。
内の7枚は腐女子からの応援レターである。
「飛段はどうだ?」
「オレは応援レター以外は0」
イタチに尋ねられた飛段は親指と人差し指を曲げて“0”とつくる。
「執着されてねーんだな」
ニヤニヤと笑うデイダラに言われ、飛段はムッと顔をしかめた。
「オレは角都一筋だしィ。もらってもジャマじゃん」
逆に貰わないほうがありがたい、と続けた。
「あと、付き合ってる相手が角都先生ってのもあるしな。うん」
「おまえだってあのサソリだろォ」
「「あの」ってなんだ!「あの」って!」
恋人を馬鹿にされて髷を逆立たせるデイダラ。
「授業始まるぞ」
喧嘩を始められる前にイタチは2人を止める。
*****
放課後、2年の女子が飛段の下駄箱に近づき、辺りに人がいないかを確認してから飛段の下駄箱の扉を開け、そっと手紙を入れ、玄関から出ていった。
その背中を下駄箱の陰から見届けた角都は、飛段の下駄箱に近づいて先程女子が入れた手紙を取り出す。
他にも何枚か手紙が入ってあった。
「最近の女子は…」
不機嫌そうに眉を寄せ、飛段の下駄箱の中に入れられていたラブレターを“処分箱”と側面に書かれた箱に入れた。
これで飛段の下駄箱に入れられてあるのは応援レターだけとなる。
角都がラブレターを処分していたとは知らず、飛段は朝から「オレって執着されないのかァ。角都もそうなのかなァ」と若干落ち込んでいた。
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