ついてはなれず
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美術室で、それを目の当たりにしたデイダラは心底焦った。
それはあとから駆けつけた飛段も同じだ。
「ど…、どーするんだよコレ…。うん…」
「それをオレに聞くかよ」
2人は、美術室の片隅にある、砕けた傀儡人形を見下ろしていた。
3日後の展示会で出展するために作られた、サソリの作品だ。
布を被せられたケージの中に入れられていたにも関わらず、顔面も見事に破壊されている。
原因は、デイダラが投げ、飛段が打った野球ボールだ。
グランドを通り越し、見事なホームランが打たれてしまった。
美術室の開け放たれた窓から入り、なにかが砕ける音を聞いた2人の顔は真っ青だったとか。
「オレらって、野球するとロクでもねーこと起こるよなァ。オレ、この前それで屋上から落ちて入院しちまったし」
折れていた腕も完治したため、さっそく腕鳴らしにと始めた結果がコレだ。
飛段は、もう野球はしない、と心に決める。
「今はそんなことはいいから、コレ、どうにかしようぜ」
「だな。サソリに見つかったら代わりの展示品になりかねねーし」
また入院騒ぎになりたくはない。
そこでデイダラは美術室で“超☆強力!! 瞬間接着剤”と赤い文字で書かれた接着剤を見つけ出し、昼休みが終わる前に飛段と協力し合いながら、壊れた傀儡人形を修復していく。
それから昼休み終了まで残り3分というところで修復が終わり、その傍らで飛段とデイダラはホッと胸をなで下ろした。
見た目は元通りだ。
丁寧に繋げたため、割れ目も目立つものではない。
展示会に出しても、たぶんバレないだろう。
デイダラがいなかったらこんな丁寧な仕上がりにはならなかっただろう、と飛段は思う。
「よっしゃー! とにかくこれでサソリの目も誤魔化せそうだぜ!」
「旦那には悪いけどな。うん!」
見事な修復の出来に満足した2人。
「よし」と言う飛段は左手を、「教室戻るか」と言うデイダラは右手を上げ、パンッ、と互いのてのひらを打ち鳴らした。
それから美術室を出ようとしたが、
「ん?」
「あ?」
互いの手のひらがぴったりとくっついたまま、離れない。
顔を見合わせた2人は、くっついたままの手のひらを見下ろし、「ふん!」と同時に強く引っ張ってみる。
だが、皮膚が引っ張られて痛いだけで隙間も空かない。
「「……………」」
今度は蒼白の顔を見合わせる2人は、“超☆強力!! 瞬間接着剤”に視線を移した。
ねじってでも絞り出されて使い切られて用済みになったそれは、美術室の床の片隅にポツンと転がっていた。
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