お調子者登場
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退院した翌日、飛段は右腕を首にかけた包帯に吊るしたまま登校した。
左脚も完全に完治していないため、引きずり気味に歩いている。
実は、医者に頼んで予定より早めに退院させてもらったのだ。
「大丈夫っスか、飛段さん」
「……………」
教室の扉を開けて早々、目の前に見知らぬオレンジの仮面をつけた男子生徒がいた。
「……誰?」
もっともな質問だ。
教室を間違えたかなとクラスを確認するが、やはり自分のクラスである。
「おー、退院おめでとー、飛段。うん」
「やはり松葉杖か」
困惑している飛段に近づいてきたのは、デイダラとイタチである。
飛段は目の前の男子生徒を指さして2人に尋ねる。
「これなに?」
「「これ」って酷いっスね!」
「ああ、おまえが入院している間に転校してきた、トビだ」
イタチが紹介し、トビは「ども~♪」とテンション高く挨拶する。
「お、おう」
飛段も小さく挨拶を返した。
ちょうどその時、ホームルームの鐘が鳴り、角都が教室に入ってくる。
生徒達は急ぎ足に自分の席に着き、飛段は松葉杖をついているので、他の生徒より遅れて自分の席に着いた。
角都の視線が席に着いたばかりの飛段へと移り、日直が「起立」と口を開く前に声をかける。
「起立はいい。出席をとるぞ」
日直の生徒は口をポカンとさせた。
角都は、生徒に混じってこちらを見つめるトビを一瞥し、出席簿を開き、出欠確認を始めた。
休み時間となり、飛段はトイレに行こうと立ち上がった。
立ち上がるとき、松葉杖を支えにしなければうまく立ち上がれない。
「んっ」と力んだとき、
「手を貸しましょうかー?」
トビに手を差し伸べられ、飛段はちょうどいいと笑みを浮かべ、その手をつかもうと手を伸ばした。
「お、さんきゅ…」
パン!
「!?」
つかもうとしたトビの手は、いつの間にか現れた角都によって叩いて払われた。
飛段は何事かと目を丸くする。
それを見ていた他の生徒もびっくりしている。
トビは「痛いですよ先生ー」と叩かれた右手を撫でた。
角都はトビを睨んだあと、そのまま謝りもせずに、ただ無言のまま飛段の手を引っ張って立ち上がらせ、その体を支えて飛段と歩調を合わせ、教室を出て行った。
「ど…、どうしたんだよ?」
休み時間ももうすぐ終わるため、生徒の少ない廊下を渡りながら飛段は隣の角都に尋ねた。
角都の機嫌が悪いのが空気にのって伝わってくる。
「退院はもう少し先だったはずだが?」
角都は前を見ながら低く言った。
飛段はギクリとし、小さく答える。
「も、もう平気だって」
「なら、この松葉杖はなんだ? この包帯はなんだ? …あまり、気を遣わせるな」
その言い方に飛段は胸に痛みを覚え、うつむいた。
「オレ…、角都に…早く会いたくて……」
「……言い方が悪かったな。すまん」
角都は先程の言い方で飛段を傷つけてしまったことに気付き、すぐに謝った。
「他の奴に気を遣わせるな、と言いたかっただけだ」
「角都…」
飛段は、トビの手を叩いたのはただの嫉妬による行動であることに気付いた。
顔を向けた角都は、頬を染めた飛段に見上げられ、その唇に己の唇を落としてやろうかと頭を傾ける。
飛段も応えるように目をつぶった。
「!!」
角都は目の端に映った人物に気付き、反射的に目の前の飛段の唇を右手で軽く覆った。
そこには、曲がり角からこちらをじっと窺うトビの姿があったのだ。
(ヤロウ…)
角都はおあずけを食らった気持ちになる。
奴のいない時にするべきかと飛段から離れようとしたとき、
「もう、焦らすなよォ、角都ゥ!」
角都が焦らしているのだと勘違いした飛段は、思いっきり両腕を広げて角都の首に絡みついた。
その拍子で、持っていた松葉杖がすっぽぬけ、
ゴッ!!
「いだァ!!?」
トビの顔(仮面)に直撃した。
トビはそのまま仰向けに倒れる。
「え?」
悲鳴に気付いた飛段はそちらに振り返ろうとしたが、角都に頭をつかまれて方向を直される。
「気にするな。よくやった」
「♪」
理由はわからないが、角都に褒められた飛段は満面の笑みを浮かべ、角都の口付けを再び目をつぶって待った。
数学の授業中、トビは飛段に振り返った。
トビは飛段の前の席となっている。
「なんだ?」
飛段も声を潜めた。
飛段の後ろの席のデイダラとその隣のイタチも耳を済ませる。
「角都先生と付き合ってるって、ホントっスか?」
「…まーな」
公認の仲というやつだ。
飛段は「角都狙ってんなら諦めろよ。オレんだから」と笑み混じりにトビに念を押す。
だが、その目は本気である。
「ハハハ、そんなことしませんよォ。で、どこまで進んだんスか?」
「なにがァ?」
「も~っ、決まってんじゃないっスかー。AとかBとかCとかあるでしょー」
意味を理解した飛段は顔を真っ赤にした。
大声になるのを堪える。
「ま…っ、まだ、良くてB止まりで…」
目が泳いで、漫画で表現するならグルグル目になっている。
頭からは心なしか湯気が出ているように見えた。
「オレはもっと進みたいっつーか…」と独り言のように言っている。
それを聞いていたデイダラとサソリも顔を赤くしていた。
「えーっ、2年から付き合ってんでしょ? 角都先生なら、もう手を出してるのかと思ったっスよ」
その言葉に、鈍感な飛段も違和感を覚えた。
「おまえ、転校生だろ。なんでもう角都のこと知ってんだ?」
飛段の怪訝な目にトビは慌てる。
「!! あ…、あー…、イメージっスよ! イメージ! 角都先生ってなんか…こう…、淫行罪の香りが…!!」
ゴス!!
角都のビッグトライアングルの30度がトビの頭に突き刺さった。
ピュ~とトビの頭から血が小さな噴水のように噴き出す。
「ブンブンとうるさいハエが貴様の頭を飛び回っていた」
そう言うが、飛段以外誰も角都の顔を見上げる生徒はいなかった。
角都から漂う殺気に似た空気が頭を押さえつけているかのようだ。
(な…、なんで、教師が転校生いじめてんだ…!!?)
飛段達がその理由を知るのはまだまだ先の話になる。
.To be continued