過去の君に会いに
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放課後、窓の外は雨の降る雨雲で薄暗く、電気の灯った教室に残っているのは、飛段とデイダラとイタチの3人だけだった。
初めてのキスはどんなもので誰だったのかと盛り上がっている。
「オレはやっぱり、角都が初めて…」
椅子をまたいで座っている飛段は照れながら言った。
デイダラは怪訝な顔をする。
「絶対ウソだろ。おまえも一応、女子にモテるわけだし。うん」
本人達は知らないだろうが、この暁高校でモテ男ベスト3に入っているのは、飛段達3人である。
飛段は顔の前で手を横に振った。
「愛のあるキスは角都が初めてなんだってェ」
「それならオイラだって、旦那が初めてだ。うん…」
「イタチはー?」
飛段はイタチに問い、デイダラもそちらに顔を向けた。
聞いている側だったイタチは「え!?」と不意を突かれたように驚き、頬を染めて答える。
「……まだだ…」
それを聞いた2人は露骨に驚いた。
「「え!? 初もまだ!?」」
イタチはコクリと頷く。
「ハァー。こいつが一番モテるクセに」
ラブレターの数も飛段とデイダラより多いのだ。
しかし、言われてみれば、真面目すぎるほど真面目なイタチなら、キスがまだなのは当たり前なのかもしれなかった。
1年の時からずっと一緒だが、イタチが誰かと付き合っている噂はまったく聞かないし、見たこともない。
「じゃあさ、奪われるならどんな奴がいいんだ? うん?」
デイダラに問われ、イタチは顔を真っ赤にして目を伏せ、答えようと口を開く。
「……鬼さ…」
その時、扉がガラガラと開けられた。
3人の視線がそちらに移る。
「おい、下校時間はとっくに過ぎてるぞ。さっさと帰れ」
扉を開けて教室に入ってきたのは、担任の角都だった。
「おー、角都ゥ」
恋人の登場に飛段は笑みを浮かべて手を振る。
角都がこちらに近づいてきたとき、デイダラは尋ねてみた。
「先生、初めてのキスしたのっていつ? あ、愛のあるキスで」
それを聞いた角都はわずかに肩を落とす。
「おまえら、女子か」
「いいからいいから」
デイダラは手をヒラヒラとさせて促す。
「そんなのオレに決まってんだろー?」
「おまえは軽く先生を馬鹿にしているぞ。年を考えろ」
飛段の自信満々な言い方に、イタチのツッコミが入った。
「……おまえらと同じ年の時だ」
「!」
答えた角都に飛段の表情がわずかに強張った。
それに気付いていないデイダラは質問を続ける。
「どんな奴? もしかして男か?」
冗談で言ったつもりだった。
角都は飛段を一瞥し、答える。
「さあな」
「!!」
違うなら、デイダラは冗談を言った時点で角都に小突かれている。
だが、角都はそうしなかった。
それに、一瞬愛おしげな表情を浮かべたので、飛段は胸を痛める。
「えーっ、ちゃんと教えて……」
聞きたがるデイダラの前で、飛段は薄い通学カバンを手に持って勢いよく立ち上がった。
「!」
角都とデイダラとイタチは同時に飛段を見る。
飛段の顔は明らかに不機嫌が表れていた。
「オレ、先帰る」
そう言って教室の出入り口へと早足で向かう。
「おい、飛段」
角都は声をかけたが、返ってきたのは乱暴に閉められる扉の音だけだった。
「あー…」
デイダラはようやく、自分が度を超してしまったことに気付いた。
そんなデイダラを見つめ、イタチは呟く。
「ナンセンス」
傘も差さずに玄関を飛び出した飛段は、バシャバシャとところどころに溜まった水溜りを蹴りながら校門へと向かう。
先程の角都の顔を思い出し、苛立ちを募らせる。
(なんでこっち見たんだよ。なんであんな顔すんだよ。バッカじゃねーの!?)
内心で罵りながら、泣きそうになる。
「オレがその相手だったら…」
そう呟いたとき、飛段の首にかけられてシャツの下に隠されている懐中時計の針が猛スピードで逆に回り始めた。
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