時には友情
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休み時間でも授業中でも、飛段は誕生日に角都にもらった桜色の懐中時計を見つめながらニヤニヤとしていた。
もちろんそれはデイダラとイタチの目にも入っていた。
昼休みの時間、各々の机をくっつけた3人は昼食を摂っていた。
イタチとデイダラは弁当で、飛段はサンドイッチと焼きそばパンとメロンパンである。
デイダラに「いいことでもあるのか?」と聞かれ、飛段は今日角都とデートをすることを話した。
「時計を見つめてても、時間は変わらず進むぞ。うん」
「それに、黒板の上にも掛け時計はある」
デイダラに続き、イタチも言った。
飛段は「わかってねーなぁ」と胸に下げた懐中時計を見せつける。
「これと普通の時計を一緒にすんな」
「「はいはい」」
また、初めて角都にプレゼントされたことを惚気られても面倒なので、2人は適当に流した。
数日だけで耳にタコができるほど聞かされているのだ。
「何時に集合だっけ? うん?」
「6時。学校終わるのが4時半くらいだから、終わったらさっそく待ち合わせの公園にGOだ。その前に家に帰って着替えねーと…」
学校を途中で抜け出す手も考えたが、角都に「学校を抜け出したな」と叱られそうだ。
「……浮かれるのはいいけど、他校の奴らに気をつけろよ。今日も喧嘩したんだろ? あいつらはタチが悪くて有名だからな。うん」
玉子焼きを頬張りながら忠告した。
飛段はメロンパンを頬張りながら返す。
「デイダラも人のこと言えねーだろォ?」
デイダラも絡まれたことがあるのだ。
「あの時はイタチが加勢に来てくれたからなんとかった」
「やるなァ、優等生」
「喧嘩など、ナンセンスだ」
本人はそう言うが、3年で1番喧嘩が強いのはイタチである。
だから、誰もイタチに喧嘩を売ろうとはしないのだ。
知らずに喧嘩を売って制裁を与えられた者も、2度とイタチに喧嘩は売ることはしない。
「オイラと飛段は毎回ふっかけられるのに(汗)」
「その金髪がムカつくんじゃね?」
飛段も人のことは言えない。
秒針は刻一刻と約束の時間へと絶え間なく進んでいく。
今日の分の授業が終わり、家に帰宅した飛段は私服に着替え、公園に向かうべく家を出た。
懐中時計を見ると、午後5時をまわっている。
(ゆっくり行って35分くらいか…)
そんなことを考えながらマンションの階段を下り、玄関に近づいたとき、
「!」
「よっ」
学生服のままのデイダラがそこにいた。
ガラスの扉に背をもたせかけ、飛段の姿を見ると同時に小さく手を上げる。
「なにしてんだよ? デートのジャマかァ?」
怪訝な顔で言われ、デイダラはムッと顔をしかめる。
「人聞き悪ィな。うん。途中まで付き合おうかと思ってな」
「おまえもデート?」
デイダラのデートのお相手はもちろんサソリである。
デイダラは苦笑し、「旦那、忙しいから」と言いながら首を横に振って答える。
「CDショップに行くだけだ。その道がちょうどおまえの行く公園と同じ道だからな」
「ふぅん。まあいいや。行こうぜ」
飛段は玄関を出て、デイダラはそれに続いた。
肩を並べ、他愛のない話をしながら2人は街中の歩道を歩いていた。
飛段は会話をしながら胸に下げた懐中時計の時間を見る。
(余裕だな)
口元に薄笑みを浮かべ、オレンジ色に染まった空を見上げ、角都は先に来ているかなと考える。
その時、デイダラはポンと軽く飛段の肩を叩いて立ち止まる。
「飛段、オイラここでいいや。うん」
「あ?」
振り返った飛段も立ち止まる。
目的のCDショップはまだ先だ。
「もうひとつ寄るとこ思い出しから。それに、角都より先に着きたいだろ?」
「ま…、まあな」
「じゃ、頑張ってこい」
笑顔で手を振るデイダラに、飛段は首を傾げながらも手を振り返してそのまま先を急いだ。
そんな飛段を追いかけるかのように、デイダラの横を数人の学生服を着た男たちが通過しようとした。
しかし、通過される前にデイダラは右脚を横に出し、先頭を走っていた者の足に引っかけて転ばせる。
「いっ!?」
「ぐっ」
その後ろを走っていた者達も前に倒れた者に躓いてこけた。
デイダラはそれを見下ろし、笑みを浮かべながら静かに言う。
「野暮なことすんな。うん」
飛段が尾けられていることには気づいていた。
だからデイダラは心配になって飛段についていたのだ。
CDショップで飛段と別れたあと、なんとかしようと考えていたが、だんだん男達が距離を縮めてきたので、予定よりも早く飛段と別れたのである。
男達は、標的を飛段からデイダラに切り替えた。
男達の数は10。
予想よりも多かったことに、デイダラは内心で少し焦り始めた。
しかし、もう遅い。
デイダラは路地裏に連れ込まれ、何発か相手の顔面や体に食らわせたが、1対10で勝ち目がないのは見えていた。
髷をつかまれ、体に何発かコブシを食らった挙句、腹に蹴りを入れられてよろめき、背後のブロック塀に背中を打ちつけた。
前のめりになり、腹を押さえながら呻く。
「ぐ…っ、ぅ…」
デイダラに殴られて倒れていた不良達も起き上がり、デイダラを睨みつけた。
「チッ。しぶとい奴だぜ」
「どうする? 今日はあの銀髪やめて、こいつにそのまま変更するか?」
「オレは銀髪にカリがあんだ。こいつだけで済むかよ」
このまま飛段のところに向かわせたら、自分が足止めをした意味がなくなってしまう。
そう思ったデイダラはブロック塀を支えに立ち上がる。
「待…ちやがれ…! オイラは…まだ…やられてねえよ…」
「しつけえんだよ!!」
デイダラの近くにいた不良がデイダラの顔面目掛けてコブシを振るう。
ゴ!!
「!?」
横面を殴られて吹っ飛んだのは、デイダラではなくその不良だった。
「な…、なにしてんだよ、飛段!」
助太刀に入ったのは、飛段だった。
「おまえがそれを言うのかよ、デイダラ」
「おまえ、角都との約束が…」
「うるせえ! もう殴っちまったよ!」
取り返しはつかない。
獲物が現れ、不良達は飛段に襲いかかる。
飛段はひとりひとりのコブシを交わし、殴ったり蹴ったりしながら攻撃を繰り出した。
飛段の背後に迫る不良がコブシを振り上げたとき、
ガッ!!
飛段の肩を軽く押し退け、デイダラのコブシがその不良の顔面に炸裂した。
「ったく、おまえといいイタチといい、たまにはカッコつけさせろよ。うん」
飛段はデイダラに飛びかかった不良のアゴに足の先で蹴りあげ、笑みを浮かべて言い返す。
「ゲハハッ。つけさせてやんねーよ」
2人は背中合わせになり、不良達が全員倒れるまで暴れ続けた。
*****
終わった頃には、2人はすり傷とアザだらけで、その場に背中合わせになって座り込み、息を弾ませていた。
「お…、終わった…」
2対10という状況で2人は勝利したのだ。
「なあ…、なんで助けに…」
「そりゃ…、あんならしくねえ態度とられちゃあ…」
そう言ったあと、「デイダラは演技下手だな」と続けた。
「……それでも、行けばよかったのに。おまえの大事なものは角都だろ?」
「おう。超大事。けどよ、おまえがボロボロになってる時に、オレだけ幸せな思いはせこいだろ?「昨日角都とさァ」なんて惚気られねーじゃん」
「なんだそれ。結局惚気たいだけかよ!」
デイダラは怒るどころか腹を抱えて笑った。
飛段もつられて笑う。
「ところで時間は大丈夫なのか? うん?」
そう言われて飛段の顔は凍りついた。
慌てて時計を見る。
6時25分
「――――!!!」
両手を両頬に当て、「ひゃ~」のポーズをした。
「ムンク!?」
「デデデデデ、デイダラ!! どどどど、ど、どうしよ!!」
「落ち着け!! パニックになるな!!」
しかし、デイダラもどうしていいかわからず、飛段の両肩を押さえながら無意識に周りを見回した。
その時、路地裏の隅に、使いものにならなくなった自転車が横向きに倒れていた。
タイヤはパンクし、カゴが曲がっている。
デイダラの視線を追いかけた飛段もそれに釘づけになる。
「「……………」」
2人の考えは一致した。
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