桜色の秒針
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
少女Bは語る。
「憧れのイタチさんにケーキをあげようとしたんです。イタチさんって、甘党じゃないですか…。なのに…、まさかあの先生が…」
放課後の教室でひとり、自分の席で、日直の仕事である日誌を書いているイタチがいた。
いつもいるデイダラと飛段はそれぞれの用事で先に帰ってしまっていた。
前方の扉から、手作りのショートケーキの入った箱を手に、その様子をうっとりと眺める少女B。
数分ほどその姿を眺めたあと、はっと己の目的を思い出す。
(見惚れてる場合じゃないわ!)
思い切って扉を全開で開けようと手をかけたとき、
「イタチさん」
ガラリと後方の扉から鬼鮫が入ってきた。
イタチはそちらに振り返り、ちょうど書き終わったところだったのでシャーペンを置いて日誌を閉じる。
「鬼鮫? どうした?」
少女Bは先生に対してなれなれしいイタチの態度にビックリする。
(先生を呼び捨て!?)
校内には、鬼鮫とイタチが付き合っていることを知らない生徒がたまにいる。
この少女Bもそのひとりだ。
鬼鮫はイタチの席に近づき、持っていた箱を前の席に置いた。
「実は、ケーキを作ってきました」
「ケーキを?」
少女Bは、先をこされたショックより先に、2度目の驚きを覚えた。
あの体育教師の鬼鮫がケーキを作ってきたことに。
はたして、それは自分が作ってきたものより美味しいのか。
一体どんなものを作ってきたのか。
次の瞬間、少女Bは驚きとショックを同時に食らうことになる。
「さあ、選んでください」
開けられた箱からは、数種類のケーキが並べられていた。
イチゴショートケーキ、プリンアラモード、フォンダンショコラ、チーズケーキ、抹茶ケーキ、モンブラン、紅茶のシフォンなど。
どれも見た目美しく、美味しそうである。
「どのケーキがお好きなのかわからなくて…」
イタチの目はキラキラと輝いていた。
ケーキに釘づけである。
「全部食べる」
「え。でも、おなか壊しませんか?」
「団子を3ケタ食べても壊さなかったから大丈夫だ。それに、鬼鮫の作るものはどれも美味いから、食べ逃したら損だ」
「イタチさん…」
イタチは懐からマイフォークを取り出し、鬼鮫のケーキをたいらげていく。
鬼鮫はそれを微笑ましく見つめていた。
「先生辞めてパティシエに転職しろ―――!!!」
敗北感に叩きのめされてしまった少女Bは、パイプ椅子から崩れ落ちて両手と両膝をつき、声を殺して泣いている。
しばらく立ち直るのに時間がかかりそうだ。
「私の方が酷いわよ!!」
そう言いだしたのは、すでにコブシを握りしめて泣いている少女Cだった。
.