3話 銀の少年

 遠い遠い、またあの夢。どこに立っているかもわからない暗闇の中で、ぽつんと泣いているあの子の夢。
 真っ暗で何もかもわからないのに、その子が泣いているのはわかる。すすり泣く声だけが聞こえる。
 
 ねえ、あなた誰? どうして泣いているの?
 
 あたしは、あたしは、今回は歩みを進めることができた。一歩一歩、歩いて、早歩きになって、走って。その子の肩に手を触れる。ああ、やっと触れられた。今までは触れられなかったのに。けれど、視界に靄がかかっていく。夢が終わってしまう。あたしもうすぐ目が覚めるんだ。待って、その前に、この子が誰なのかだけ──

「ねえ、」

 声をかける。その子はゆっくりと振り返る。ようやく──『彼』の、顔がわかった。癖毛の銀の髪。目尻に何度も擦った痕がある碧い目。
 あたしを見てぼろぼろと涙をこぼす彼は、ユウだった。

「……ユウ?」

 朝の日差しに白んで曖昧になっていく暗闇の中、あたしは彼の名前を呼ぶ。すると、ユウはあたしをぎゅっと抱きしめた。強く強く、夢の中なのに、ユウの体温を感じる。どこか低い、けれど確かにそこにある、彼の体温。

「必ず、君を救ってみせるから」

 ユウはあたしの耳元でそう囁いた。
 何を、言っているのだろう。あたし、何かした? それともユウが、何かした?
 ──このおかしな世界が、何かした?

「なに、言ってるの」
「ミー、何度繰り返しても」
「ちょっと待ってよ、ユウ……!」

 しゃくりあげながらあたしに語りかけるユウとは、会話にならない。夢だからだろうか。あたしの、夢。本当に、夢? 涙を拭ってあげたいとずっと思っていたのに、抱きしめられて、ユウがどんな表情をしているのかもわからない。でも、離してなんて言えない。
 こんなはずでは、なかったのに。

 ……ユウ。

「……夢」

 目が覚めた。好きな人に抱きしめられていたのに、未だかつてないほど、嫌な夢だった。
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