頼むから、生まれてきてすみません、みたいな意味を持つ言葉とか、そんな悲しいこと言わないでくれよ。
　
　
　近くのケーキ屋にケーキを買いに行った。さすがにさくらんぼのケーキは皮肉がきいている気もするけれど、あいにく時期なんだから仕方がない。
　ケーキ屋から帰りながら、彼は今頃散々祝われているしどうせ夕飯は彼の誕生日パーティーじみたことになるのだろうし、私からのケーキはいらないんじゃないかとふと思った。まあ、いらないとか言われたら二個分のケーキは私が全部食べてしまおう。私が祝いたいから買ったんだし。
　結論から言うと、いらないなんて言われなかった。それどころか泣いて喜ばれた。どうしてだか涙が溢れてきて止まらないらしい彼にびっくりして、ティッシュなりタオルなりを取りに行ったりして、ケーキは箱に入れたまま十分くらい放置してしまった気がする。
　
　その感情は恋なんですか、と聞かれるとよくわからない。近いものではある気がするけれど、色恋で片付くものじゃないような気もする。難しい。まあいいや、難しいことはおいしいケーキを食べている時に考えるものではない。私は彼が様々な意味で好き。それでいいじゃないか。
　本当はいつでも笑っていてほしいけれど、そんなこと言ったら確実に無理していつでも笑う人種だから言わない。その代わり、いつでも君が笑えるような世界に私がしてみせる……なんて、それはちょっと大口を叩きすぎた。
　なんていうか、そのくらいの心意気ということで。