ノート

過去に呟いた短い妄想を少し肉付けしたまとめ。
いつか小説になるかもしれないし、ならないかもしれません。

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  • 湘北

    20210901(水)12:37
    部活帰りの湘北バスケ部。帰り道が途中まで一緒。先頭を歩く三井に、「ミッチー、何かおごってくれ。」と常に金欠の花道がねだった。花道の隣を歩くリョーちんが「おっ、あざっす、三井サン!そこ寄って行きましょ。」とポケットに突っ込んでいた手をさっと上げて、コンビニを指差した。三井が振り向いて二人に対して渋い顔をするものの「一人200円までだぞ!」と言うところに面倒見の良さが滲み出てしまう。「サスガ、ミッチー。金持ってるな。」「三井サン、こう見えて坊ちゃん育ちっすよね。小遣い多いし。」「だからグレたのか。」と、花道が呟くとリョーちんも同調する。「なるほど。だからグレた。」自分の背後で好き勝手に喋る後輩二人に、イラッとする三井はもう一度振り向きざまに冷たく言い放つ。「お前ら、、、もう奢んねー!帰る!」「ああっ!バカ花道!」「ス、スマン!ミッチー!」花道とリョーちんは、ドタバタバタと、間抜けな疾走音をくっつけて三井を追いかけた。なんとか謝り倒して三井の機嫌を回復させたものの、奢り額は減額され、次のコンビニで三井に「これ二人で分けろ。」とパピコを与えられた。
  • 三井

    20210901(水)06:40
    同じ大学に通う三井君と付き合うことになった。私の片思いだとずっと思っていた。それが昨日から彼氏だというから、まだ信じられない。たまたま水曜日の2限と3限は二人とも空いていて、ランチに出掛ける約束をした。フワフワした足取りで待ち合わせの大学の正門前に到着する。「み、三井君、お待たせ。」「おう。」「これが初デート、かな?」「あー、そゆことになるか。」私は照れてしまって、三井君の顔をまともに見れない。三井君も何となくだがいつもより口数が少ない。「あ、ねぇ、三井君、、、」私が話しかけようとしたら、三井君が遮った。「呼び方。」「え?」「なんかもっと他に無ぇの?決めよーぜ。オレ、下の名前で呼ぶわ。」先日まで三井君は私の事を苗字で呼んでいた。そんなにあっさりと切り替えられるものなのだろうか。私は長らく三井君と呼んでいたものだから、慣れるまでに時間がかかりそうだと訴えた。「はい!決まり!じゃあ今からな!」そんな私の訴えを全く無視し、私の名前を気安く呼んだ。「オレのこと、三井君って呼んだら罰ゲームな。」「そんなぁ〜。まだ私、三井君のこと何て呼ぶか決めてないのに〜。」あっはっは、と笑いながら私の肩をポンポンっと優しく叩いた三井君は、もう完全に彼氏の顔をしていた。

    追記
    ミッチーは照れたりしないで、実は切り替えが早くて、スパっと彼氏になってくれそう。他はダメダメでもいいから、こういうシーンは男らしくあってくれ、と願います。
  • 翔陽

    20210831(火)17:08
    「こないださ、営業先に高校ん時の同級生いたよ。」と少し騒がしい居酒屋で、生ビールのジョッキを静かにテーブルに置きながら話すのは長谷川一志。「え、誰?何組?」と焼き鳥を口に運びながら藤真は尋ねた。「いや、分からないし、喋ってない。でも多分あの子見た事ある。」「話しかけたらいいだろ。オレ、ハイボール行っていい?一志、次どうする?」と、空いたジョッキを指差しながら花形が喋る。「え、何て声かけたらいい?"翔陽高校でしたよね?同級生です"みたいな?あ、オレ、まだビールでいい。」一志の返事を確認し、店員を呼ぶ花形に藤真が割って入る。「花形、ついでにだし巻き玉子も食べたい。ってか一志、そういうのってたいてい向こうから話し掛けてくるもんじゃね?」と、藤真がメニュー表をテーブルの端に寄せながら言った。イケメンは何もしなくても女の子が勝手に寄ってくるのを、高校時代からずっとそばで観察していた高身長の二人は、もう腹の立て方も忘れてしまっている。「さすが藤真」とだけ言って、テーブルの串盛りに手を伸ばした。
  • 陵南

    20210831(火)15:47
    高校ジャージをなかなか捨てられない。大学へ進学しての長期休暇。地元を離れて進学した越野の一人暮らしのアパートに泊まりに行った。知らない土地で一人暮らしを満喫する越野が、ちょっとだけ大学生風をふかして、気取ってたのがイラっとしたけど、多分それはお互い様だろう。1Kに男三人の雑魚寝はちと狭いけれど、それにも増して風呂上がりのオレを見た越野の額が狭くなる。目を顰めてオレの格好に文句をつけてくる。「げっ、仙道、おまっ、陵南ジャージ持ってくんなよ!大学生にもなって!」「着心地良くない?陵南ジャージって。なぜか手放せないんだよ。」オレが笑いながら答えたら、「実はオレも。」って横から、陵南ジャージを自分のバッグからおずおずと取り出して見せたのは植草。「くそぉ、、、お前ら、、、」と、越野も実は毎日羽織ってる、なんて告白してきた。「これ、もう部活じゃん。合宿みてー。あっはっは!」笑ったオレに「高校まではな!今着てたらただのお揃いじゃねーか!」と顔を赤くして突っ込む越野。女子か。「なんか急に恥ずかしくなってきた、、、」と縮こまる植草。お前も女子か。そんな19歳くらいの夜。
  • 陵南

    20210831(火)14:53
    仙道君は出掛ける時、カバンを持って来ない。文化祭でバスケ部も部として催しに参加する。今日はその文化祭準備のために、備品の買い出しに行くことになった。メンバーは、マネージャーの私と、二年の仙道君と越野君。一年は彦一が付いて来た。
    待ち合わせの場所に、仙道君が遅れてやってくる。手には、コンビニのビニール袋をぶら下げて。「仙道さん!なんで財布もスマホもレジ袋に入れてはるんですかっ!」と彦一が聞いたら、仙道君はさも当たり前と言った風に答える。「コンビニでガムとかジュース買うじゃん。持ち物増えんのヤダから最初からこれに入れとけばいいやって。」「さすが仙道さんや!」何でも仙道君に憧れている彦一とは対照的に、隣にいた越野君は、仙道君のコンビニ袋を見ながら言い捨てる。「こういう無頓着な奴がモテるのほんと嫌。」越野君はそうやってうんざりするフリをするけれど、私は知っている。翌日越野君は部活にビニール袋を下げてやってきた。越野君はとっても男子高校生だから、何だかんだ言って、仙道君の真似をしておけば、モテるんじゃないかって思ってる。瞬く間に、男子バスケ部に、コンビニレジ袋ブームがやってきてしまい、田岡監督が不思議がっていた。