日記
放課後(瀧×理央)
2025/11/21 22:56小話
放課後(瀧理央・過去話)
「あの日にまだ縋ってる」の瀧×理央の過去のお話です。理央視点。
放課後、俺は一生懸命、問題を解いてた。プリント全問正解しないと終われなくて、授業が終わっても終わらなかった。焦るほど間違えて、半分泣きそうになりながら解いてたら、ふっと影が手元に落ちた。
「理央ちゃん」
ランドセルを背負った瀧が、俺のことを見下ろしてた。俺は目を大きくして、「瀧」と呟いた。心細かった気持ちが、こぼれた。慌てて俯くと、瀧はほっぺにハンカチを当ててきた。
「ごめん、まだプリント終わってなくて」
「そっか」
頭を優しく撫でられる。
「俺は理央ちゃんといられるし、いいよ」
机の前にしゃがみこんで、じっと綺麗な目が見上げた。俺は真っ赤になって、でも勇気がわいてきた。
頭がさっと冴えて、焦る気持ちが消えた。問題にただ、澄んだ気持ちで向き合えた。
「瀧!」
はなまるのついたプリントを手に、俺は瀧の腕に飛び込んだ。瀧は、ぎゅっと俺のこと抱きしめてくれた。瀧は笑って頭を撫でてくれる。
「おめでとう、理央ちゃん」
「ありがと、瀧のおかげ」
嬉しくてずっとにこにこしてると、瀧は目元にキスしてきた。頬がぱっと熱くなる。瀧はくすくす笑った。
「真っ赤」
「だって」
「じゃ、帰ろっか」
「うん!」
ランドセルを背負うと、手を繋いで、俺達は歩き出した。
「俺の家で宿題しよう」
「うん」
瀧が、当たり前みたいにお家に呼んでくれる。さみしい時、言葉にするよりはやく、瀧は気づく。俺より俺のこと、知ってるみたい。
ひとりじゃないって、すごく実感する。
「だいすき、瀧」
「俺も理央ちゃんが世界で一番好き」
ずっとこうしてたい。
俺は、やわらかな幸福に、胸がぎゅってなった。
◇
家でひとり、俺は机に向かって、入試問題を解いてた。解答を見て、赤で直す。
「また間違えた」
こんなんじゃ駄目だ。もっと頑張らないと、瀧の通ってる学校に受からない。
俺は問題に付箋をつけて、復習の目印にした。
俺のほうが年上だから、中学は一緒のところに行けなかった。
「瀧君は理央よりできるし、瀧君の進路を狭めたらだめよ」
母さんの言う通りだった。瀧は、一緒のところ行こうって言ったら、きっと合わせてくれる。
だから、さみしいけど、高校で瀧と同じのところに行くって決めたんだ。幸い中高一貫校だったからそれがかなった。
頑張って受かるんだ。そしたら、瀧に毎日会える。
ぽきりと、シャープペンの芯が折れる。頭の奥がぐらりと揺れて、俺は目をつむった。
「きっと、待っててくれる」
呟いた言葉は、あんまり空虚で、もう口に出さないって決めた。
問題がぶれて読めなくなる。堪えきれなくて、俺はベッドに倒れ込んだ。吐いた時のため、袋を握りながら、息をつく。
明日こそ瀧に会いたい。学校が違うと、生活リズムが違う。瀧は学校から直接塾に行って、遅くまで帰ってこない。家に会いに行かないと会えないけど、遅くに行くと迷惑になる。
でも明日は、塾がない日だから、家に行けば、きっと会えるはず。
げほ、とむせこみ吐いた。
また体調が悪い。もしかして、ヒートが来るのかな。
俺の体は安定しなくて、ヒート周期は不規則で重かった。整えるためにも抑制剤を飲むんだけど、いまだ合うお薬に出会ってなかった。
それで、お医者さんと、母さんと、ずっと試行錯誤してる。
ヒートがきたら、一週間は絶対に会えない。焦燥が強くなる。
瀧に会いたい。会えたら、きっとこんなに気持ちが落ち込まない。
体調が悪くて、家にひとりでいると、世界にひとりぼっちみたいな気持ちになる。
待つしかできなくなるから。
「大丈夫、絶対受かる」
枕元のぬいぐるみを抱きしめた。昔、瀧が俺にプレゼントしてくれた。
瀧の香りはしないけど、思い出すことはできる。
涙をぬぐって、ゆっくり息をついた。
きっと、明日は元気になってる。そしたら気持ちも明るくなるし、瀧に会える。
目を瞑って、瀧の笑顔をずっと、思い浮かべてた。
《完》
「あの日にまだ縋ってる」の瀧×理央の過去のお話です。理央視点。
放課後、俺は一生懸命、問題を解いてた。プリント全問正解しないと終われなくて、授業が終わっても終わらなかった。焦るほど間違えて、半分泣きそうになりながら解いてたら、ふっと影が手元に落ちた。
「理央ちゃん」
ランドセルを背負った瀧が、俺のことを見下ろしてた。俺は目を大きくして、「瀧」と呟いた。心細かった気持ちが、こぼれた。慌てて俯くと、瀧はほっぺにハンカチを当ててきた。
「ごめん、まだプリント終わってなくて」
「そっか」
頭を優しく撫でられる。
「俺は理央ちゃんといられるし、いいよ」
机の前にしゃがみこんで、じっと綺麗な目が見上げた。俺は真っ赤になって、でも勇気がわいてきた。
頭がさっと冴えて、焦る気持ちが消えた。問題にただ、澄んだ気持ちで向き合えた。
「瀧!」
はなまるのついたプリントを手に、俺は瀧の腕に飛び込んだ。瀧は、ぎゅっと俺のこと抱きしめてくれた。瀧は笑って頭を撫でてくれる。
「おめでとう、理央ちゃん」
「ありがと、瀧のおかげ」
嬉しくてずっとにこにこしてると、瀧は目元にキスしてきた。頬がぱっと熱くなる。瀧はくすくす笑った。
「真っ赤」
「だって」
「じゃ、帰ろっか」
「うん!」
ランドセルを背負うと、手を繋いで、俺達は歩き出した。
「俺の家で宿題しよう」
「うん」
瀧が、当たり前みたいにお家に呼んでくれる。さみしい時、言葉にするよりはやく、瀧は気づく。俺より俺のこと、知ってるみたい。
ひとりじゃないって、すごく実感する。
「だいすき、瀧」
「俺も理央ちゃんが世界で一番好き」
ずっとこうしてたい。
俺は、やわらかな幸福に、胸がぎゅってなった。
◇
家でひとり、俺は机に向かって、入試問題を解いてた。解答を見て、赤で直す。
「また間違えた」
こんなんじゃ駄目だ。もっと頑張らないと、瀧の通ってる学校に受からない。
俺は問題に付箋をつけて、復習の目印にした。
俺のほうが年上だから、中学は一緒のところに行けなかった。
「瀧君は理央よりできるし、瀧君の進路を狭めたらだめよ」
母さんの言う通りだった。瀧は、一緒のところ行こうって言ったら、きっと合わせてくれる。
だから、さみしいけど、高校で瀧と同じのところに行くって決めたんだ。幸い中高一貫校だったからそれがかなった。
頑張って受かるんだ。そしたら、瀧に毎日会える。
ぽきりと、シャープペンの芯が折れる。頭の奥がぐらりと揺れて、俺は目をつむった。
「きっと、待っててくれる」
呟いた言葉は、あんまり空虚で、もう口に出さないって決めた。
問題がぶれて読めなくなる。堪えきれなくて、俺はベッドに倒れ込んだ。吐いた時のため、袋を握りながら、息をつく。
明日こそ瀧に会いたい。学校が違うと、生活リズムが違う。瀧は学校から直接塾に行って、遅くまで帰ってこない。家に会いに行かないと会えないけど、遅くに行くと迷惑になる。
でも明日は、塾がない日だから、家に行けば、きっと会えるはず。
げほ、とむせこみ吐いた。
また体調が悪い。もしかして、ヒートが来るのかな。
俺の体は安定しなくて、ヒート周期は不規則で重かった。整えるためにも抑制剤を飲むんだけど、いまだ合うお薬に出会ってなかった。
それで、お医者さんと、母さんと、ずっと試行錯誤してる。
ヒートがきたら、一週間は絶対に会えない。焦燥が強くなる。
瀧に会いたい。会えたら、きっとこんなに気持ちが落ち込まない。
体調が悪くて、家にひとりでいると、世界にひとりぼっちみたいな気持ちになる。
待つしかできなくなるから。
「大丈夫、絶対受かる」
枕元のぬいぐるみを抱きしめた。昔、瀧が俺にプレゼントしてくれた。
瀧の香りはしないけど、思い出すことはできる。
涙をぬぐって、ゆっくり息をついた。
きっと、明日は元気になってる。そしたら気持ちも明るくなるし、瀧に会える。
目を瞑って、瀧の笑顔をずっと、思い浮かべてた。
《完》