ケーキの向こうのお前が泣いた
攻めの誕生日に、別れをきりだした受け。
それから部屋の鍵閉めて閉じこもって泣いていたけど、ずっと攻めがドアの向こうにいる。
「受け!」
ずっとドアを叩いてて、受けは耳をふさいでた。『出てきて』『別れたくない』って着信もやまない。
今更なんでこんなことするんだろう、と苦しい。けど、そういえば友達の時から、かんじんなとき優しかったな。とか思い出す。
しばらく頑張って籠城してたけど、あんまり攻めが叫ぶので、周囲の部屋の生徒たちからもノックされる。
「とりあえず、出てきてくれ」と皆に言われ、出ていく。なんでこんな最後までちゃんとできないんだろ。
寮生の無情をかみしめ出ていくと、攻めに抱きしめられた。びっくりして、押し返そうとするけど、びくともしない。周囲のことなんてお構いなしに、「受け」って泣いてる。
「離せよ」
「やだ。そしたら、また離れるんだろ」
自分たちが付き合ってることは、ひた隠してはないけど大やけではない。そんなに恋人感なかったから、皆ちょっとざわっとしてる。駄目だ。
なんでこんなときまで、こいつのこと考えてるんだろ。背中を叩いて「わかったから」と言う。
「ちょっと落ち着けよ。すみません、騒がせて」
とにかく注目を散らさないと、と謝ったら攻めが「違うだろ!」と叫ぶ。怒ってるっていうより必死の目で、受けは戸惑う。
「なんでそんな、言うんだよ!周りなんてどうでもいいだろ!」
「落ち着けってば!すみません、ケンカですから……」
「ケンカじゃない!さっきから、なんで……」
「だから、迷惑だから、このままじゃ……!」
攻めの涙が顔にぱらぱら落ちる。焦りとか不安で混乱する。その中に、ふらふら期待まで揺れて、最悪だ。
もう、なんでだよ。なんで、こんな、俺が気をつかってるんだよ。俺たち、もう終わってるのに。
「どうでもいいだろ!それとも受けは、あのことケンカにしてくれんの⁉」
「――いい加減にしろよ!」
受け、とっさに叫んでいた。目から、ばたばた涙がこぼれだす。ふざけんな、ふざけんな。
「そういうとこが、うんざりなんだよ!どっかいけ!」
何にも自分の言葉が響いてないんだ。こいつにとっては、そんな簡単なことなんだ。これはきっと、駄々か何かなんだ。
必死な顔が嬉しい、でも信じられない。もう頭の中が無茶苦茶だった。なんできれいに別れさせてもくれないんだよ。
悲しくて、悔しくて泣けてきた。どれだけ俺は、コイツの中で価値が低いんだよ。なのに期待なんて、みじめなことさせるなよ。
「いい加減にしなよー」
友人か誰かに連れてこられた幼馴染が割って入ってくる。不機嫌そうに、部屋着で腕組みして歩いてくる。
「ご近所迷惑だから」
「幼馴染」
ざあっと胸の奥が冷たくなる。受けの顔から表情が抜ける。
「受けさんも、ひどいよ。ケンカなんて攻めの誕生日に、わざわざしなきゃいけないこと?」
攻めすごく楽しみにしてたのに。とげとげした声が、胸をざらつかせた。
「僕が帰ってから何があったのー?」
攻めが手を緩めて、そっちを見た瞬間、受けは攻めをつきとばした。もうたくさんだった。
「受け!」
「嫌いだっていっただろ!それが答えだ!」
そう言って、部屋に逆戻りする。もう、外にでるつもりはなかった。
攻めはずっとドアを叩いていたけど、周囲に止められて、去ったのがわかった。その中には、幼馴染の声もあって。
死ぬほどみじめだった。一人、がたがた震えながら、受けは泣いてた。
影がとけこむくらい、部屋が真っ暗になって。それでも受けは泣いてた。
メッセージが来る。
「わかった。でも俺は、受けのこと本当に好きだったよ」
メッセージを消そうとして、できなかった。心臓が冷たくて痛い。
結局、自分がひとりになっただけで、終わった関係だ。何にもあいつは変わらない。
幼馴染になぐさめてもらってるんだろう。このメッセージだって、一緒に送ったのかも。本当に、何にも影響を及ぼさなかった。自分がまだ期待してたと悟る。
これが勝手なことをした罰か。
――消えてしまいたい。そう思った。
それから部屋の鍵閉めて閉じこもって泣いていたけど、ずっと攻めがドアの向こうにいる。
「受け!」
ずっとドアを叩いてて、受けは耳をふさいでた。『出てきて』『別れたくない』って着信もやまない。
今更なんでこんなことするんだろう、と苦しい。けど、そういえば友達の時から、かんじんなとき優しかったな。とか思い出す。
しばらく頑張って籠城してたけど、あんまり攻めが叫ぶので、周囲の部屋の生徒たちからもノックされる。
「とりあえず、出てきてくれ」と皆に言われ、出ていく。なんでこんな最後までちゃんとできないんだろ。
寮生の無情をかみしめ出ていくと、攻めに抱きしめられた。びっくりして、押し返そうとするけど、びくともしない。周囲のことなんてお構いなしに、「受け」って泣いてる。
「離せよ」
「やだ。そしたら、また離れるんだろ」
自分たちが付き合ってることは、ひた隠してはないけど大やけではない。そんなに恋人感なかったから、皆ちょっとざわっとしてる。駄目だ。
なんでこんなときまで、こいつのこと考えてるんだろ。背中を叩いて「わかったから」と言う。
「ちょっと落ち着けよ。すみません、騒がせて」
とにかく注目を散らさないと、と謝ったら攻めが「違うだろ!」と叫ぶ。怒ってるっていうより必死の目で、受けは戸惑う。
「なんでそんな、言うんだよ!周りなんてどうでもいいだろ!」
「落ち着けってば!すみません、ケンカですから……」
「ケンカじゃない!さっきから、なんで……」
「だから、迷惑だから、このままじゃ……!」
攻めの涙が顔にぱらぱら落ちる。焦りとか不安で混乱する。その中に、ふらふら期待まで揺れて、最悪だ。
もう、なんでだよ。なんで、こんな、俺が気をつかってるんだよ。俺たち、もう終わってるのに。
「どうでもいいだろ!それとも受けは、あのことケンカにしてくれんの⁉」
「――いい加減にしろよ!」
受け、とっさに叫んでいた。目から、ばたばた涙がこぼれだす。ふざけんな、ふざけんな。
「そういうとこが、うんざりなんだよ!どっかいけ!」
何にも自分の言葉が響いてないんだ。こいつにとっては、そんな簡単なことなんだ。これはきっと、駄々か何かなんだ。
必死な顔が嬉しい、でも信じられない。もう頭の中が無茶苦茶だった。なんできれいに別れさせてもくれないんだよ。
悲しくて、悔しくて泣けてきた。どれだけ俺は、コイツの中で価値が低いんだよ。なのに期待なんて、みじめなことさせるなよ。
「いい加減にしなよー」
友人か誰かに連れてこられた幼馴染が割って入ってくる。不機嫌そうに、部屋着で腕組みして歩いてくる。
「ご近所迷惑だから」
「幼馴染」
ざあっと胸の奥が冷たくなる。受けの顔から表情が抜ける。
「受けさんも、ひどいよ。ケンカなんて攻めの誕生日に、わざわざしなきゃいけないこと?」
攻めすごく楽しみにしてたのに。とげとげした声が、胸をざらつかせた。
「僕が帰ってから何があったのー?」
攻めが手を緩めて、そっちを見た瞬間、受けは攻めをつきとばした。もうたくさんだった。
「受け!」
「嫌いだっていっただろ!それが答えだ!」
そう言って、部屋に逆戻りする。もう、外にでるつもりはなかった。
攻めはずっとドアを叩いていたけど、周囲に止められて、去ったのがわかった。その中には、幼馴染の声もあって。
死ぬほどみじめだった。一人、がたがた震えながら、受けは泣いてた。
影がとけこむくらい、部屋が真っ暗になって。それでも受けは泣いてた。
メッセージが来る。
「わかった。でも俺は、受けのこと本当に好きだったよ」
メッセージを消そうとして、できなかった。心臓が冷たくて痛い。
結局、自分がひとりになっただけで、終わった関係だ。何にもあいつは変わらない。
幼馴染になぐさめてもらってるんだろう。このメッセージだって、一緒に送ったのかも。本当に、何にも影響を及ぼさなかった。自分がまだ期待してたと悟る。
これが勝手なことをした罰か。
――消えてしまいたい。そう思った。