あなたをさらって飛んでいくだけ
相変わらず、先生は鈍いなあ。
攻めは思う。攻めにはめられた指輪を見つめながら、受けは穏やかに笑っていた。
受けが、自分がしいたげられたために他人に心を開けないんだと、心配してるのはわかる。それが都合が良くも、もどかしい。
まあ今は都合がいいが勝っているから、幻想を壊さない。
ぼくは昔から先生のことが好きだし、「魔法を教えて」って言ったときから番にするって決めてたのに。
先生がいなくては、今の自分はない。潰れるか名を残すかの両極端の才能だった。
自分を生かしてくれたのは先生なのに、どうして「外の世界に羽ばたけ」なんておっしゃるのかわからない。
受けを抱きしめたままでも、飛ぶことはできるし、世界にだって出ていけるのに。
それは、自立して先生もまた自由にするのが育てられたものの務めって言われたら……言われても聞けない。幸せにするのは自分でありたい。
それ以外の方法で、先生に尽くすから、絶対に離れたくない。
先生だって。
ぼくを愛してるっておっしゃるのに、ずっとたくさんの愛をかけてくれたのに、まっとうな理由で、今さら離さないでほしい。
「先生、ぼくにも指輪をはめてください」
手を差し出して、ねだる。受けは笑って指輪を手に取った。
いま、責任でも一緒にいてくれるならいい。これからは、先生の隣に立つのだ。
自分は一生離す気はないし、絶対に幸せにするのだから。
だから、これからは、伴侶として。
「よろしくお願いします。受けさん」
手をとり、指輪に口づけた。
《完》
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