あなたをさらって飛んでいくだけ
受けは神童と呼ばれた魔法使いだったが、オメガであるとわかってから、アルファの弟に後継を譲ることになった。弟もまた天才であったし仲も良かった。受け入れて、弟を支えながら学究に邁進してきた。
ある日、弟を学園に迎えに行った時、ぼろぼろの下級生を助ける。魔法使いの名家出身で、魔法学園に入ったはいいが、落ちこぼれとして馬鹿にされているようだった。
受けは面倒見のよさから、この世の全てを恨んでるような顔のその子(攻め)のことを気に掛ける。
攻めは、最初は受けにも攻撃的だったけど、徐々に心を開いてくれるようになり、「魔法を教えてほしい」と言ってきた。
魔力があるなら、大魔法使いになれずとも、それなりに伸ばせるし、受けには知識も時間もあった。
受けは攻めの心のケアをしながら、才能をゆっくり伸ばす。
攻めは最初、全くと言っていいほど伸びなかったが、受けは根気よく指導した。
「名家でアルファなのに、自分は落ちこぼれだ」と苦しむ攻めを、守ってあげたい。せめて、第二性のことで悩まずにいられたらな、そんな気持ちだった。
数年後、努力が実を結び、攻めは能力を開花させる。
圧倒的な力で、どんどん頭角を表す攻めを、嬉しげに眺める受け。もう自分に教えることはないな、と寂しさ半分、安堵する。
それでも攻めは休みのたびに、
「先生、お会いしたかったです」
とずっと自分のもとへ来てくれる。今が一番楽しい時期だろうに、義理堅いなあと思う。
「先生、先日話していた理論なんですけど」
「先生、同級生の使い魔がこの間……」
今日あったことや研究の話を一生懸命する攻めに、受けはもう聞き役しかできない。けれど攻めは一番に受けに話したがった。
うんうんと聞いて、一緒にご飯を食べる。
とはいえ、いつまでもこうしてはいられない。
攻めも卒業したら家を継ぐんだろうし、そうしたら自分にはもう会いに来れないだろう。
だからこの子が巣立つまでのこの時間を、大切に過ごしたい。
弟も家を継いだし、自分も本当に身のふりを考えないとなあ、とのんびり考えていた。
すると、はからったように、「縁談の話がきた」と家から知らせが入る。急いで実家に帰れば、ひっくり返したみたいな騒ぎになっていた。
相手の家を聞いて、受けは声を上げた。
申し込んできたのは、なんと攻めの家だったのだ。
「いやいや、なんでまた……」
「お前、攻め様と懇意にしていたろう。恩義に感じたのでは」
えらいこっちゃ。
ここまで攻めが義理堅いとは思わなかった。慌てて攻めに会いに行く受け。
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