「俺のほうがずっと大好きだよ」
受けには、ずっと忘れられない人がいる。小学生の頃、音楽の授業のとき、歌を皆に笑われたとき、隣で一緒に歌ってくれた。よく通るきれいな声の子で、目が合ったらにこりと笑った。それが攻めだった。
そのときに、受けは攻めに恋をした。
でも、そのときにはすでに攻めの引っ越しが決まってて、遠くに行ってしまった。
ただの同級生なのに変だとか考える余裕もなくて、受けは手紙と押し花の栞を渡した。
「攻めくんのことが大好きです」なんて、むちゃくちゃだったと思う。
いまは受けは高校生だ。受けはまだ、攻めに恋をしている。
自分はまだ子供で、攻めがどこに引っ越したかさえ、わからなかった。だから、街を歩いても、どこに行っても、ずっと、攻めの声を探していた。
どこかでまた会えないかって。
もう、声変わりだってしてるはず。
面影だって、このまま遠くなってしまうのだろうか。こんなに鮮明なのに、想像できなかった。けど、子供の頃のことなんて、覚えてないって、大人は皆言うから。
入学式の席で、隣になった子と話していると、その子がふいに「おーい!」と自分の向こうを見て手を振った。知り合いに会ったらしい。
少し驚いていると、「おう」って返事に、受けは目を見開く。
この声。声は低くなってるけど本質のところが、似てる。想像してた通りと言えた。
受けは思わずそちらを見た。長身の男子生徒が、こちらに手をあげてやってきていた。
ずっと探していた面影がそこにある。
「攻めくん……」
受けは、思わず呟いた。隣の子は、手招きして「遅いって」と話しだした。食い入るように攻めを見つめる受け。隣の子は、受けを置いてけぼりにしてるのに気づき、笑って紹介する。
「受けくん、こいつ俺の友達。攻め。さっき仲良くなった受けくん」
「あっ」
引き合わされて、受けは戸惑った。はじめまして? ひさしぶり? どう答えたものか……攻めを見つめると攻めは受けを見て、少し目を見開く。それから、にこっと笑った。
「久しぶり」
「えっ」
「受けくんだよね?」
「うん」
俺のこと忘れちゃった? その言葉に、攻めが、あの日、自分の手紙を受け取ってくれたときに、
「わすれないでね」
って言ってくれたのを思い出す。隣の子が、「なんだ、知り合いだったのか」と笑った。
「小学校同じで」
「へえ。俺らは、試合仲間なんだ」
隣の子が、攻めとの経緯を話してくれる。相変わらず、サッカー頑張ってるんだ。聞きながら、受けは感動していた。
すぐにわかってくれた。
嬉しかった。
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