お前と向かい合う夏


 二人きりだと話しに来るけど、絶対自分の普段の友達には受けを紹介しない攻め。

「受けくんは俺の聖域だから」が口癖だった。
 受けは中学までは友達がいたけど、高校に入って友達ができなかった。校風が合わないというだけで、こうも変わるんだなあと思いつつ、物怖じもせず、一人でも過ごせるタイプなので、マイペースに過ごしていた。
 二学期くらい、ひょんなことからクラスの人気者の攻めに放課後にだけ話しかけられるようになる。

「受けくんって話しやすいね。俺こんなに楽しいの初めて」

 と言って顔を赤らめて嬉しそうにしてる。
 人気者だけど、繊細なんだなと思う受け。基本聞き役してるけど、人気者には人気者の苦労があるみたいで、ずっと気を張っていてしんどいらしい。
 受けはうんうんと話を聞きながら、高校に入って初めての友人との時間、というものを楽しんでいた。中学の時の友達は今でも仲良しだけど、それぞれの時間がある。やっぱり現行一緒に過ごして関係を作れるひとがいるのはありがたかった。

「俺、受けくんといるときの自分が一番好きだし、自分らしいなって思う。息ができるんだ。こんなこというの、皆に悪いけど……」

 そこまで言われたことは、受けもなかった。ちょっと不謹慎だけど嬉しくて、次の日、放課後以外でも話しかけてみようかな、と思う。
 普段は攻めは人に囲まれてて、今までは攻めが一方的に来てくれた関係だった。これから、関係を自分からも作っていきたい。
 話しかけたら驚くかな。そう楽しみにしていた。

 けど、違った。受けが話しかけようとしたとき、攻めはものすごく戸惑った顔をした。

「え? 誰?」

 攻めの友達が半笑いで尋ねる。皆、いきなり入ってきた馴れ馴れしい同級生に、排他的な態度をとっていた。
 受けは察して、「ごめん、なんでもない」と濁して去った。去る受けの背中に、「なに、あいつ」と怪訝な声が刺さる。攻めは一度も、受けを見なかった。

 そうか。
 受けは、何となく察してしまった。攻めくんと俺との関係って、そこまでなのか。
 さすがに席には戻る気になれず、廊下を歩いて、気持ちを逃がしていた。

1/4ページ
スキ