ケーキの向こうのお前が泣いた

「週末の記念日だけは俺のことだけ考えてほしい」

そう受けが頼んだら、「いいよ」と攻め。

「でも俺、いつも受けのことばっかり考えてるよ」

嘘つくんじゃねえよ。とはいうものの、不覚にもときめく受け。
そしていざ週末、待ち合わせ、なんと攻めが時間通りにやってきた。驚いて見てると、「行こっか」て当たり前に言ってくれる。
「今日の俺は特に、受けのものだから」そう言って、手をつないであちこち連れていってくれた。
お店に立ち寄ったり、ご飯を食べたり。今までの思い出とか話したり、びっくりするくらい、和やかな時間で。攻めは一回もスマホを見なかった。
何かの拍子に幼馴染が合流してきたり、幼馴染に泣きつかれて一緒に慰めに行ったりしないといけないかも、とそうはいっても覚悟してたのに。
受けは幸せが過ぎて、ちょっと夢かな、と思ってしまう。じっと見てると「どうした?」と聞いてくれる。
ありがとう、というのも違う気がして、「お前のこと好き」と言ったら、攻めは嬉しそうに「俺も」と笑ってくれた。
帰りのバスで、攻めの肩にもたれて、「ずっとこんな日が続いたらいいのにな」と思う。もしかして、今日からずっとこんな日になったりして。
なんて楽観的なことを考えながら、部屋の前でわかれた。
布団の中、まだ夢みたいで、「言ってみるもんだなあ」と感激する受け。ちょっと自分も会話不足だったのかも、と反省。
こうして自分が幸せに浸ってる間、攻めは幼馴染と夜通しネトフリ見てたのを知ったのは週明けだった。

「週末、楽しかったね~。でも寝不足~」

って幼馴染が攻めに言うのを呆然と聞く受け。攻めも「うん。眠い」と普通に返してる。
「ちょっと来て」ってさすがに攻めの手を引いて、二人になる。

「俺のことだけ考えてって言ったじゃん」
「考えてたよ?」
「幼馴染くんとネトフリ見てたって……」
「ああ、あれはオフだから」

その言葉に、ぶつんと何かが切れる受け。オフってなんだよ。あの時間って、お前にとってなんだったの?俺ってお前にとって何?
気づいたら目から涙がぱたぱた落ちてて、攻めが「あ」という。

「違うよ。その、あいつの機嫌とってただけで……」

顔をぬぐおうとされて、思い切り払いのけた。そのまま去る。
ずっと連絡無視してふさいでたら、放課後に幼馴染がやってきた。

「攻め、ずっと受けさんのこと僕にのろけてたんだよ?それにさ、あんまりプライベートに口だすのよくないと思う」

ぶっとばしてやりたい、一瞬そう思ったけど、もうどうでもよかった。
怒ってるのは、疲れたのは、傷つけられたのは、こいつにじゃない。
扉の前で待ってた攻めと仲直りする。「よかった~おめでとう」と拍手してる幼馴染に、「ありがとな」とか言ってる攻め。
受けは笑った。もういいよ。お前の中の俺って上限はここまでなんだ。なら、もういい。
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