ケーキの向こうのお前が泣いた
それから。
受けと攻めは、復縁はしなかった。けれど、少しずつ、一緒にいる時間を持つようになった。
基本は別のグループにいるけど、時間を作っては、顔を合わせる。何か話すときもあるけど、何も言わないで、ただ傍にいることの方が多かった。
友達は、笑って祝福してくれた。「無理するなよ」とも。本当にありがたくて、頭が上がらない。
攻めは幼馴染との関係をばっさり切ろうとしたので、受けは止めた。
「攻めの交友関係を狭めたかったわけじゃないから」と。
友達は自分にもいるし、ただ、ないがしろにされてる気がして辛かっただけなんだ。
攻めは不安そうだったけど、納得してくれた。
隣の攻めを見上げる。
受けは、攻めが隣にいると、やっぱりすごく好きだなって思う。こうして傍にいるだけで、すごく心が浮き立って、息ができないくらい切ない気持ちになる。
だから、同時に、すごく不安にもなるし、胸が痛くもなる。
けれども。
「どうしたの?受け」
じっと攻めが受けを見る。その目から、「嬉しい」って気持ちがいっぱいにあふれていて、受けは胸が切ないほど嬉しくなる。
「なんでもない。見てただけ」
受けも笑い返す。そしたら、攻めが、目元を赤くして、笑い返してきた。
そんな風に、自分に対して喜ばれたら、どうしていいか、受けはわからなくなる。
再び一緒にいるようになってから、攻めはずっと、受けが何を考えてるんだろうって顔で、受けを見ることが増えた。傷つけたくないとか、大事にしたいって、はっきりわかるような目で、自分を見てくる。
踏み出したいって思った。もう一度、二人でいるって決めたんだから、自分も怖がってるだけじゃだめだ。
「攻め」
「なに?」
「手、つなぎたい」
受けの言葉に、攻めが息をのんだ。攻めは、前みたいに手を握ったりとかもしなかったから。
「――いいの?」
「うん。だめか」
「だ、だめじゃないよ!」
いうが早いか、ぎゅっと手を握られる。その手は温かくて湿っていた。それから、我に返ったみたいに、こわごわ握りなおされて、受けは笑った。胸の奥がくすぐったくて仕方ない。
「好きだよ、受け」
攻めは、じっと見つめながら受けに言った。真剣な目に、頬が熱くなった。
「俺も、好き」
受けは手を握り返した。
これから、自分たちはどうなるかわからない。いまだに待つのは怖いし、不安が襲ってくる。ずっと攻めのことを傷つけた、ケーキは出せないかもしれない。それは、自分がずっと背負うことなのだろう。
でも、今はただ。
こうして、攻めと隣り合って、手をつないでいる。隣で、見つめあってる。そのことだけを、大切にかみしめていたい。そう思った。
いつか、お前と向かい合える日が来たら。
「ずっと一緒にいてほしい」
って、言えるだろうか。わからない。
それでも、この手をつないでいたい。それは、偽りない受けの本心だった。
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