ケーキの向こうのお前が泣いた
「攻め!」
走っていった攻めを見て、受けは咄嗟に攻めを呼んでいた。攻めの足に躊躇はなくて、どんどん小さくなっていく。追いかけようとした足を、止める。俺が追いかけてどうするんだ。受けは首を振る。
「ごめん、受け」
受けの背に、友達が謝った。振り返ると、友達が手を合わせた。
「俺のせいなんだ。ちょっとケンカしてさ」
「ケンカ?お前が」
「お前のことで怒ってきて、俺もムカついて」
受けは驚きに目を見開く。攻めが、俺のことで?まだ気にしてくれてたのか。なんで……動揺を隠すように目をさまよわせる。友達は、そんな受けにひとつ、頷いた。
「あいつ、お前のこと好きみたいだな」
「……え」
友達は笑う。その顔は、受けに対する思いやりと愛情に満ちていた。
「だからなんだって話だけどな。でもまあ、ちょっと安心したよ」
お前ばっかり辛い思いしたんじゃ、割に合わないから。
そう言って笑った。受けは、見返して、それから顔を伏せた。ずっと自分を守ってくれた、優しい友達の目。
この目に、笑顔に、ちゃんと応えられる自分でいたい。
「……俺、行ってくる」
「おう」
「ごめん。戻ってくるから」
「いいよ、成り行きで。今度おごりな」
そう言って、送り出してくれた友達に、笑って、受けは走り出した。
気まずいなって思ってた。今日がずっと。どこかで、幼馴染くんと来るんじゃって気にして、そんな未練がましさに呆れた。
もう関係ないって決めたのに。
待ち合わせ場所に行ったら、もう攻めがいて。なんだか、それが嬉しくて。
『誕生日おめでとう』って言ってくれた攻めの顔が、よみがえる。それは、やっぱり、どうしても。
今、自分がどんな気持ちでいるのか、自分でもよくわからない。頭の中がぐちゃぐちゃだ。
この気持ちは、感傷なのか、それとも――。
わからない。わからないから、ただ。
お前に今すぐ会いたいって思った。