ケーキの向こうのお前が泣いた
受けにケーキを買いに行くと言った攻め、帰ってこず。
「誕生日なんだから待っててくれ」
と言われて、攻めの部屋で待って三時間以上。いや、たしかにここは山奥の全寮制の学校で、ケーキを外で買いに行くって言ったらバス乗って遠くなるけどね。それにしても待たせすぎだろ。もうすぐ夕方なんだけど。
やっぱり一緒に行くんだった、と思っていると、足音。攻めだ。気分が浮上する受け。しかし、そこになんか可愛い明るい声。超嫌な予感。
「お待たせ、受け!」
笑顔でケーキ持って、やってきた攻め。それはいい。しかし「ありがとな」と言おうとした顔が固まる。
「こんにちは~受けさんっ」
幼馴染が隣にいたのだ。攻めの持ってるケーキと同じお店の個包装の焼き菓子を片手に。受けの視線に気づいたのか、攻め、笑って幼馴染を見る。
「ちょうど行き会ってさ。こいつも受けのこと祝いたいっていうから」
「おめでと~受けさんっ」
もぐもぐお菓子を食べながら、言う幼馴染。知らない仲ではないが、すさまじい気安さである。食べ終わると、「じゃあ行くねっ」と言った。
「もう行くのか?」
「お邪魔だもん。これ、捨てといて~」
そう言って、ケーキの袋に、空の袋を放り込んで去っていった。おいおいおいおい。攻めも「ここに捨てんなよ」と言いつつ、いつものことって感じで怒ってない。
「ごめんな。お待たせ」
「一緒に行ってたの?」
「うん。お前にお礼したいからって」
そうですか。そうですか!受け、なんともいえない心地になる。たぶん、あの焼き菓子絶対攻めがおごってあげたんだな、お礼とか言ってな!こいつ律儀だもんな!
そう思いつつ、せっかくの誕生日、あと半日もないのに喧嘩したくなくて黙る受け。
「ありがとうな」
「幼馴染にもまた言ってやって。あいつお前のことすごい好きだから」
泣きたい。何が悲しくて恋敵に……と思うが、こっちが一方的に嫉妬してる関係だ。黙りつつ、ケーキを見おろす受け。攻めがわざわざ買ってきてくれたのに、幼馴染の影がちらついて全然喜べない。泣けてきたら、攻めが嬉しそうにしてる。違う、そうじゃない。
「いつもありがとな。お前といれて嬉しい」
攻めがにっこり、ケーキの向こうで笑うから、ろうそくに照らされた攻めがきれいだから、受けは気持ちを飲み込んだ。俺、すごくこいつのこと好きなんだなと実感する。
「来年も一緒に祝おうな」
照れながら言われて、すごく嬉しかったけど、すごくつらかった。誕生日、攻めがこんな風に祝ってくれるなんて、初めてのことで、それが特別なはずで、幸せなはずなのに。
それって贅沢かな。贅沢なんだろうな。でも。
一日だけでいいから、俺だけのものになってよ。
願って、火を吹き消した。
「誕生日なんだから待っててくれ」
と言われて、攻めの部屋で待って三時間以上。いや、たしかにここは山奥の全寮制の学校で、ケーキを外で買いに行くって言ったらバス乗って遠くなるけどね。それにしても待たせすぎだろ。もうすぐ夕方なんだけど。
やっぱり一緒に行くんだった、と思っていると、足音。攻めだ。気分が浮上する受け。しかし、そこになんか可愛い明るい声。超嫌な予感。
「お待たせ、受け!」
笑顔でケーキ持って、やってきた攻め。それはいい。しかし「ありがとな」と言おうとした顔が固まる。
「こんにちは~受けさんっ」
幼馴染が隣にいたのだ。攻めの持ってるケーキと同じお店の個包装の焼き菓子を片手に。受けの視線に気づいたのか、攻め、笑って幼馴染を見る。
「ちょうど行き会ってさ。こいつも受けのこと祝いたいっていうから」
「おめでと~受けさんっ」
もぐもぐお菓子を食べながら、言う幼馴染。知らない仲ではないが、すさまじい気安さである。食べ終わると、「じゃあ行くねっ」と言った。
「もう行くのか?」
「お邪魔だもん。これ、捨てといて~」
そう言って、ケーキの袋に、空の袋を放り込んで去っていった。おいおいおいおい。攻めも「ここに捨てんなよ」と言いつつ、いつものことって感じで怒ってない。
「ごめんな。お待たせ」
「一緒に行ってたの?」
「うん。お前にお礼したいからって」
そうですか。そうですか!受け、なんともいえない心地になる。たぶん、あの焼き菓子絶対攻めがおごってあげたんだな、お礼とか言ってな!こいつ律儀だもんな!
そう思いつつ、せっかくの誕生日、あと半日もないのに喧嘩したくなくて黙る受け。
「ありがとうな」
「幼馴染にもまた言ってやって。あいつお前のことすごい好きだから」
泣きたい。何が悲しくて恋敵に……と思うが、こっちが一方的に嫉妬してる関係だ。黙りつつ、ケーキを見おろす受け。攻めがわざわざ買ってきてくれたのに、幼馴染の影がちらついて全然喜べない。泣けてきたら、攻めが嬉しそうにしてる。違う、そうじゃない。
「いつもありがとな。お前といれて嬉しい」
攻めがにっこり、ケーキの向こうで笑うから、ろうそくに照らされた攻めがきれいだから、受けは気持ちを飲み込んだ。俺、すごくこいつのこと好きなんだなと実感する。
「来年も一緒に祝おうな」
照れながら言われて、すごく嬉しかったけど、すごくつらかった。誕生日、攻めがこんな風に祝ってくれるなんて、初めてのことで、それが特別なはずで、幸せなはずなのに。
それって贅沢かな。贅沢なんだろうな。でも。
一日だけでいいから、俺だけのものになってよ。
願って、火を吹き消した。