ケーキの向こうのお前が泣いた

待ちに待った週末。早起きして寮を出ようとすると、幼馴染がやってきた。

「眠~、さ、行こっ」

は?当たり前みたいに腕をとられて固まる。腕を外して、「なんでいんの?」と聞いた。幼馴染は憤慨する。

「ひどいっ手伝ってあげようってきてあげたのに」
「いや、いいよ。二人がいいから」

冷えた声が出た。幼馴染は顔を赤くして、眉をつりあげる。

「なにそれ!そもそも、気まずいでしょ、受けさんとふたりなんて――」
「気まずくない!余計なことすんなよ!」

早朝だってことも忘れて怒鳴った。構ってられないくらい、不可解だった。なんだこいつ、俺がずっとふたりになりたがってたの、知ってるくせに。無神経さに少し愕然とする。

「僕は攻めのこと、心配して――」
「いらない。本当に、二人がいいんだ。それくらい、わかれよ。邪魔すんな」

ついてきたら、一生お前のこと恨む。
そう言って、攻めは幼馴染を振り切って、バスに乗った。


「早く着きすぎちゃったな」

店の前で、攻めは笑った。受けに会える。やっと。自分たちを祝福するみたいに晴れた空を見上げる。
受け、早く来ないかな。受けを待つなんて、初めてかも。
――こんな風に、いつも待っていてくれたのかな。会いたくて仕方ないって、思ってくれてたのかな。
ぎゅっと胸がつまった。なんであんなに待たせたんだろう。もっと早く、来てあげたらよかった。いつも、受けが待っててくれるから、甘えてたんだ。
受けに会いたい。会って、ごめんって言いたい。会えて嬉しいって言いたかった。

十時、十五分前。受けがやってきた。人波から、受けの姿が見え、攻めは顔を輝かせる。
「受け――」そう、手を振ろうとして、固まった。

受けの隣に、あいつがいた。
17/20ページ
スキ