ケーキの向こうのお前が泣いた
それから。
受けは、おおやけには「攻めと付き合っていた」ことを否定した。けど、友達たちには、本当のことを話した。
とりわけ友達には全部を話した。ずっと幼馴染を優先されたこと、限界がきて、せめて一生傷になろうとしたこと。
友達は全部静かに聞いてくれて、「頑張ったな」と言ってくれた。
今、自分の勝手で、友達たちに迷惑をかけているのに、皆あたたかかった。
幼馴染からはひっきりなしにメッセージがきていた。
「受けさん、否定するなんてひどいよ。攻めが付きまとってるみたいになってるんだよ!」
と責められる。幼馴染に、なじられることはもう慣れっこだった。
「攻めだけ恥かかせて、自分だけ楽しんで!そんな人だと思わなかった!」
この人、いったい俺にどうしてほしいんだろう。
「だったら、幼馴染くんが止めてあげなよ」と言うのも疲れて、ブロック
して消した。
もう俺は君と関係ないんだから。でも、まだ、攻めのトークルームだけは、消せなかった。
攻めは、うわさのせいだろうか。
「話を聞いてくれ」とやってくることはもうなくなった。時々、こちらを見てるような気がするけど、気のせいかもしれない。
もう、本当にこれでおしまいなんだな。そう思った。
攻めが、自分に付きまとってるなんて言われてるのだけは、どうしても心にひっかかった。攻めが暴露したこととはいえ、自分はずるいのかな、そう思うと気分は暗かった。
だから攻めとのことを聞かれた時は、「攻めは絶縁されて、ちょっとパニックになっただけ」っていつも説明した。攻めの気持ちはわからないけど、きっとそうなんだと、思えるように受けはなってきていた。
攻めは愛情深いから、俺みたいなのがいなくなるのでも、ショックだったのかな、なんて、そんな期待のようなものを抱く。
それほど、自分は立ち直ってきてる。自分に希望を持ち出してる。それがありがたかった。
受けは、友達と歩いていた。窓の下を見下ろせば、攻めが幼馴染と一緒にいる。二人が一緒にいるのを見ると、やっぱり胸は痛かった。そこに自分がいない、自分じゃないってことが苦しくなる。
けど、踏み出さなきゃならない。
攻め。本当に好きだったよ。
最後に、ほんの少しでも、俺のこと惜しんでくれてありがとう。
本当に、さよなら。互いの日常にむかって、歩き出した。