ケーキの向こうのお前が泣いた

可愛い幼馴染ばかり優先する攻め。今日も受けとの待ち合わせに、二時間遅れてくる。
理由としては、「幼馴染が友達との待ち合わせに遅刻しそうだったから送っていってあげた」らしい。
「ごめんな、おかげでまにあったって」とLINEを見せてくれる。
「攻めありがと♡幼馴染は攻めがいなきゃだめ」という可愛いメッセージ。
「ほんとにな 感謝しろよ」
と、悠長に返事まで返してあった。さすがに切れた。
攻めとはもともと友達で、幼馴染を溺愛してることは当然わかっていた。
友人だから、この無法は慣れていたがしかし、今俺たちは恋人だぜ。

「さすがにひどいだろ。俺のことなんだと思ってんの」
「えっ、恋人だけど」

当たり前みたいに返されてほだされそうになる受け。ここで耐える。

「友達でもけっこう不義理なのに、付き合っててこれってどうなの」

そうするとぽかんとしている。受け、確信。絶対これ、付き合っても生活かえなくていいと思ったからOKしたんだ。

「いや、いいわ。行こうぜ」

さすがに疲れたけど、遊ぶのにずっと不機嫌でいるのも、と結局飲み込んでしまう受け。
すると、攻めが「いつもありがとな」と軽食をおごってくれる。
これも友達のころからの恒例の流れで、友達ならそれでイーブンにできたのに、恋心とは難しい。
幼馴染に対して、嫉妬して。自分を見てほしいから告白したのに、なんか友達のときより辛くなっている。
キスもしてないし、本当に俺って何なんだろう。今の状態でキスしたら余計に悩むだろうけど。
そりゃまあ幼馴染みたいに美少年でもないし、付き合いやすいことくらいしか取り柄とかないしね。
お礼のホットスナックを食べながら、受けは卑屈になるのだった。
攻めが、受けの名前を呼んで、手を引っ張ってくる。
「空から光がおりてる」と、ゆびさして、振り返り笑ってきた。その顔があんまり好ましくて、受けはもう少し我慢するか、と思う。
できたらわかってほしいけど、俺の取り柄がそれなら、その見込みはゼロに近いわけだから。
そういえばこいつが恋人だったんだなって、記憶に残るくらいには、そばにいたい。
そう思う受けなのだった。

この後、記念日、誕生日にもやらかされた受けは、攻めの誕生日に振った。
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