小話集
仲良しだった攻めに、いきなり絶縁された受け。
「受け、新しい魔法理論を考えたんだ」
「うん」
攻めは違う世界が見えてるようで、受けには想像もつかない理論を話してくれた。皆、攻めについていけず、攻めの友達は受けだけだった。
受けは攻めの言葉はわからなかったが、話すときの、きらきらした攻めの目が好きだった。
攻めの世界が外とつながったのは、それからしばらくして。
高名な魔法使いが攻めの才能を見いだし、しかるべきクラスに入れた。
「おめでとう、攻め」
受けは喜んだ。攻めの言葉が、ようやく届いたんだ。攻めも笑って、
「ありがとな」
と言った。
けれども、それが不和の始まりだった。
「攻め」
新しい仲間と歩く攻めに、声をかけた。攻めと仲間たちは、受けをちらりと見て、興味がない素振りで歩いていった。
受けには到底理解できない、話の続きをしながら。
あれ?
受けは違和感を覚えたが、気を取り直す。きっと話が盛り上がってたんだ。
けれども、同じことが続いた。
「攻め」
攻めの仲間たちは、目もくれない。ただ、虫を払うように、受けを魔法で吹き飛ばした。どっと笑い声が立つ。
攻めは仲間たちと、楽しく話していて、振り返ってもくれなかった。
おかしいな。
流石に不安になってきた。けれども、攻めと自分は、ずっと友達で。それは話は合わなくなったけど、友情が消えたわけではないはず。
受けは攻めが一人のときを狙って、話しかけた。
「久しぶり」
攻めは受けを見る。受けはうれしくなった。
「最近話せてなかったけど」
「話すことなんてない」
「……え?」
「お前なんかと何を話すんだよ。バカのくせに」
受けは固まる。
「た、確かに。俺たち話は合わないけど、でも」
「なら一緒にいる価値なんてないだろ。もう話しかけないでくれ」
迷惑だ。
そう言って、攻めは去っていった。
受けはぽかんと、攻めを見送った。
◇
それから、数年が経った。
受けは教授の見習いとして、学園で働いていた。
生徒の面倒をみながら、研究のお手伝いをする。
「先生、先生。俺の理論を聞いてください」
「なに?」
後輩の理論を聞く。飛び級で研究室にいるが、受けを慕って色々話してくれる。
なんだか懐かしいな……切なくなりつつ、後輩の面倒をみていた。
そんな矢先、後輩にスカウトが来た。
冒険に出て、高名な先達たちとともに、実地で魔法を学ばないかということだった。
スカウトに来た顔ぶれの中心に、攻めがいた。攻めは後輩の才能を褒め、
「俺たちと共に来ないか」
と誘った。自信にあふれた眼差しはまばゆい。
「行きたくないです」
後輩の言葉に、辺りが静まった。
「知らない人と冒険なんて無理だし。研究室で、受け先生と話すほうが楽しい」
「ちょ、後輩くん」
やり玉に上がり、うろたえる受けをよそに、青筋を立てる先達たち。
「君は本当に世間知らずなようだ」
「知りたくないもの。受け先生が来るなら、考えてもいいけど」
「えっ」
ないだろ。と思ったけど、とんでもないことに、通ってしまった。
ええ……。送別会でぽかんとしていた。
「受けくん、頼んだぞ」
「教授……」
尊敬する先生に熱い目で頼まれては断れない。教え子たちと言葉を交わし、受けは後輩と、冒険に加わることになった。
「嬉しい。先生を独り占め」
にこにこしてる後輩を見て、
「まあ、いいか」
と思うことにした。後輩の才能は、大きなところで羽ばたくべきだ。一助になれるなら、結構じゃないか。
そうして受けは一行に加わった。
「よろしくお願いします」
リーダーである攻めに、改めて挨拶する。攻めの自分をみる目は、初対面のようだった。
「あなたは仲間ではない。せいぜい足を引っ張らないように」
それだけ言って背を向けられる。
自分も頑張ってきたけど、まだ届かなかった。攻めの後に、多くの人が続いていく。
「先生、行きましょ」
後輩に手を引かれる。
「前をいかなくていいの」
「先生の隣がいいです」
ぎゅっと手を握られる。
なんとなく、不愉快そうな視線が、前から幾筋も自分に刺さってくる。
意にも介さず、後輩は笑っている。
「じゃあ、行こうか」
受けも笑った。こうなれば、一生懸命頑張ろう。
受けは、気持ちを新たに歩き出した。
《完》
2026年9月27日ポスト
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