小話集
「ずっと、待っていた」
幼い頃から、何かに見守られている気がしていた。
受けの足から伸びる影は、逢魔が時に二つになる。
それに対して、不思議に思っても、怯えることはなかった。
自分は一人ではないのだと、教えてくれているようで。
なぜか人に馴染ず孤立する受けの慰めは、その影ひとつだった。
ある日、階段の天辺から落ちたとき、ふと体が浮いた気がした。
奇跡的に、無傷な受けにありがたがるより皆、気味悪がった。
その日から、影が消えてしまった。
自分の影が守ってくれたのだ。そして、消えてしまった。
受けは悲しんで、ひとり階段の下、手を合わせた。
喪失感を抱えたまま、過ごしていた受けは、その日も階段の下に座っていた。
逢魔が時、白い階段が赤く染まる。
ひとつっきりしかない影が、ふと二つに分かれた。
目を見開くと、隣に伸びる。
水干を着た少年が、隣に座っていた。
受けをじっと見ている。
受けはぽかんと彼を見つめた。少年は笑った。
「やっと会えたのう」
泣きたくなるような、切ない笑顔だった。
完
2026年9月27日ポスト