2026年GW企画SS


 メッセージの通知がひとつ。
 鯉のぼりがはためく写真がひとつ。

「見て!」

 って元気な言葉もひとつ。俺は、画面を閉じて、家に入った。

「さっき、理央りおちゃんが来てたのよ」

 母さんの言葉に、テーブルを見れば柏餅の箱がひとつ。理央のおばさんが、いつも買ってくるものだ。理央は一人じゃ食べ切れないからと、いつもわけにくる。俺は黙って部屋に向かった。

たき

 紙で作ったかぶとをかぶって、笑ってた面影がよみがえる。

 理央の家は、こどもの日じゃなかった。柏もちを季節ものだからと食べる感じで、行事ごとといえば、ひな祭りだった。

「オメガなんだから、ひな祭りでしょ」

 理央のおばさんは、大きなお雛様を買って、理央と理央の父さんが、いつも飾りつけてた。俺も、よく手伝ったっけ。

「おひなさまが理央ちゃんね」

 母さんの言葉に、理央はいつも、不思議そうに笑ってた。

 こどもの日、母さんがいつも、理央を呼んでた。かぶとをつけさせられて、刀を構えさせられたり、写真を撮られたり。そういうのは正直見世物みたいで嫌だった。
 理央がじっと見てた。

「瀧、かっこいい」

 それでも恥ずかしかった。
 二人っきりのお部屋で、かぶとを理央に着せてあげた。
 かぶとを取りたかったのもあるけど、何となく。理央はきょとんとして、俺を見上げてた。

「似合ってる」

 理央は、頬を赤くして笑った。嬉しそうに、かぶとを手でおさえる。

「瀧、ありがとう」

 俺はそれで、ほんの少し気持ちを取り直した。理央が可愛いから、いいかって。

「刀も持つ?」
「うん!」

 俺が尋ねると、理央は受け取った。両手で大切そうに持ってる。本当は、打ち合ったりとかして、遊ぶといいんだけど。
 理央を叩くなんて、できそうもなかった。
 理央は、刀をただ持って、にこにこ笑ってた。理央に、「打ち合う?」と一度だけ聞いた。
 理央は、「ううん」と首を振った。

「叩くと痛いから」

 理央らしくて、すごく好きだなと思った。


 もう一度、メッセージが来てた。

「かぶと作ったんだ」

 千代紙で折られた、小さなかぶと。画像をタップしたら、大きくなった。

 次のメッセージが来る前に、ホームに戻った。




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