夜にひとりで落とす問い【8月企画SS加筆版】


 瀧の声が、さっと入ってきた。
 振り返ると、瀧が立ってる。静かな目で、こっちを見てる。

「いい加減見始めないと、終わらないけど」
「もうそんな時間か」

 樹くんが、瀧に答える。

「先に見ていてくれ。俺は少し話があるから」

 瀧を促すと、俺に向き直った。瀧は眉を寄せる。

「理央だって映画見たいだろ。後にしたら」
「なら待っててくれ」
「あ、へ、平気。樹くん、ありがとう」

 空気がぴりついたのに、俺は慌てて止める。樹くんは、「そうか?」と心配そうに眉を寄せた。

「うん、ありがとう」
「じゃあ、また後で聞かせてくれ」

 そう言って、俺の頭を撫でた。瀧と俺を促して、部屋から出た。瀧はずっと眉を寄せて、憮然としてた。待たせて、悪かったかな。

「何を見ようか。理央は気になってるものあるか?」
「えっと」

 廊下の途中で、指先にちくりとしたものが走った。瀧の指だ。向こうを向いたまま、指先を引いてる。

「理央?」
「う、ううん」

 映画の間も。
 瀧はずっと、そっぽを向いてた。


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